セブン＆アイ・ホールディングス（HD）は30日、傘下の百貨店大手「そごう・西武」を9月1日に売却する方針を固めた。そごう・西武の労働組合（寺岡泰博委員長）は売却方針に反発しており、31日に西武池袋本店（東京都豊島区）で予定通り終日ストライキを実施することを決めた。そごう・西武は31日に西武池袋本店を臨時休館する。大手百貨店でのストは1962年の阪神百貨店以来61年ぶりとみられ、異例の事態に進展した。
売却先は家電量販店大手のヨドバシHDと連携する米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループ。関係者によると、8月31日にセブン＆アイとそごう・西武で臨時取締役会を開き、売却の手続きに必要な承認を決議する方針。売却後のそごう・西武では、旗艦店の西武池袋本店のほか、西武渋谷店（渋谷区）、そごう千葉店（千葉市）へのヨドバシ出店も検討される模様だ。
そごう・西武労組は、ヨドバシが大規模出店すれば他のテナントの出店に悪影響を及ぼしたり、雇用の維持が難しくなったりする懸念があると判断。7月にスト権を確立した上で、8月28日に記者会見を開き、9月1日に株式譲渡をしないことが事前に確認できれば、ストを回避するとしていた。セブン側が売却の方針を固めたことで、労組は予定通りストを決行する。31日に西武池袋本店の組合員約900人全員が始業時間から終日ストに入る。
セブン＆アイは2022年11月にフォートレスへの売却の契約締結を発表。当初は今年2月1日に売却完了を予定していたが、西武池袋本店へのヨドバシ出店計画などを巡って労組のほか、西武池袋本店のある豊島区や地権者の西武HDなどとの調整が難航。売却は2度延期されていた。
そごう・西武の従業員は9月1日以降も所属に変わりはないが、会社の株主はフォートレス側に移る。セブン＆アイは売却後も、労使の交渉や雇用の調整などに関与するとしている。31日のスト翌日以降は通常の営業に戻るとみられる。そごう・西武の田口広人社長は30日、「雇用維持と事業継続については、引き続きセブン＆アイと新株主と協議を重ねる。ステークホルダー（利害関係者）には今後も支援をお願いしたい」とのコメントを発表した。【松山文音、東海林智】
