米兵越境 米側の連絡に北朝鮮から応答なし 取引材料に使う可能性

　米軍兵士が韓国と北朝鮮の軍事境界線にある板門店の共同警備区域（JSA）で北朝鮮側に越境した問題で、米国務省のミラー報道官は19日の記者会見で、国防総省が北朝鮮側に連絡をとったものの応答が得られていないと明らかにした。北朝鮮の核・ミサイル開発で米朝関係が冷え込むなか、北朝鮮が米兵の越境問題を取引材料として使う可能性もある。

　ミラー氏は、国防総省が18日に北朝鮮の朝鮮人民軍に連絡をとったと説明。「まだ返事はないが、我々には北朝鮮にメッセージを送るチャンネルは多くある。韓国や（平壌に大使館を持つ）スウェーデンと協力している」と述べた。

　米陸軍によると、米兵はトラビス・キング2等兵。2021年1月に入隊した。AP通信によると、韓国で暴行事件を起こして収監された後、帰国するために17日に韓国の空港に移送された。保安検査後に逃げ出したとみられている。18日午後に板門店の見学ツアーに参加して越境した。米国で軍の懲戒処分を受ける予定になっていたという。【ワシントン鈴木一生】