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「女性が、男性が」という議論から卒業を そう思うホテル社長の半生


 白壁の蔵が並び、歴史ある風景が残る栃木市中心部に、1954年に創業した「栃木グランドホテル」がある。社長の若林可奈子さん(51)は大手企業で働いた後、30歳の時にUターンし、祖父母が始めた歴史あるホテルの代表取締役に38歳で就任、新事業に挑戦してきた。女性が活躍するためには「周囲の理解やサポート体制が必要で、女性だけの問題ではない」とし、「女性だからこそ多様な生き方があって良い。お互いを認められるような世の中になってほしい」と話す。【渡辺佳奈子】

「絶対に経営者にならない」と誓ったが…

 栃木市出身。父の一族はホテルを、母は宇都宮市で喫茶店や工場を経営する経営者一家で育った。高校生のころ、母の会社が倒産。資金繰りに困る姿を見て、「経営者になってお金の苦労はしたくない。絶対に経営者にはならない」と思っていた。

 栃木女子高から東京理科大に進学し、卒業後はリクルートに就職。人材育成部門で中小企業を担当した。意外に感じたのは、どの会社も一番の悩みは会社の存続についてということだった。事業継続の難しさを痛感した一方、続けることの価値も知った。「会社が存在しているということは、世の中の役に立っているということ。存続させることに意味がある」と、家業への考え方も変わった。

 ホテル勤務や豪州留学などの後、2001年に栃木市に戻り栃木グランドホテルに入社。営業を担当した後、社長に就いた。帰郷後は認知症を患った伯母を介護した。37歳で結婚し、不妊治療を経て、2人の子どもを授かった。

コロナ禍で考え抜いた「存在価値」

 年齢と共にいろいろな苦難がやってくると身をもって知り、「その分柔軟な発想ができるようになった」と困難も前向きに捉えるようになった。栃木市のロケーションを生かしたフォトウエディング事業を16年から地元以外にも売り込んだ。

 コロナ禍では宴会はゼロになり、県外からの客もなかった。「地元の人に必要とされる空間は何か」「地元といかに共存できるか」。自分たちの存在価値を突き詰めて考え、今年、ホテル内に居住する住宅型有料老人ホーム「グランドまりそう」を開設した。

願うは、優しさと恩返しの連鎖

 ホテルを支える従業員には女性も多い。子育てが終わってこれからという時に自分や夫の親の介護をすることになり、仕事をあきらめる女性を何人も見てきた。面接に来る女性の中には、「結婚後は専業主婦で、働くことに自信が無い」と後ろ向きな発言を聞くことも少なくない。

 若林さんは「女性は出産して休まなければいけないこともある。介護を受け入れなければならない人もたくさんいる」と現実を見つめる。キャリアが全てではなく、専業主婦は素晴らしい仕事だとも思っている。いろいろな生き方があって良い。「働きたい時に、いつでも仕事に戻って来られる、自分が優しくされたように、恩返しを次の代にするというような世の中になればいい」と願っている。

 6月下旬、日光市で主要7カ国(G7)男女共同参画・女性活躍担当相会合が開かれた。若林さんは栃木はまだまだ封建的だと感じており、「女性活躍をテーマに栃木県で会合をするのは違和感があった」と率直に語る。法人会などのいろいろな集まりに「女性会」があること自体がナンセンスだと感じている。女性活躍を議論する際、女性管理者の人数などが指標にされるが、若林さんは「『女性が、男性が』という議論を卒業すべき」と言い、「性別に関係なく、いろいろな人がいると個性として認め合い、受け入れられる方につながってほしい」と望む。

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