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豪雨で流された妻探し3年「会える気が」 偶然の縁で発見場所を特定


 大分県内でも6人の死者が出た2020年7月の九州豪雨。日田市の天ケ瀬温泉街に住む小森満雄さん(73)の妻孝子さん(当時72歳)も増水した川に流されて亡くなった。以来、小森さんは遺体の発見場所を探していたが、今年6月、偶然の縁から詳しい場所を特定できた。発生から3年を前に、個人的な願いがかなったことを喜びつつ、妻を亡くす原因となった水害への対策が思うように進まない現状にやるせない思いを口にした。

 孝子さんは20年7月7日の朝、自宅の外に出た際に玖珠川の濁流に流された。下流のダムは当時水量を減らすために開門しており、小森さんは「2度と会えないかもしれない」と覚悟したという。12日後、孝子さんの遺体は約25キロ離れた福岡県朝倉市の筑後川沿いで見つかった。

 直後に知人を通じ、現場の写真を入手したが、遠景の広い範囲が写ったもので、誰に聞いても正確な場所がつかめなかった。それでも現場に行けば、孝子さんに会えるような気がして、小森さんは何度も付近まで行き、川に向かって手を合わせていたという。

 23年5月中旬、小森さんが行きつけの喫茶店に行くと、朝倉市から来た夫婦がいた。たまたま九州豪雨の話になり、妻を亡くしたことを明かすと、夫の方が「私が近所の人に頼まれて消防に通報しました」と発言した。

 突然の話に驚いた小森さんは「細かい状況を聞いたら、現実が迫ってくる気がする」と思い、夫婦の連絡先を聞いて一度は別れた。しかし、場所を知りたい気持ちを抑えられず、話をしてくれた都合和則さん(72)に連絡。6月中旬に一緒に現地を訪れた。

 都合さんによると、近所の農家の人が雨で流された仕事道具の部品を探している際、草むらでうつぶせに倒れていた孝子さんの髪の毛に気づき、都合さんの自宅を訪ねて通報をお願いしたという。

 都合さんが天ケ瀬温泉街を訪れていたのは、福岡県朝倉市も17年の九州北部豪雨で山が崩落し、甚大な被害を受けたからだ。同じ被災地の住民として天ケ瀬の状況が気になり、定期的に通っていたという。2人をつなげたのは「豪雨災害が結んだ縁」だった。

 小森さんは6月下旬、改めてお礼を伝えるため、都合さんの自宅を訪ねた後、再度孝子さんの発見現場へ向かった。お互いの被災の記憶をたどりながら、都合さんは「昔は筑後川が危険だったが、九州北部豪雨では山が崩れた。過去に経験したことのないことが起こりえる」と話した。

 九州北部豪雨で特に被害の大きかった筑後川水系3河川は、福岡県が国に要請した結果、6月までに治水機能を高める工事を終えた。その一方で、玖珠川の河川改修は31年度までかかる見通しだ。

 小森さんは「玖珠川の川幅は狭すぎるからあのような悲惨な災害が起きた。なぜ3年もたつのに改修が進まないのか。県の計画がずさんで納得できない」と憤る思いを語った。【井土映美】

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