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23年で計6323時間観察…調査でわかった長野のクマタカの実態


 山奥にいるイメージのクマタカが、長野県の木曽谷では集落周辺の方が見る確率が高いことが、日本野鳥の会木曽支部長の松原秀幸さん(62)=木祖村=の23年間の調査で判明した。餌の取りやすさが主な理由と考えられる。5月末に野鳥の会が発行した論文集「ストリクス」(39号)に掲載された。【去石信一】

 論文によると、木曽谷は、西が御嶽山、東は木曽駒ケ岳など中央アルプスに挟まれた地域で、南北65キロ、東西平均26キロある。古くからヒノキを中心に林業で栄え、森林面積が93%を占める。

 松原さんは、1998~2020年で計6323時間の観察をまとめた。国有林でヒノキ中心の「奥山」(調査地点30)と、民有林でコナラなど広葉樹林にヒノキやカラマツの人工林が入り交じる「集落周辺の森林」(同115)の生息状況を比較した。

 その結果、奥山では822時間観察して130回目撃。確率は10時間当たり1・58回だった。一方、集落周辺は5501時間観察して2896回目撃。10時間当たり5・26回と3倍以上が高かった。

 クマタカはノウサギやヘビ、ヤマドリなど小動物を餌にする。松原さんは、大面積のヒノキが占める奥山は樹種が単調で小動物が少なく、密に茂ってクマタカが狩りをする空間も少ないと指摘。地面にはササが繁茂し、獲物がいたとしても飛び込むことはないと考え、採餌の適地が少ないのが目撃の割合が低い理由と結論づけた。

 一方、集落周辺は多くの種類の木があるうえ、地面が開けている場所が多く、獲物が豊富で捕りやすい環境がある。ハンターが捨てた動物の一部、ネコ、飼育アヒルを狙うケースもあり、食性が幅広いクマタカにとって多様な餌を獲得できる状態になっている。

 松原さんは「木材需要があり、森林伐採が盛んだった50~60年前までは奥山にも草原的環境が生まれ、クマタカもウサギなどを狩ることができた。その後、木材価格の低迷で森林が放置されるようになった。木々の上部は閉鎖され、地面付近は暗く、餌は少ない。今後、個体数の減少も予想される」と話す。

絶滅危惧類、減少傾向顕著に

 クマタカは全国の森林にいる大型のタカで、トビより一回り大きい。環境省や長野県のレッドデータブックでは、近い将来に絶滅の危険が高いとされる「絶滅危惧ⅠB類」に指定されているが、地域的には比較的多数生息しているとの報告もある。

 木曽谷で行った松原さんの調査では、5年ごとの目撃率が2010年までは7%前後だったが、11年以降は5%程度に落ち、減少傾向がうかがえる。

 一方で、繁殖率は年によって変動が大きいが、低下傾向は見られなかった。

 営巣木は特定した35本のうち、半数を超える18本が集落から500メートル以内にあった。樹種はモミ類が21本を占め、次いでツガ4本、ヒノキ3本と続く。モミは大木になるうえ、ほとんどが感染している「てんぐ巣病」は異常に枝が発生する特徴があり、巣を作りやすいと考えられる。

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