花王は20日、殺虫成分が入っていない液体を吹きつけることで蚊を動けなくさせ、駆除することができる新たな技術を開発したと発表した。近年、従来の殺虫剤成分に耐性を持つ蚊が増えていることに対応する。蚊が媒介する感染症「デング熱」が世界的に猛威を振るっていることから、同社は新技術を生かした商品開発を急ぐ。
同社が新技術開発で注目したのは、台所用洗剤やシャンプーなど一般的にも広く使われている「界面活性剤」だ。
蚊は羽や体の表面を覆う油分や細かい毛が水をはじく構造。蚊に、本来なら混じり合わない水と油を混ぜる性質を持つ界面活性剤を加えたミスト状の液体を吹きかけることで、水が蚊の表面の油分となじみ、蚊の羽や体はぬれる。その結果、蚊は飛び続けられず、数秒で落下。さらに、付着した液体が呼吸のための体表面の穴をふさいで蚊は死ぬ。
デング熱は「地球温暖化や都市化の進展で蚊の生息エリアが拡大して感染者も増えており、リスクは今後さらに高まる」（ヘルス＆ビューティケア事業部門・神谷光俊部長）とされる。世界保健機関（WHO）の推計では、東南アジアや南米を中心に世界で年間3・9億人がデング熱に感染し、約2万人が死亡している。今年は感染者が特に多く、タイでは「現時点ですでに昨年の約5倍の感染者が出ている」（同）という。【町野幸】
