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偶然の産物? 国内最大級の大玉サクランボ「やまがた紅王」デビュー


 山形県が20年以上の歳月をかけて開発したサクランボの新品種「やまがた紅王(べにおう)」の本格的な販売が今年から始まる。500円玉以上にもなる国内最大級の大玉で、ツヤがあり、パリッとした食感と上品な甘さが特徴だ。「サクランボ王国」の新たなけん引役として期待される新品種はどのように生まれたのか。県の開発担当者に経緯や今後の期待を聞いた。

 「大きいサクランボよりも、早く収穫ができる品種を開発することが狙いだったのです」。山形県農業総合研究センター園芸農業研究所(寒河江市)の前所長で、紅王の開発に長年携わった県農林技監の石黒亮さん(59)はこう明かす。大玉品種は偶然から生まれたというのだ。

 同研究所では米国産サクランボが初めて輸入された1978年から品種改良が本格化。外国産との差別化だけでなく、主力品種の「佐藤錦」と収穫期が重ならず、より早く出荷できる品種が求められていた。

 97年、収穫期が早い「紅さやか」と米国原産の「レーニア」の交雑種に、実が大きい「紅秀峰(べにしゅうほう)」を交配。採取した種を畑にまき、樹木へと大切に育てられ、2004年6月には初めて赤い実をつけた。石黒さんは「とにかくツヤがよくて、畑の中で輝いて見えた」と当時の手応えを振り返る。

 一方、調査を続けるうちに意外な事実も判明した。実をしばらく実らせたまま観察してみると、想定以上に大きく育つことが分かったのだ。「大玉品種として売り出せるかもしれない」。20人以上の研究者が「バトン」をつなぐように調査や改良を続けた。

 調査で苦労したのは試食で、石黒さんは「味や食感を確かめるため、1日で300個食べることもあった。周囲からはうらやましがられましたが、本当に大変だった」。12年には県内9カ所での試験栽培も始まり、20年に品種登録までたどり着いた。

 紅王は6月中旬から収穫が始まる。県産サクランボでは初となる品質基準が設けられ、直径25ミリ未満のものや、色が薄いものは紅王としての販売を認めない。3L(28ミリ以上)か4L(31ミリ以上)の大玉が販売の中心となる。

 今年の出荷はわずか20トンの見通しで、県産サクランボ全体(約1万3000トン)の0・15%にすぎない。首都圏や関西圏など波及効果が大きい都市部に向けて積極的に出荷される。吉村美栄子知事が東京や大阪でトップセールスを行うなど官民一体で、佐藤錦や紅秀峰に続くブランドに育てたい考えだ。石黒さんは「店頭をにぎわす定番商品に育ってほしいですね」と期待を寄せた。

【神崎修一】

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