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「大川小悲劇繰り返さないで」 娘亡くした父ら訴え 札幌で映画上映


「あの日の真実」に迫った記録

 東日本大震災で、児童74人と教職員10人が犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校を巡るドキュメンタリー映画「『生きる』 大川小学校津波裁判を闘った人たち」の上映が27日、札幌市で始まり、娘を亡くした2人の父親が映画館を訪れた。当時小学5年の千聖さんを亡くした紫桃隆洋さん(58)と、当時小学3年の未捺さんを亡くした只野英昭さん(52)は「悲劇を繰り返さないためにどうすればよいのか考えるきっかけにしてほしい」と語った。【山田豊】

 2011年3月11日に発生した東日本大震災で、大川小は津波にのまれ、全校児童の約7割にあたる74人の児童が亡くなった。今も4人の児童の行方が分かっていない。地震発生から大川小に津波が到達するまでの時間は約51分。ラジオや行政防災無線で津波の情報は学校にも伝わり、スクールバスも待機していた。すぐ近くにある裏山に避難していれば、全員が助かったはず――。映画は、いとしい我が子を失った親たちが「あの日の真実」を知るために奮闘した日々を記録した。

 震災後、学校や石巻市教育委員会による保護者説明会や文部科学省などが設置した「大川小学校事故検証委員会」の報告に遺族らは注目したが、いずれも誠意を感じられず、ウソや隠蔽(いんぺい)があると思ったという。只野さんは「最初は裁判なんてする気はなかったが、あの日に何があったのか知るため、裁判で闘うしかなかった」と語る。

 映画は約2時間で、只野さんが記録し続けたビデオ映像などを基に、保護者説明会や事故検証委の様子、大川小児童津波被災国賠訴訟の代理人を務めた吉岡和弘弁護士や斎藤雅弘弁護士、複数の遺族らのインタビューなどで構成されている。

 上映後、紫桃さんは観客を前に「自分の娘の最期に言葉をかけたり、手を握ったり、抱きしめたりできなかった。その無念だけは今でも残っている。裁判に勝訴したが、娘は帰ってこない」と悲痛な心境を吐露した。映画に協力した理由については「このようなことを二度と繰り返してほしくない。学校が子どもの命の最後の場所であってはいけない。映画を見て、多くの人に感じてほしい」と再発防止を願った。

 只野さんは未捺さんのほか、妻のしろえさん(当時41歳)、父親の弘さん(同67歳)も震災で亡くした。「私にとって震災は、乗り越えるものでなく、喜怒哀楽を隠さず、起きてしまった事実とどう向き合って生きていくかだった」と語る。最後に「(映画を見て)一人でも多くの人が、あの日を振り返るきっかけにしてほしい」と願った。

 映画は、札幌市の映画館「シアターキノ」で6月2日まで、同月3日から9日は苫小牧市の「シネマ・トーラス」で上映される。

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