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市長迷走に母親あきれ顔「取る必要なかった」 備前・マイナ問題/上


 マイナンバーカードを巡り、岡山県備前市が迷走した。市教委は2022年12月、無償としてきた保育園・子ども園の保育料、小中学校の給食費などを「23年度からはマイナカードの全世帯分取得を条件とする」と、保護者らに通知。「カードの取得は任意だ」と反発した保護者らが、撤回を求める署名を全国から5万795筆集めた。こうした中、市議会は23年3月23日、市の方針に沿った条例案を可決した。ところが、約2週間後の4月5日、吉村武司市長(76)は「財源確保の見通しが立った」として、23年度も保育料などの一律無償化を続けると表明。突然の方針撤回だった。

保育料、給食無償化の前提、一転撤回

 「こんなことになるんだったら、マイナカードを取る必要なんてなかった」

 中学3年と中学1年の女子、小学2年の男子の母親である備前市の女性(35)は、怒りを通り越し、あきれ顔だ。

 夫(35)、同居する父(66)、母(63)は仕事の都合やそれぞれの考え方もあり、マイナカードは取得済みだった。しかし、女性にその気はなかった。「いろいろと調べて、国に操作される感じが嫌だった。マイナンバーは国民に振り分けられていて、どうしてカードまでいるのって」

一人一人が判断すべきもの

 とりわけ、子どもたちのカード取得に抵抗感が大きかった。「成人して世の中のことも分かり、自分たちで必要か、必要じゃないか、判断してほしいですよね。当たり前のことだと思うのですが……」

 ただし、3人の子どもを抱え、自身もパート勤務で家計を支える中で「現実」とも直面する。ざっと試算すると、給食費が有料になった場合、月2万円以上はかかりそうだ。夫とも話し合い、1月下旬に「その分は、子どもたちの習い事などに回した方がいいよね」と、妥協した。

 申請から手元に届くまで1カ月ほどかかると知り、新学期に間に合わせるために急いだ。すると、少し前まで同居していた妹(30)の転出手続きが遅れていたことに気付く。市に問い合わせると、「世帯に残っているのであれば、妹さんのカード取得も必要です」との返答だったという。

 女性は笑う。「妹も、いい大人ですよ。マイナカードが必要かどうか、判断するのは本人でしょう」

 妹の転出手続きは無事終わり、2月上旬に自身と子ども3人のカード取得を申請したが、これも往生した。それぞれの本人確認が必要で、市役所の窓口業務は午後5時までだ。子どもたちには、部活動もある。

 「それで結局、方針撤回ですからね。自分の勤務、子どもたちの予定も調整して、市役所に集合した無駄な時間を返してほしい」

 市議会が条例案を可決する前に、市の方向性を見越し、やむなくマイナカードを取得した世帯は多いという。だが、吉村市長は4月5日の撤回記者会見で「(カード取得は)強制ではない」と強調した。

吉村市長は、保育料無償などをマイナカード全世帯分取得を条件としたことについて、「デジタル化社会、行財政改革にマイナカードは必須」と説明してきた。ただ、その理念が、今回の教育・保育行政での方針にどう関連するのか、女性は理解しかねている。

 一方、吉村市長は4月5日に方針撤回の理由を、こう語った。「国から3月29日、約1億2000万円の地方創生臨時交付金給付の通知があり、22年度と同様の財源が確保できた」。条例案可決については、「国や県の給付金が財源となる場合は、マイナカードを条件としないと説明していた。矛盾はない」としている。【堤浩一郎】

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