24日に指された第94期棋聖戦(産経新聞社主催)の挑戦者決定戦で、佐々木大地七段(27)が藤井聡太棋聖(20)への挑戦権を獲得した。2019年の棋王戦では挑戦を逃しており、「タイトル戦に出たいとプロになってから思っていたので、そのチャンスがもらえた。藤井棋聖と指せるというのが一番うれしい。まずはフルセットにしたい」と意気込みを語った。藤井棋聖とはこれまで2勝2敗と五分の星を残しているが、「勝った時はまだ藤井棋聖がタイトルを取る前で、その頃とは全く別人のような将棋の内容。本当に厳しい戦いになるがそれでも食らいついていきたい」と決意を口にした。
感想戦後、報道陣に語った主な内容は以下の通り。【丸山進】
タイトル保持者に比べ課題多い
――挑戦を決めた感想を。
佐々木七段 本当に「うれしいな」というのが最初の感情です。「タイトル戦に出たい」とプロになってから思っていたので、そのチャンスがもらえて、藤井棋聖と指せるというのが一番うれしいですね。
――「もっと早く挑戦してもおかしくなかった」という声もありますが、ようやくという感じですか?
◆タイトルホルダーやA級の方と比べると、どうしても実力が劣っている部分を実感します。戦法の選び方などまだまだ課題が多いので、今回は本当に振り駒も含めて運がよかったなというところです。
――フリークラスでプロ入りしてからの7年間を振り返って感慨は。
◆特にはないんですけど、周りが上がっていく中で自分が取り残されないようにと思いましたし、昨年よりもいい成績を残したいと思っていたので、昨年ベスト4で敗れた棋聖戦で挑戦権を得られたのはうれしく思います。
――棋王戦挑戦者決定二番勝負(19年12月)で敗れた時に「まだ挑戦者にふさわしくなかった」と話していましたが、今はどうですか。
◆その発言の時は、負けてやさぐれていただけなんですけど(笑い)。あの時よりは着実に進化できているなと思うので、調子を維持してなおかつ万全の態勢で番勝負を迎えたいです。
藤井棋聖、読みの速度と精度が高い
――藤井棋聖の印象は。
◆本当に最新形に精通していて、中終盤の読んでいる速度と精度がとても高いので、見ている分には楽しいんですけど、指していると凌駕(りょうが)されるなと思うことが多いです。
――藤井棋聖との対戦成績は2勝2敗ですが。
◆勝っていたのはまだ藤井棋聖がタイトルを取る前で、その頃とは全くもう別人のような将棋の内容です。本当に厳しい戦いになるのは重々承知なんですけど、それでも食らいついていきたいなと思います。
――藤井棋聖とどう戦いますか。
◆棋聖戦五番勝負に向けて、先後ともにしっかり対策を立てていきたい。
海外対局楽しみたい
――和服は?
◆一着も持っていないです。
――第1局はベトナムでの海外対局になります。
◆ベトナム対局というのはうわさで聞いていました。海外対局はありがたい機会ですし、現地の方々に知ってもらえる機会なので、いろいろ不安はありますけど、そういった初めてのタイトル戦を楽しみながら、いい将棋を指したいと思います。
――パスポートは?
◆棋王戦挑決に負けた翌日からブラジルに行ったので、それからまだそんなにたっていないので大丈夫かなと思います。
――番勝負までどう過ごしますか。
◆他の公式戦も結構入っているので、その準備をしっかりしていきたい。タイトル戦でまずはフルセットにしたい。それに向けてしっかり準備していこうと思います。
――師匠の深浦康市九段にはどう報告しますか。
◆普段から将棋の成績について報告することはないので、フリークラスの権利を取って(プロ入りを決めて)以来の報告になるかもしれません。師匠はタイトル戦を熟知しているので、いろいろアドバイスを聞きながら勉強したいなと思います。
――師匠から事前にアドバイスは。
◆全くなかったですね。あんまり対局について言われることは最近はないんですが、3月ごろに師弟で九州を巡りました。その時に、一緒にいる時間がとても長かったので得るものがあったかなと思います。
眼鏡で盤がよく見えるように
――棋聖戦本戦で強敵に勝てた要因は。
◆相手は全員居飛車党でしたが、先手番で戦型選択とか主導権を握れる形を目指しやすかったのも大きかったと思いますし、集中して一局一局臨めたのがよかったと思います。
――挑戦がちらついたことは。
◆挑戦できるかも、という雑念があるとあまりいい成績を残せたことがないので、自分の将棋を指そうと常に思っています。
――連勝が15に伸びました。好調の要因は。
◆特には何か変えたわけではないですけど、周りから言われるのは眼鏡を掛けたこと。特に種も仕掛けもない眼鏡ですけど、盤がよく見えるようになったかもしれないです(笑い)。
――自動車免許も取りました。
◆ライブの練習も含めて、いろいろ一人旅していい気分転換になっていて、オンオフの切り替えというのができているのかなと。
対局前日にイベントやりきった
――出身の九州の人の応援が力になったことは。
◆師匠と九州を巡った時、棋聖戦でベスト4に入っていたと思いますが、その時に直接応援されたり、いろんな方に声を掛けてもらったりしました。昨日(23日)、「侍゛(ざむらい)」という将棋イベントでもいろんな方に「挑戦してください」と言われて、そういった声を受けて改めてモチベーションが上がりました。
――対局前日にイベントに参加することに不安は。
◆決勝進出を決めたのが20日で、イベントは23日。穴を開けて迷惑を掛けることと、それでも休んで挑戦権の確率を上げることをてんびんにかけて、「自分はしっかりイベントもやりきって、悔いのないようにして挑みたい」と思っていました。師匠は、そういうのは本当は休んでほしいんだろうなと思ったんですけど、自分はそれははね返したいなと。
――今日は万全の状態だったのでしょうか。
◆そうですね。昨日のイベントも、他の棋士と10分30秒(持ち時間10分、秒読み30秒)で真剣に指すものだったので、研究会の一つと思いながら指していましたし、いい集中力で臨めていてよかったです。