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大阪市長が募った善意の雨がっぱはその後…「半分廃棄」の証言も


 未曽有のウイルスに対する不安が社会を覆うなかで、鶴の一声は飛び出した。

 「未使用の雨がっぱを持っている方はご協力いただきたい」。新型コロナウイルスの感染が国内で広がって間もない2020年4月、大阪市の松井一郎市長は突然、記者団を通じてこう呼び掛けた。感染を防ぐ防護服が医療現場で不足していると知り、代替品として雨がっぱの提供を求めたのだ。

 反響は予想以上だった。4日間で全国から約36万3000着が集まり、市は急きょ募集を停止。大量の雨がっぱが入った段ボール箱が市役所玄関ホールに並べられ、職員は仕分け作業に追われた。この保管方法が消防当局に無届けだったため、市火災予防条例に違反すると指摘される騒動も起きた。

 防護服はその後、増産されるなどして夏ごろには供給が回復した。では、「善意」の雨がっぱはどうなったのか――。

「未使用でも経年劣化」と病院

 市によると、募集の翌月には医療機関に配布を始め、8月までの4カ月間で約30万着を配った。

 ただし、全てを活用できたわけではないようだ。使用済みの雨がっぱなどが含まれていたためで、一部は病院側に捨ててもらったりした。

 大量の雨がっぱを受け取った市内の医療機関の担当者は「物資が少なく、命を守るために本当に助かった」と感謝した上で、半分程度は廃棄せざるを得なかったと振り返る。「雨がっぱはビニール製なので未使用でも経年劣化でくっついてしまう。使えないものが少なくなかった」と明かした。夏を迎えると、着用時に蒸すなどして使い勝手が悪いという声も現場から出たという。

 実は厚生労働省も、松井氏の呼び掛けと同じ日に「雨がっぱなどを防護服の代わりに使用してもよい」と自治体に通知していたが、21年11月に廃止している。その時点で市の在庫はまだ余っていた。福祉施設などにも受け取り希望を募り、全ての在庫がはけたのは22年2月。配布開始から約1年9カ月がたっていた。

問われる危機下のリーダーシップ

 一方、松井氏による雨がっぱ寄付の呼び掛けは「拙速だったのでは」との指摘がある。募集の数日前、大阪府がレインポンチョ約22万着の購入を決めていたためだ。このレインポンチョも医療機関に配布されたのはわずか1万着。多くが学校に配られ、現在も一部が在庫で残っている。

 首長発言の影響の大きさを良くも悪くも示した「雨がっぱ作戦」。先が見えない危機下でリーダーシップをどう発揮するのか。情報発信のあり方に教訓を残した。【榊原愛実】

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