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沖縄戦「まだ終わっていない」=「占領」で自治意識形成―生活史調査25年・岸教授


 1972年の沖縄本土復帰から15日で50年。沖縄の生活史調査を25年続けてきた岸政彦・立命館大大学院教授(54)は、基地問題などを背景に「人々の間では沖縄戦はまだ終わっていない」と感じている。  20代で初めて行った沖縄旅行をきっかけに、沖縄に恋い焦がれる「沖縄病」にかかった。大学院博士課程で沖縄を研究対象にし、現地で聞き取り調査を始めた。観光客が訪れない町や村にも足を運び、「出稼ぎの話を教えてほしいと言っても、なかなか理解されなくて大変だったこともあった」と当時の苦労を振り返る。毎年沖縄を訪れ、25年で数百人の生活史を聞き取った。一人ひとりの話にじっくりと耳を傾けてきた。  戦前から戦後の話を通して聴く中で「戦後の沖縄社会の出発点は占領にある」と実感した。戦時下と米軍占領下では共通して人権や所有権が守られず、「お上」に頼らず自ら生命や財産を守るという「自治の感覚」が人々の暮らしに根付いた。戦後に生まれたこうした感覚が、現在の沖縄にも色濃く残っていると語る。  調査を続ける中で、「つながり」が見えてくることがあった。ある女性から、地面を掘ってサツマイモを育てた話と、不発弾や鉄くずを掘って売っていたという話を一緒に聞いた。その時、「戦争という巨大な歴史的事件が、個人からすると自然現象のようにつなげて語られていた」と感じたという。  こんな男性にも出会った。「ガマ」と呼ばれる洞窟内で、「集団自決」により他の家族全員を失った。しかし、米軍基地で定年まで働き、子どもと孫を養い、「自分たちに飯を食わせてくれた」と基地容認派だった。  「沖縄で出会った一人ひとりの多様な人生に、それぞれ『理由』がある」と感じ、調査を続ける原動力となった。沖縄戦の聞き取り調査は他にも多くあるが、戦争までで終わっているのがほとんどという。「戦後にどう生きてきたのかも一緒に聞き取り、人間くさい『普通』の沖縄をもっと知り、記録に残していきたい」と意欲を示す。  「一般市民は72年5月15日の一日でガラッと変わらず、沖縄戦は戦後もずっと続いてきた」と感じるのは、27年間にわたる米軍の占領や、現在も米軍基地が残っているためだと指摘。「沖縄にとって復帰とは何だったのかと一言では言えないが、沖縄で暮らす一人ひとりが生きている人間なんだと言いたい」と語った。  岸 政彦氏(きし・まさひこ) 立命館大大学院先端総合学術研究科教授。専門は沖縄、生活史、社会調査方法論。著作に「同化と他者化―戦後沖縄の本土就職者たち―」「はじめての沖縄」「マンゴーと手榴弾」など。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える立命館大大学院教授の岸政彦さん=4月5日、大阪市
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