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東北の1年、ボトルに込めて=震災機に生まれたワイン―6県のブドウで醸す・東日本大震災11年


 東日本大震災をきっかけに生まれ、今年で8年目を迎えるワインがある。毎年3月11日に解禁される「ヴァン・ド・ミチノク」。東北6県のブドウのみを使用し、添加物を極力使わない「自然派ワイン」だ。「飲む人にその年の東北を感じてほしい」という造り手の願いが込められている。  仙台市で自然派ワイン専門店「BATONS」を営む板垣卓也さん(46)が、2014年に企画した。店を拠点に炊き出しのボランティアをしていた震災当時、「世界中の自然派ワイン仲間から気持ちのこもった支援がたくさん届いた」と振り返る。「業界人として、東北を素晴らしい自然派ワインの産地にすることが、支援への恩返しになるのでは」と考えたという。  自然派ワインはブドウの皮に生息する野生酵母で発酵させるため、素材本来の味や香り、生産地の気候や風土を反映させやすい。半面、扱いやすい培養酵母や酸化防止剤に頼らないため、ブドウの生産と醸造には高度な技術が求められる。板垣さんは「ミチノクを一つの基準に、東北のワイン全体が良くなっていくのが理想だ」と力を込める。  仕込みは、山形県の老舗「タケダワイナリー」の社長兼栽培醸造責任者の岸平典子さん(55)が手掛ける。同時期に収穫した6県のブドウを一つのタンクでブレンドする「混醸」という手法で醸す。「品種も栽培地も違うと、ブドウの個性がかなり変わる。タンクの中で不協和音を起こし、ハーモニーとしてまとめ上げるまでが非常に難しかった」と苦労を語る。  岸平さんによると、ミチノクは栓を開けた直後は香りが閉じているが、次第にパワフルな味が出てきて華やかになる。「冬場はぎゅっと閉じこもり、夏になると祭りではじける。そんな東北人のような味」だという。20年製のミチノクを口に含むと、滑らかな舌触りにフレッシュな香りが広がり、複雑ながらも優しい余韻が続いた。  東北地方は21年、霜や豪雨、台風に見舞われたが、盆すぎからは晴天に恵まれ、ブドウの出来は良好。8人の生産者から約3.4トンのブドウを仕入れ、2297本を仕上げた。全国約30店舗に卸す予定だ。  「ミチノクを飲んで、東北のワインが毎年おいしくなっていると感じてもらいたい」と板垣さん。「今年は進歩がないと思われてもいい。良い年も悪い年も、その年の東北だから」(了)【時事通信社】
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