■好きだから自分だけを見てほしくて


仕事関係で知り合った一回り年上の男性を好きになってしまったアヤコさん(26歳)。学生時代に同期生とつきあったことはあるが、それほど恋愛体質ではないと自分のことを思っていた。だが、24歳で知り合った彼には心身ともに「自分が生まれ変わったような」気持ちになっていったという。


「彼に会えると思うだけで朝から体も表情も柔らかくなっているのがわかるんです。彼さえいれば他には何もいらない。仕事だって彼に褒められたいからがんばる。何でもかんでも彼に結びつけて考えるようになっていました」

 

知り合った当初から彼が既婚だと知っていた。29歳のときに結婚してふたりの子がいることも。社内結婚だったらしく、アヤコさんの先輩も彼と結婚した女性のことを覚えていた。


「あいつの奥さん、きれいな人なんだよと聞いたことがあります。そんな彼が今は私と恋愛している、他の人は知らない彼の無防備な寝顔も私は知ってる。心の中でそう思っていました」


会えば会うほど好きになる。好きになれば独占したくなる。彼女の嫉妬もどんどんふくらみ、苦しくなっていった。


「彼には見せませんでしたよ、そんな嫉妬を。嫌われるってわかっていたから。だけど苦しかった。会いたいときに会えないし、連絡はとれてもなかなか会える日が決まらないときなどはつらくてたまらなかった」

 

そんなとき、彼とのなにげない会話をふと思い出した。


「うちの近くのカフェで妻がパートを始めたんだと言ったことがあって。嫉妬にまみれているあるとき、その言葉を思い出して、顔を見たいという気持ちが止められなくなりました」

 

そして彼女は、代休をとった平日、彼の住む町へ行ってみた。

 

 

■すぐに見つかって


彼の住所は知っていた。とある駅から歩いて5分ほどのところだった。その近くのカフェをしらみつぶしに探し、ひとつの店に入ってみた。


「毎日働いているかどうかもわからない。見つかったら奇跡だと思っていたんですが、私のカンは当たりました。おしゃれなオープンカフェで、入っていったら、『おひとりさまですか?』と近づいてきた店の女性がいた。名札を見ると彼の名字。それほどよくある名字ではないからすぐわかりました」


メニューをもらってお勧めを聞くと、彼女は丁寧に教えてくれた。彼女の勧めてくれたパンケーキを頼むと、こぼれるような笑顔を向ける。


「なんて感じのいい女性なんだろうと見入ってしまいました。私があんまりじろじろ見ていたせいか、彼女がちょっと不審そうな表情をしたんです。それで思わず、『〇〇さんがあまりに素敵な女性だから、ごめんなさい。つい見とれてしまいました』って言ったんです。すると彼女、パンケーキセットにアイスまでつけてくれて。『お店には内緒ね』って。30代後半、子どもをふたりも産んでいるのにスタイルもいいし、動きがしなやか。何より笑顔が素敵でした」


運ばれてきたパンケーキを食べながら、アヤコさんは思わず涙ぐんだ。こんな素敵な女性が妻なのに、私は何をやっているんだろう、と苦い思いをかみしめていた。


「水をもってテーブルを回っていた彼女が、私の表情に気づいたんでしょうね。さりげなく熱いおしぼりを持ってきて置いてくれました。帰り際、おいしかったと伝えると彼女は満面の笑顔を見せて、『また来てくださいね』と。ドアを開けて見送ってくれました。少し行ってから振り向くと、まだこちらを見ていた」


アヤコさんは、「明らかに私は“妙な客”だったと思うんです」と言った。もしかしたら何かで傷ついた若い女性を彼の妻は心配していたのではないか、あるいは自分の夫と関係をもっている女性かもしれないとふと気づいたのではないか。いろいろな思いがアヤコさんの心を去来した。


「帰り道、彼に別れのメッセージを送り、返事を待たずに彼の電話番号を削除、すべてのSNSをブロックしました。あの素敵な奥さんを傷つけたくない。本当にそう思ったんです」


それが半年ほど前のことだ。彼とはその後、仕事で顔を合わせたことがあるが、ふたりとも「大人の対応」をした。個人的に話す機会はないままだ。


「別れて苦しい思いをしているのは私。彼は大丈夫なのかもしれない。そう思うこともあります。でも私は私の正義を貫くべきだと思った」


若さゆえの潔癖さかもしれない。だが彼女のこの潔さが聞いていて心地よかった。
 

情報提供元:citrus
記事名:「「好きだから自分だけを見てほしくて」嫉妬にまみれて、不倫相手の妻を見に行ったら…