■自分が小さく思えてたまらない

 

「妻の浮気を知ったとたん、僕は今までの自分がガラガラと崩れていく音を確かに聞いたんです」


なにやら大仰なことを言うのはダイスケさん(46歳)だ。結婚して16年、中学生と小学生の子がいる。妻が職場の男性と浮気しているのを知ったのは1年ほど前だった。

 

「妻が寝言で、他の男の名前を言ったんですよ。翌朝、僕は遅めの出勤で、妻は代休だった。子どもたちが登校したあと、その名前を出したら、妻はいきなり泣き出したんです。あわてて『その人は大好きだった会社の先輩で、だいぶ前に病気で亡くなった人なの』と言ったけど、すごくアヤシかった。浮気してるなと思いました。その日、会社に行くふりをして妻を張っていたら、昼過ぎにきれいなワンピースを着て出てきたんです」


そのままダイスケさんは妻を尾行、妻が他の男性と会ってホテルへ行くのを見届けた。阻止したかったのだが足が動かなかったのだという。


「その男がいい男でね……。僕は世間から見ればそこそこいい大学だったし、勤務先も有名企業、出世だって遅いほうではない。妻もきれいなんですよ。すべてを手にしたと思っていたのに意外なところに落とし穴があったと愕然としました」


エリート男性が生まれて初めて味わった挫折なのかもしれない。彼は妻への怒りよりも、自分自身が貶められた恥のほうに気持ちがいったという。


「オレは全然ダメなヤツなんだと落ち込んでしまって。ここで妻に怒りをぶつけるのは大人げないと思うと自分を責めるしかなかったんです。確かに僕は小さな人間。それでも妻と別れたくはなかった」


彼はその晩、妻に浮気現場を偶然見てしまったと言った。妻は涙ながらに謝り、「一時的に気持ちがふらついただけ。あなたのことを愛している」と訴えた。そう言われると、もう怒ることはできなかった。


「もう会わない、あなたと子どもたちのために生きる。妻はそう言いました。それでも許さないなんて言えなくなって」

 

ダイスケさん、根が優しいのだ。反省している人を追いつめることなどできないと思った。

 

 

■妻の態度は一変したが…

 

翌日帰宅すると、いつになく早く帰っていた妻がダイスケさんの好物をテーブルに並べていた。いつもは親に無関心な子どもたちも、心なしかはしゃいでいるように見えた。

 

「これでいいんだ、と頭では思いました。妻が反省していることも伝わってきた。こうやって暮らしていればいつかまた、元に戻れると信じようとしました。自分の荒ぶる気持ちをぶつけるように妻を求めると、妻も受け入れてものすごく乱れていた。それを見て、他の男としたから体が変わったんだろうと思うと、また落ち込んでいって」


気持ちの激しい浮き沈みを感じながら、この1年を過ごしてきた。今もまだ葛藤や苦悩は消えていない。


「オレよりずっといい男と、妻は本当は一緒になりたかったんじゃないかとか、本当はまだ隠れて会っているんじゃないかとか、最近はそんな猜疑心にもさいなまれています。この気持ちを本当は妻にわかってほしい。だけど妻は天真爛漫というのか、もう浮気のことなど忘れたかのように、今は娘と一緒にアイドルにはまっている」


ダイスケさんは大きなため息をついた。そしてしみじみとこう言った。


「本当に女性ってわからない……」

 

わからない女性を少しでも知っていこうとするのが「結婚生活」というものなのかもしれない。

情報提供元:citrus
記事名:「妻の浮気に気づいてしまった…それでも婚姻関係を維持することにした夫の苦悩とは