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どうりで豪華だったわけだ…歴代でもっとも売れた「中興の祖」【中年名車図鑑|6代目 トヨタ・カローラ】


国産大衆車の代表格であるカローラは、バブル景気の助走期となった1980年代中盤、既存車を凌駕する高度なクオリティを備えた新世代モデルへの転換が推し進められる。上級化と多様な新機構の採用を果たした第6世代は1987年5月に市場デビュー。高品質な内外装に卓越した走りを実現した新型はたちまち大ヒット作に発展した――。今回は歴代の“中興の祖”に昇華した6代目の「花の冠=COROLLA」で一席。



 





【Vol.112  6代目 トヨタ・カローラ】





スポーツモデルのレビンを除き、フロントエンジン・フロントドライブのFF方式に切り替わった第5世代のカローラは、パッケージ効率や経済性など実用面での向上を果たしたものの、FFレイアウトの初期モデルであったがゆえに、豪華さやスタイリッシュさ、そして走りの上質さの表現に関しては高評価を得られない部分が散見された。時はバブル景気の助走期となる1980年代中盤。次世代カローラの企画に当たる開発チームは、市場の多様化と高級化に対応するために、既存モデルをはるかに凌ぐハイクオリティ車の創造に邁進した。





開発コンセプトに関しては、新しい車格の創造、具体的には「クラスを超えた世界のハイクオリティ車」の具現化を掲げる。とくに重視したのは3点。ユーザーの幅広いライフスタイルにベストフィットする個性豊かなボディラインアップ、抜群の車両性能による“Fun To Drive”の実現、高い感性品質の実現、という内容だった。



 



 



 



■「ニッポンの自動車の新しい物語が始まります」と謳って市場デビュー



 





まずボディラインアップについては、4ドアセダン、3/5ドアハッチバック(FX)、クーペ(レビンもFF化)の3タイプを設定する。全ボディともに従来型よりも質感をアップ。同時に、全高を低くしたうえで全長と全幅を拡大するなどしてワイド&ローのフォルム(セダンで全長4195×全幅1655×全高1360~1365mm/ホイールベース2430mm)を創出した。





中心車種となるセダンの外装については、伸びやかで量感豊かなアンダーボディとしなやかなレインボーラインによる引き締まったキャビン、大らかにラウンドしたフロントマスクなどで格調高いスタイルを構築する。一方の内装では、快適でゆとりのある室内スペースを確保したうえで、キャビン全体のフルトリム化や室内部品の質感の調和、計器盤と連続した造形の成形ドアトリム、厚みと高級感を増したシートなどを採用し、豊かで高品質なインテリア空間に仕立てた。



 





車両性能に関しては、新開発ハイメカツインカムエンジンの5A-F型1498cc直4DOHC16V(85ps)とスポーツツインカムエンジンの4A-GE型1587cc直4DOHC16V(120ps)の搭載を筆頭に、構成部品の多くを新設計した4輪ストラット式サスペンションやTEMS(トヨタ・エレクトロニック・モジュレイテッド・サスペンション)の採用、ボディ剛性の大幅アップなどを実施する。さらに、防錆鋼板を拡大展開してボディ自体の耐久性を引き上げた。





高い感性品質については、前述の車両性能の向上や内外装品質のアップに加え、心地よい音色や計器盤まわりの優れたタッチと操作性、シートおよびトリム類のソフトな肌触りなどを具現化することで成し遂げる。さらに、使用性や快適性を向上させるアイテムとして、アジャスタブルショルダーベルトアンカーやショルダーベルトガイド、クリスタルリングメーター、チルトステアリング、電動格納式ドアミラーなどを新たに組み込んだ。



 



 



■歴代カローラの“中興の祖”に昇華



 





第6世代となる新型カローラは、「ニッポンの自動車の新しい物語が始まります」というキャッチコピーをつけて1987年5月に発売される。中心モデルとなるセダンの車種展開は、4A-GE型エンジンを搭載する1600GT、5A-F型エンジンを搭載する1500SEリミテッド/SE/XE/ライム/TX/DX、2E型エンジン(1295cc直4OHC12V、73ps)を搭載するXE/ライム/TX/DX/カスタムDX、1C-Ⅱ型エンジン(1839cc直4OHCディーゼル、64ps)を搭載するSE/XE/TX/DXというワイドバリエーションを誇った。





質感を引き上げた内外装に最新の高性能メカを満載した6代目は、市場で「既存の大衆車の概念を打ち破った」と高い評価を博し、たちまち人気モデルに成長する。この勢いを止めることがないよう、開発陣はデビュー後も着実に車種ラインアップの拡充とユーザーを惹きつける改良を図っていった。



 





まず1987年8月には、ワゴンおよびバンのモデルチェンジを敢行。同年10月になると、カローラ初のフルタイム4WDモデルをリリースする。4WDモデルの設定に関し、報道資料では「拡大する4WD車市場に向けて、あらゆる条件で優れた走行性を発揮するフルタイム4WD車を、カローラの新しいシリーズとして開発した」と説明。肝心の駆動システムは、センターデフを備えた常時4WD式で、これを基本にMT車ではメカニカルデフロック式を、AT車では湿式多板クラッチを用いた“ハイマチック”式(前後輪の回転差動を油圧多板クラッチによって制御し、前後輪のトルク配分を行う仕組み)を採用した。また、4WD化するに当たって一部メカニズムも変更。搭載エンジンは新設定の4A-F型1587cc直4DOHC16V(91ps)とし、リアサスペンションには5リンク式リジッドを組み込んだ。さらに、燃料タンクには5代目カローラ時代にFR方式で継続されたカローラ・レビン用を使い、コストの抑制を図った。4WD機構を趣味の分野だけではなく、実用の世界に広げたカローラ4WDは、とくに降雪地などで販売台数を伸ばしていく。4WD仕様の設定に自信を深めたトヨタは以後、乗用4WDの車種ラインアップを積極的に増やしていくこととなった。





1989年5月になるとマイナーチェンジを行い、内外装のアレンジを変更するとともに、主力エンジンの1.5LをすべてEFI仕様にグレードアップする。さらに、経済性に富むディーゼルエンジン仕様(2C-L、1C-L型)の拡大展開やお買い得感のある特別仕様車の設定なども随時実施。市場でのカローラの存在感を維持するよう常に努力した。





クラスを超えるハイクオリティ車に発展した6代目カローラは、モデル末期の1990年になるとひとつの勲章を得る。車名別年間新車販売台数で、歴代最高の30万8台を記録したのだ。この数値は2010年に同じトヨタ・ブランドのプリウスに抜かれるまで、年間新車販売台数の最多に位置づけられた。停滞していた大衆車ブランドの価値を、高級化と高性能化によって復権させた記念碑――6代目カローラは、まさに歴代シリーズの“中興の祖”だったのである。


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