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池袋の暴走老人はなぜハンドルを握り続けたのか? もはや高齢者事故は警察だけでは防げない




先週、東京池袋と神戸三宮で2日連続で死亡交通事故が起きたことは、覚えている人も多いだろう。池袋の事故は87歳のドライバー、三宮の事故は64歳の路線バス運転士だったことから、2つの事故をまとめて高齢者事故と称しているメディアもいるようだが、これは誤りである。



 



そもそも高齢者というのは65歳以上を指すわけで、バスの運転士は高齢者ではない。もちろん加齢による体力や認知能力の低下は個人差があるが、若者でもペダル踏み間違いによる暴走や高速道路の逆走という事例はある。



 



人間はミスをする。交通事故の原因の多くは人為的ミスという統計が出ており、自動車を人間が運転している以上、いや自動運転が実用化されてもその自動車を人間が作っている以上、ミスによる事故は起こり得る。



 



このコラムを書いている時点での情報によれば、2つの事故は、どちらもペダル踏み間違いが原因である可能性が高い。しかしバスの運転士は乗務前に点呼を行い、そこで健康状態がチェックされる。認知症の状態で運転していたとは考えにくい。これも2つの事故をいっしょにすべきでないと考える理由だ。



 



一方の池袋の事故では、ドライバーは足が不自由であったうえに、近年は車庫入れがうまく行かないことがあり、運転を止める意思を示したこともあったそうだ。バスの運転士であれば乗務前の点呼で運転を止められていただろう。ではなぜハンドルを握り続けたのだろうか。



 



 



■高齢者は家族の言葉に耳を貸さない



 



このコラムでも取り上げた、昨年5月に神奈川県茅ヶ崎市で起きた90歳女性運転の乗用車による死亡事故のときを思い出した。当時は直後に、筆者も会員になっている「日本福祉のまちづくり学会」の地域交通を専門とするメンバーが集まり、そこで女性が運転していた車種が話題になったことを書いた。



 



車種は日産自動車の初代プリメーラで、2リッターエンジンを積みながら5ナンバーサイズのセダンだった。最近の乗用車はモデルチェンジのたびに車体が大きくなるので、安全装備が充実した新型車に買い替えず、乗り続ける高齢者が目立つという報告が複数のメンバーからあった。



 



実はこの場ではもうひとつ、興味深い指摘があった。家族の注意は聞かなくても、医者の注意は聞く高齢者は多いということだった。



 



高齢ドライバーが認知能力の低下などを家族に指摘されても、多くの場合その家族より運転経験が豊富であり、それ以前に人生経験にも長けているので、忠告に耳を貸さず、最悪の場合逆切れしてしまうという話はよく聞く。踏み間違いによる暴走を防止する装置が付いた車両への買い替えを勧めても、一蹴される可能性がある。



 



しかし高齢者は病院通いをしている人が多く、そこでは多くの人が医師の診断結果を正直に受け取る。もし家族のように逆切れしたりすれば、その瞬間に治療が終了し、病状が悪化していくという危機感を持っているからだろう。



 



私ごとで恐縮だが、筆者は今週、体の調子が思わしくなく、事務所の近所の医者を訪ねた。そこは高齢者が多く、診察室からは「10引く7はいくつですか?」「野菜の名前を10個言ってください」などの声が聞こえてきた。



 



これらの質問に答えられない人にハンドルを握らせることは危険だと、多くの人が思うだろう。しかし医者に運転を止める権限はない。もちろん家族にもない。判断するのは警察になるが、警察は運転技能の判断はできるが認知機能の判断はできず、日頃の状況も知らない。ここはやはり、警察と医師、家族が三位一体となって認知機能をチェックし、運転の可否をジャッジできる仕組みを作るべきではないかと思っている。



 



池袋の事故では、妻子を亡くした遺族の夫が生前の妻子の写真を公表し、記者会見を行った。一方事故を起こした87歳の高齢者は、このコラムを書いている時点では入院中というが、事故直後に警察より先に家族に連絡したり、遺族に対するコメントを発しなかったりしていることから、非難が集中している。



 



この状況、飲酒運転厳罰化の契機になった2006年の福岡県の飲酒運転事故の時に通じるものがある。悲惨な事故が続発しても具体策が示されなかったこの分野、今回は動き始めるかもしれない。


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