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初代プリメーラによる高齢者ドライバー事故…愛車を手放さない彼らの心理と時代背景




5月末に神奈川県茅ヶ崎市で起きた90歳女性運転の乗用車による死亡事故は、高齢ドライバーによる事故にふたたびスポットを当てるようになった。そんな中、筆者も会員になっている「日本福祉のまちづくり学会」の地域交通を専門とするメンバーが集まり、他の組織とともにミーティングを行った。



 



その場では女性が運転していた車種が、1990年に発表された日産自動車の初代プリメーラであることも話題になった。



 



初代プリメーラと言えば、当時の日産が欧州をメインマーケットと考えて開発し、英国工場で生産もした車種で、高剛性ボディにマルチリンク式フロントサスペンションを組み合わせ、当時の和製セダンとしては群を抜くハンドリング性能を誇っていた。その走りは欧州でも高い評価を受け、現地のカー・オブ・ザ・イヤーで当時の日本車で最上位となる2位に入るなど、さまざまな賞に輝いた。これを記念して翌年、日産はエアロパーツを装着したスポーティグレードTeをベースに、ボディを赤く塗りオーディオを充実した限定車Te-rを発売した。



 



茅ヶ崎の事故車が鮮烈な赤色だったことを覚えている人もいるだろう。あのクルマは希少な限定車だった可能性が高い。



 



という話がミーティングで話題になっていたわけではなく、注目されたのは5ナンバーサイズのセダンだったことだ。最近の乗用車はモデルチェンジのたびに車体が大きくなるので、買い替えせずに乗り続ける高齢者が目立つという報告が複数のメンバーからあった。



 



 



■ボディが大きくなるのはイヤ、車格を落とすのもイヤ



 



初代プリメーラの全長は4400mm、全幅は1695mm。現在同じクラスの日産のセダンとしてはシルフィがあるが、長さは4615mm、幅は1760mmに達する。最新の同クラスのセダンに先進安全装備を搭載し発売しても、ボディサイズの関係で乗り換えないのではないかという指摘が出た。コンパクトな日産ノートなどに乗り換えればいいと思う人がいるかもしれないけれど、車格を落とすことになるのでプライドが許さない部分もあるとのことだった。



 



高齢ドライバーによる事故防止のため、公共交通での移動を勧める動きもある。しかし自宅の近くに駅やバス停がない人も多く、タクシーは料金が高いうえに呼んでから来るまで時間が掛かることもあることから、なかなか転換が進まない。



 



富山市などでは公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりを推進していて、まちなか居住を促進することで歩いて暮らせる生活を提案している。しかし以前、富山市の統計を調べたところ、まちなかに引っ越した人は40〜50歳代のいわゆる高齢者予備軍が中心であり、70歳以上の市民はほとんど動きがなかった。長年暮らしてきた集落から、人生の終盤に差し掛かったタイミングで引っ越すというのは、たしかに腰が重い行為であろう。しかもこの世代の人たちは、クルマへの憧れが人一倍強かったのではないかとも思う。



 



現在70歳の高齢者が運転免許取得年齢の18歳を迎えたのは1966年のこと。前の年には日本初の都市間高速道路である名神高速道路が全通し、次の年にはあのトヨタ2000GTが発売されている。クルマに憧れるな!というほうが無理な状況だったと想像できる。



 



しかも当時は高度経済成長の真っ只中。郊外に庭付き一戸建てのマイホームを持ち、ガレージにはマイカーというライフスタイルがサラリーマンたちのあこがれだった。しかしそれは、自動車なしでは生活できない環境を構築することでもある。そのまま半世紀が経過しても、自分で運転しての移動を強いられる高齢者が多いのではないだろうか。



 



長年左ハンドルの外国車に乗ってきた人が、いきなり右ハンドルのクルマに乗り換えることが難しいように、長い時間をかけて身についた習慣はなかなか変えにくい。でもその結果、現在の高齢ドライバーの問題が起きているのも事実。自分を含めた高齢者予備軍と呼ばれる人たちは、将来の移動を見据えたライフスタイルを今から準備しておいたほうがいいのかもしれない。


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