結婚&妊娠は本当の意味での“脱アイドル”の好機。しかし新たな“ママタレ戦争”も
2000年4月、石川梨華、辻希美、加護亜依らとともに「4期メンバー」としてモーニング娘。に加入した吉澤ひとみ。「よっすぃ〜」のニックネームで彼女が活躍した頃、モーニング娘。の人気はまさしく絶頂。文字通り、黄金時代だ。その後、頼れるリーダーも務め上げた吉澤がグループを卒業してから9年。今や、よっすぃ〜も30歳。立派なアラサータレントだ。もちろん、歳を重ねたのは吉澤だけではない。初代リーダーの中澤裕子は42歳と「熟女」の域に踏み込んでいる。
モーニング娘。という国民的アイドルグループを離れてから、元メンバーにはそれぞれの歩みがあった。波乱万丈な人生を送っている者もチラホラ。そんななかでも、ひとりまたひとりと、「結婚」「出産」という“ごく普通”の幸せを手に入れているのは、彼女たちを応援してきた多くのファンにとっても嬉しい限りだろう。
年齢的にそういった時期なのか、吉澤以外にも元モー娘。の「おめでた」の報せが相次いでいる。最近では、昨年12月に後藤真希が第1子を出産、今年2月には安倍なつみが懐妊発表。また、同じハロー!プロジェクトに所属したメンバーでは、今年2月に里田まいが第1子を出産。2014年12月には、松浦亜弥が病気を乗り越え、第1子を出産している。この次に吉報を届けてくれそうなのは、2014年にお笑いタレントのあべこうじと結婚した高橋愛、その前年にイタリア料理研究家・小崎陽一氏と結婚した保田圭あたりだろうか。
今や、黄金時代を築いた5期メンバーまでで、結婚や出産を経験していないのは、石川梨華、小川麻琴、紺野あさ美、新垣里沙の4人を残すのみとなった。それぞれに熱愛の噂などはあるものの、元同僚たちのおめでたラッシュもあって、ぼちぼち周囲から“プレッシャー”を与えられている頃かもしれない。
芸能界全体では、若手女優やモデル、グラビア系タレントらのおめでたニュースも次々。近いところでは、2月に秋山莉奈が第1子の出産を報告している。ただ、前述した元モー娘。メンバーたちと比べると、出産への注目度は少し低いようだ。個々の知名度の違いももちろんあるが、なにより「アイドル」と「出産」というギャップが、世間の耳目を集めている要因なのだろう。
本人が好むと好まざるとにかかわらず、「仮想恋愛」をひとつの売りに、ファンとの関係を築いていくアイドル。恋愛、結婚、妊娠といった、ひとりの女性としてごく当たり前の幸福が、ファンにとっても幸福であるとは限らない。事実、2007年7月、すでにモーニング娘。を卒業していた飯田圭織のデキ婚が報じられた際には、ファンの間に大きな動揺が走った。折り悪く、マスコミの報道があった翌日には、飯田とファンによるバスツアーイベントが予定されていた。あまりにも予想外なニュースに、現実を消化できないまま眠れない夜を過ごし、楽しいはずのバスツアーで涙を流す者も少なくなかったという。
一般の目には、いい歳をしたオッサンたちがアイドルのデキ婚に号泣するなど、異常な光景として映るかもしれない。しかし、アイドルという職業が、そうした関係性に支えられているというのも事実だ。
現在では揃ってアラサー、アラフォーとなった元モー娘。メンバーでさえ、すべてのファンから結婚や出産を祝福してもらえるわけではない。長年リーダーを務めたのちにグループを卒業し、大きなスキャンダルも起こさず女優として活動していた「優等生」の高橋愛でさえ、2014年2月にあべこうじと結婚した際には、一部のファンからバッシングに遭っている。
グループを卒業すれば、ファンが望む「アイドル像」から解放されると思いきや、それもなかなか許せないのがアイドルファンの心理。結婚や出産を機に、ファン離れが進む可能性も高い。
しかし、見方を変えればそうしたファン離れは、元アイドルにとって「本当にアイドルを卒業するチャンス」とも言える。実際、いまひとつパッとしなかった元アイドルが、結婚や出産を機に「ママタレ」として成功するケースは多い。アイドル時代に武器になったビジュアルは、華やかな絵面を作りたいテレビや雑誌サイドにとっても使い勝手のいいものだろう。
元モー娘。では、辻希美や藤本美貴が好例だ。実はこの2人、結婚や出産によって最もファン離れが進んだ2人と言ってもいい。辻はできちゃった結婚、藤本はリーダー就任直後の熱愛発覚。いずれも、ファンにとっては「悪夢」呼べるものだったに違いない。そんな2人が、最も成功している元モー娘。となっているのだから、いささか皮肉な話だ。
最近では、後藤真希がママタレの仲間入りを果たした。この後藤の転身を、ガチ恋系ファン以上に苦々しく思っているのが、既存のママタレたちだ。ママタレにとって最も重要なのは、「同世代の主婦層」からの支持。今の若い主婦たちは、子供の頃にモーニング娘。を見て育っているため、自然と「元モー娘。ママタレ」は共感を得やすい。特に、当時の後藤真希の人気は辻希美や藤本美貴とも比較にならず、今なお「憧れ」というイメージは強い。後藤がママタレとして注目を浴びるのは、当然の流れだ。
後藤に限らず、元モー娘。が次々にママタレ化し、限られた「枠」めぐって既存のママタレたちは戦々恐々としていることだろう。枠が限られている以上、元モー娘。全員がママタレとして成功するわけではない。今後は、「元モー娘。ママタレ」のなかでも、“熾烈なセンター争い”が繰り広げられるはずだ。
【リアルライブ・コラム連載「アイドル超理論」第20回】
【記事提供:リアルライブ】
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