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あり得ない偶然は実は必然だった 「ティアーズ・オブ・ブラッド」は傑作ノワール・アクション


(C)Frakas Productions-Noodles Production-Fasten Films-Entre la vida y la murte, Aie-Eyeworks films&TV drama-Le Pacte-RTBFe-FWB

冒頭に登場する巨大な球体のオブジェは、ベルギー・ブリュッセルのエゼル公園のものだと思われる。近未来的な雰囲気が、作品の異世界への「入り口」として効いている。

あり得ない偶然が、入り組んだ謎解きを経て、実は必然だったことが明かされていく。「ティアーズ・オブ・ブラッド」(17日公開)は、巧みに練られたノワール・アクションだ。

深夜の地下鉄。ホームから青年が飛び込み、運転手のレオは急停止する。最悪の事態は回避したかに見えたが、レオが線路に降りると、青年は銃撃を受けており間もなく息を引き取る。

そして、青年はなんと疎遠になっていたレオの息子ユーゴだった。

銃撃は近くで起きた強盗事件で受けたものであり、父子の「偶然」を疑った女性刑事がレオを聴取するが、彼は非協力的な上に、警察の監視をかいくぐって独自の「捜査」を始める。しだいに明らかになるレオのスキル。過去の記録が抹消されている彼は何者なのか。

パリの闇を描いた佳作、20年の「レ・ミゼラブル」(トム・フーパー監督作品=12年とは別作品)の脚本で手腕を見せたジョルダーノ・ジェデルリーニがメガホンも兼ね、近未来的な地下鉄の描写や、夜のシーンの無機質なノワール感が何とも言えない。

心労が重なるとレオの目からはタイトルのままに赤い涙が出る。これは何かを象徴する「幻覚」か、と思わせるが、実はこれにも現実的な理由がある。女性刑事の厳格そうな上司は、実は彼女の父親で、レオとユーゴと併せた2組の父子の感情が本線の謎解きに絡む。ジェデルリーニ脚本にうならされる。

レオを演じるのはスペインを代表するアントニオ・デ・ラ・トレ。そのままスペイン生まれの設定で、「天候とサッカーのために(ベルギーに)来た」という皮肉なセリフに象徴されるひょうひょうとした雰囲気がいい。女性刑事はフランソワーズ・オゾン監督のミューズ、マリーヌ・ヴァクト、その父にオリヴィエ・グルメとキャスティングも厚い。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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