水辺の新しい活用の可能性を創造していくプロジェクト「ミズベリングフォーラム2020220」が20日、東京・竹芝ニューピアホールで行われた。

 水害から市民生活を守るという視点から、河川は国や都道府県ごとに整備され厳しく管理されてきた。しかし昨今、水害対策だけでなく、水辺の美しいまちづくりを目指して規制緩和が進み、市民や民間の力を積極的に活かそうと全国の水辺で様々なムーブメントが起こりはじめている。

 そんな中、2014年に発足したミズベリングは、水辺に興味を持つ市民や企業、そして行政が三位一体となって活動を展開。水辺を活用したイベントや水辺について考えるワークショップ、シンポジウム、イベントなど、様々な切り口から水辺の持つ可能性について取り組んでいる。

 司会はミズベリングプロデューサーの山名清隆氏、東武鉄道まちづくり推進統括部浅草・ミズベリング開発担当の中島結香氏。

 ミズベリング事務局岩本唯史氏が、全国の新しい水辺アクションを、「新水辺続々オープン!」「エクストリーム系 水辺の夜明け」「大阪力」「水辺&メディアの力」「かわまちづくり大賞とmizbering」「トライ&エラー」「SUP」「アーバニズム元年」「人材育成」「開業間近」という10の切り口で紹介する「ミズベリングトレンドレポート」からスタート。

 例えば、「水辺&メディアの力」では、ブース出展もした女性向け旅行誌『CREAトラベラー』では、これまでなかなか通らなかった水辺の企画が、今年になって通るようになった。

 「大阪力」では、全国的な知名度となった北浜テラスなどの事例では、13年ごしで実現した船寄せ場や、ギリギリアウトを狙った水上に浮かぶレストラン『TUGBOAT TAISHO』などの動きが紹介された。また、「エクストリーム系 水辺の夜明け」は、ナショナルジオグラフィックが渋谷川を使ったプロモーションをするなど、水辺自体がメディアになるという動きについて語られた。

 続いて、様々な領域で公共空間の利活用に日々取り組んでいる“水辺イノベーターズ”のプレゼンテーション。

 ●堤防が笑顔の場所になる 『株式会社スノーピークやすらぎ堤事務局』の荒牧翔太氏。

 新潟市内を流れる信濃川の河原の堤防は、災害と生活を隔てるだけのものではなく、川と街を近づけるものでもあると気づいた荒牧氏。自ら率先して信濃川の前でCAMPをしたり、テントをはって会議をしたり、手ぶらでCAMPできるイベントの開催をしたりと続けているうちに、出店者や地域の人たちがどんどん参加するようになった。そしていまや、水上コンサートや就活イベント、そして結婚式まで、気づけば地域の人たちが集まり、賑わいがあふれる笑顔と憩いの場所になったという。

 ●キーワードは、ランドスケープインパクト! 『株式会社E-DESIGN』忽那裕樹氏

 北浜テラスをはじめとする活動をたどりながら、「一般社団法人水都大阪パートナーズ」という中間支援組織をつくり、大阪の様々な場所・団体の水辺活動にきっかけと支援を与えてきた忽那氏。「20年後に御堂筋の全てを公園にする」という魅力的なビジョンを提示。また、忽那氏といっしょに水都大阪を牽引してきた1人である大阪市港区の筋原章博区長も登壇。トップである区長が「ギリギリアウトを狙え!」と発信するインパクト。まさに「大阪力」の源泉だ。

 ●ギリギリセーフで社会を守る。 国土交通省利根川上流河川事務局長 三橋さゆり氏

 「ダムカード」ブームの仕掛け人でもある三橋氏は、「利根川危機一髪」について発表。昨年の台風19号(正式名称は令和元年台風第19号)が過ぎ去った後の利根川の衝撃的な映像が流れる。三橋氏自身が撮った600mの川幅いっぱいにごうごうと流れる川。

 19号の雨により、堤防を越える水位予測が出て、流域自治体の首長とのホットラインは200回を越えたという。幸いにも洪水の予測は外れたが、計画高推移を越えたというのは衝撃的な事実であったという。

 なぜ利根川は守られたのか。それは堤防を広げる引堤、高くする築堤、渡良瀬流水地、そして12のダム。つまり治水は70年間続けられてきたこうした土木のあわせ技によるものであり、今回もそのあわせ技で「ギリギリセーフ」を保ったという。

 ●星野リゾートの水辺への取り組み 『株式会社星野リゾート』石井芳明氏

 山口県長門湯本温泉での取り組みについて。元気がなくなっていた温泉街の再生計画を市から委託され、2020年3月にオープンする予定の新しい川辺のまちづくり。

どんどん人を巻き込んでいった経緯が特徴的で、地元の若者や出向できていた経産省の職員も霞が関を辞めて長門に移住するなど、この事業に関わることで人生が変わっていく人が多いという。

 ●霞が関の働き方改革を進める! 国土交通省都市局 今佐和子氏

 「車のための空間から人のための空間」に向けて取り組んできた今氏。マチミチ会議の開催やNYタイムズスクウェアを人中心の空間に変えた人。「幸せな働き方を探して」というテーマでのプレゼンテーション。

 ちょうど一週間前から産休中の今氏は、”仕事と育児で疲弊したくない”ということで、人事制度をフル活用、時短勤務、フレックス、テレワークを駆使して、クリエイティブに働くというチャレンジをしている。このような新しいチャレンジができるのは、「協力してくれるチームのメンバー、そして組織の寛容さがあるからだ」と、今氏。

 ●イーストベイエリアの水辺を使い倒す 竹中工務店まちづくり戦略室 高浜洋平氏

 テーマは、「イーストベイ東京プロジェクト」について。都心部から極めて近いのにまだ未活用空間がたくさんあり、埋め立てられたたくさんの島々で成り立っているイーストベイエリアには、とてつもないポテンシャルがあると高浜氏は言う。木と水の町である木場周辺での「木のまちプロジェクト」、門前仲町駅近くではじまっている「ふかがわ川床プロジェクト」、本社そばの水辺沿いにある公園や緑道を使った「健康緑道プロジェクト」、将来の舟運ネットワークを見据えた「都市型自動運転船プロジェクト」などを通して、イーストベイの水辺変革に取り組んでいくという。

 水辺イノベーターのプレゼンテーションに続いて行われれたのは元ポートランド開発局ディレクターの山崎満広氏によるインスパイアトーク。米国の行政経験を経た彼だからこそ語れる日本の今のまちづくりについて語った。

 続いて、竹芝エリアマネジメント事務局長の田中敦典氏、東日本旅客鉄道株式会社東京支社事業部、首都圏えきまち創造センターの花倉伸治氏が登壇し、会場にもなってる竹芝エリアが2020年、「WATERS竹芝」へと生まれ変わる新プロジェクトについて説明した。

 最後はアイディアセッション。「公共空間の可能性を広げる仕事をする人のより良い働き方とは?」というテーマでディスカッション。

 国土交通省河川環境課ミズベリング担当の吉氏は、最初にミズベリング担当になったとき、「正直、おれはなんというところに来てしまったんだ」と、愕然としたそうだが、だんだん変わっていったそうで、「昔は川しか見ていなかったけれども、人を見るようになった」と、自身の見方の変化を語った。

 また、星野リゾート石井氏の発表でも話題になった泉氏は、ちょっと助けに行くくらいのつもりだったのが、現地のシェアオフィスに投資するまでの関わりになって、変わっていったなど、水辺とミズベリングの活動を通しての「変化」と「変革」について対話が交わされた。

 



情報提供元:News Lounge
記事名:「市民や企業、そして行政が三位一体となって水辺の新しい活用を創造していく「ミズベリングフォーラム 2020220」