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進化したPOVホラー『コンジアム』チョン・ボムシク監督インタビュー 「“怖さ”は作り手と観客の駆け引きなんです」[ホラー通信]



1999年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の大ヒットから20年。猫も杓子もPOVとばかりに数々のPOVホラーが量産されたが、その一大ブームが落ち着きを見せてきた2018年、韓国でホラー映画史に残る記録的大ヒットを遂げたPOVホラーがある。実在する心霊スポット“コンジアム精神病院”を題材にした『コンジアム』だ。


あらゆるPOVホラーが出尽くした今、『コンジアム』が目指したものとは? そして多くの人を震え上がらせ、楽しませる秘訣とは? 本作を手掛けたチョン・ボムシク監督にお話を伺った。



――実際に“コンジアム精神病院”を探索する動画がYouTubeに沢山あがっていますね。7人の若者グループがそこでライブ配信を行って莫大な収益を得ようとする、という本作の設定はそういう動画サイトから生まれたのですか?


チョン監督:「もともと、コンジアム精神病院を舞台にして、そこへ若者たちが撮影に入っていくホラー映画を撮らないか、ということで声をかけてもらったんです。韓国ではものすごく有名な心霊スポットなんですよ。お話をいただいてシナリオを書き始めたんですが、高速道路で競走しているところをライブ配信して億単位の収益をあげた若者がいるという話を聞いたんですよ。『コンジアム』ではYoutubeではなくホラーサイトという体裁なんですが――その若者の話をモチーフとしてシナリオに入れ込むのは面白いんじゃないかと思ったんです」



――POVホラーはリアリティや臨場感を生み出す一方で、弱点も多いと思うんです。手持ちカメラの映像は手ブレが続くと観ていて画面酔いしますし、定点カメラの映像だとなかなか動きが出ないですよね。本作ではそういう弱点を克服する狙いがあったのですか。


チョン・ボムシク監督:「色々言い当ててくれてありがとうございます(笑)。鳥肌立っちゃうなぁ。まさしくそういう狙いでした。『コンジアム』はフェイク・ドキュメンタリージャンルにおいて既存のものよりも一歩進んだものを、ということで“体感型ホラー”というコンセプトを掲げていました。時代は進んでいて、今はハンディカムでも4K画質の映像が撮れたり、一般の人が使える機材もとても進化している。とにかくまず使えるカメラを総動員して撮影をして、編集の段階で現実味のあるバランスを突き詰めていこうと計画していました」


俳優たちがカメラマン? 前代未聞の撮影方法



――様々なカメラを用いていることもそうですが、それらを使って俳優たちが本編の大部分を撮影しているのも斬新です。


チョン監督:「キャストに撮影をさせるのはとても難しいチャレンジでした。撮影するときはスタッフは撮影場所の中に入らず俳優たちだけで撮影するんですよ。監督の僕が外から「スタートォッ!」と叫ぶと、彼らが中で撮影をしてきてくれる。で、何が難しいかというと、俳優のひとりひとりが、フェイスカメラ(表情)・ヘルメットカメラ(視点)・手持ちのカムコーダーと三台のカメラを持っているんです。すると、5分のシーンを6人の俳優が撮っただけでものすごい量が撮れてしまうんですよ。そのすべてを確認しきれるかというと無理なんですね。撮影場所にはWi-Fiもないので、俳優たちが撮影しているものをライブで外から見るということもできない。なのでキャストに聞くんですよ、「ちゃんと撮れた?」って(笑)。「撮れなかったかも…」と言われたらもう一回撮影。で、キャストが自信を持って「撮れました!」と言ってくれたら初めて確認するんです」



チョン監督:「最終的にはキャストがその特殊な撮影に慣れてくれて、自分の演技がどうだったとかではなく「ここはちゃんと撮れました!」とか「ここはちょっとダメでした」とか、撮影について自己判断してくれるようになりました。彼らが新人俳優だったことも功を奏したと思っています。演技をしながら自分で撮影をするという特殊な撮影スタイルが、先入観なく身についていった。長年俳優をやっている方だと逆に難しかったかも知れないなと。で、やっていくごとに「自分たちが撮影したんだ!」という自負も生まれたようで、「撮影スタッフに自分たちの名前をクレジットしてくれ!」と要求してきて(笑)。もちろん入れましたけどね!」



恐怖の“402号室”の撮影裏話


――映画のなかでも“いわくつきの402号室”のシーンはとびきりの怖さでした。演出のヒントとなったものはありますか。


チョン監督:「結果的に自分としてはとても満足しているシーンなんですが、周りにとても心配されたシーンでもあって。カメラ2台しか使ってないんですよ。シャーロットの視点カメラと表情カメラのたった2台ですね。それだけで本当に怖いシーンが撮れるのかという不安があった。でもその限定的な条件が自分のやる気を奮い立たせてくれました。「怖い!」と感じるテンションを観客に持続させるのはとても難しいことだと思いますが、それが実現できたシーンでもあるのかなと思っています



チョン監督:「シャーロットが遭遇する男について、どういう動きをつけようかずっとアイデアが浮かばなかったんですよ。それでついに撮影当日を迎えてしまったんですが……僕、個人的に日本の前衛舞踊が好きで。撮影当日の朝シャワーを浴びていたら、「ハッ! あれだ!!」と思いつきまして。その日に俳優さんにレクチャーしてお願いしました。そういった過程でできたシーンですが、結果的にはとても恐ろしいシーンに仕上がりましたね」




どうしたら人が怖がるかよく分かるんです


――『コンジアム』を観て、まるで子供のころ怖かったものを思い出すような感覚がありました。そこにはどんな秘訣があるのでしょうか。


チョン監督:「観客に血しぶきの出るような残酷シーンを見せたり、大きな音を出して驚かせたとして、そうすれば怖がってくれるかというと必ずしもそうではないと思ってるんですね。僕は祖母の家で親戚たちと12人という大所帯で暮らしてたんですが、小さい頃からそういった環境で遊んでいて、子供ですから怖い遊びが大好きなんですよ(笑)。自分が作り出した怖い遊びをとにかく色々やっていたので、どうしたら人が怖がってくれるのかよく分かるんですね。作り手と観客の駆け引きがそこにはあるんです。リズムとテンポがとても大事で、あとはいかに観客の想像力を刺激するか。怖いものをどう想像させるかですね。」



――ホラー作品を多数撮られている監督から見て、ホラー映画の魅力とはなんだと思われますか。


チョン監督:「“だるまさんが転んだ”とか鬼ごっことか、そういう小さい頃の遊びで感じる快感って“怖さ”だと思うんですよ。“だるまさんが転んだ”も、「動いてるところを見られてしまっただろうか?」という怖さがありますよね。恐怖は、小さい頃から持っている本能を刺激するものなんです。観客はそれを楽しみに劇場へ来てくれる。ホラー映画というのは観客が一生懸命「いつどこで怖いものが来るのか」とスクリーンを凝視してくれるんです。観客が怖いものを待っていてくれるという状況で、自分の学んできたことや表現したいことを見せられる。そういったところにホラー映画の魅力があると思いますね



作品概要


『コンジアム』

2019年3月23日(土)より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー

https://gonjiam.net-broadway.com/

監督:チョン・ボムシク 『奇談』『怖い話』

出演:イ・スンウク、ウィ・ハジュン『黄金色の私の人生』、パク・ジヒョン『必ず捕まえる』、パク・ソンフン『六龍が飛ぶ』、オ・アヨン、ムン・イェウォン

2018年/韓国/韓国語/94分/原題:昆池岩(곤지암)配給:ブロードウェイ


<『コンジアム』ストーリー>

恐怖動画を配信する人気サイト「ホラータイムズ」が一般からの参加者を募り、コンジアム精神病院への潜入を計画する。主宰者ハジュンを隊長とする7人の男女は、いくつものカメラやドローン、電磁検出器といった機材を現地に持ち込み、深夜0時に検索を開始。


100万ページビューを目標に掲げるハジュンの演出も功を奏し、サイトへのアクセス数は順調に伸びていく。しかし院長室、シャワー室と浴室、実験室、集団治療室を探索するうちに、ハジュンの想定を超えた原因不明の怪奇現象が続発。やがて悪夢の迷宮と化した病院内を泣き叫んで逃げまどうはめになった隊員たちは、世にもおぞましい“402号室の呪い” の真実に触れることに…



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