今回は『joy.net』からご寄稿いただきました。

医師たちが考える「無給医」問題(joy.net)

大学ごとにその存在の有無に違いはあれど、まだまだ少ないとはいえない無給医。有給ポストが限られるため、教育を受ける身として研鑽中のためと、様々な背景により存在しています。とはいえ、一般にはなかなか理解しがたい点があるのも事実(NHKニュースウォッチ9でも「大学病院の“無給医”“ただ働き”の実態」として放送)。はたして、当の医師たちは無給医についてどのような見解を抱いているのでしょうか? joy.netパートナー*1 の医師たちに聞いてみました。

*1:「job.net パートナーお申し込みフォーム」『job.net』
https://www.joystyle.net/partners/new

無給医ポストはどのように決められていたか?

学年順。在籍していた科は10年目くらいまで無給でした。(腎臓内科、関東)

医局のトップである教授が年功序列で決めていました。学年が下(若い医師)の頃は当たり前のように無給で仕事量も多いタダ働きしていました。(循環器内科、九州)

初期研修が終了すると、謎の専攻生という身分のポストがあり、そこに配属された。完全に年功序列ではあったが、妊娠・出産があれば、もちろん産休・育休の取得などかなわず、無給医局員ポストとなった。(呼吸器内科、関東)

以前は、専門医取得直前の後期研修医から10年目前後の医師、今は、だいたい10年目くらいの中堅が無給医だが、最近は、病院の職員としてではなく、大学の教員として給与が支払われるようになってきている。(小児科、九州)

一番多かった声は、学年順、年功序列との声。無給の是非はさておき、最も分かりやすい基準ではありますよね。次によく見られたのが、ライフイベント等でフルコミットが難しくなりがちな医師に声かけがという実態のようで・・・

医局長が決めていました(もちろん本人との話し合いです)。主に子育て中のママさんドクターがこのポストにいました。(麻酔科、関東)

扶養家族がいない、出産しそうな女医さんは優先的に無給ポストをすすめられた。(内科、関東)

この場合は、出産を控えた女性医師や育児中の女性医師が対象になることが多いようです。。。有給ポストが限られる中、勤務制限があるとの負い目から引き受けざるを得ない女性医師も少なくなかったのかもしれません。

同期の中で相談(科目非開示)

科の収益に応じて有給枠の人数が決まっていて、それ以外の人は無給です。(皮膚科、九州)

ややもすると、なんだかギスギスしてしまうかも・・・と思う上記回答。同期で相談ってお互いに引かなかったり、気を遣い合ったりと空気が重くなりそうです。一方で、自ら進んで無給を引き受けた方もいらっしゃったようで・・・

以前は有給の枠が決まっていたようで、入局順だったようです。私は2人目育休明けから、皆と同じようには働けないと判断し、自ら希望して無給になりました(その方が定時であがったり急に休んだりしても気楽だから)。(放射線科、関東)

育休明けのウォーミングアップとして無給ポジションだと戻りやすかったという声も寄せられていました。とはいえ、助走期間として期間限定なら良いですが、それが永続的になってしまうのは、やっぱり考えものですよね。

重症患者対応、万が一の事故・・・
無給医たちが困ったこと

無給医の立場を経験した医師たちに困った経験、理不尽を感じた経験を聞いてみたところ、思わずいたたまれない気持ちになるエピソードたちが続々と寄せられました。

いつ亡くなるかわからない重症患者の入院主治医を無給でするストレスは多大だった。(小児科、関西)

週5日、朝から18時過ぎまで病棟も外来も担当し普通に働いたが、文字通り全く給与が発生せず(¥0!)、非常勤扱いのため時間外の支給もなく、当然福利厚生もなし(国民年金・国民健康保険)!学会発表するにも学会に参加するための会費や旅費すら一切補助なし(有給ポストは発表しなくても会費・旅費が出るのに!)。仕事内容が一緒なのに有給ポストとの差があり過ぎてやってられない。学位取るまでの我慢と思ってこなしたが、子供を産んだ今、現実問題やりがいだけでは食っていけず、まじめに働いても給与の発生しない仕事なんて二度とやりたくない。(ちなみに学位は執念で取りました…苦笑)(小児科、関東)

労働契約と、内容があっていないのは、労働管理の面で良くないと思う。診療日ではない日も診療していて、医療上の事故や通勤の事故などがあったときに、身が守られていないと思う。(内科、関東)

社会保障がないのは大変だった。(消化器内科、関東)

無給でも当然患者さんへの責任は重大。さらには、無給ということは社会保障も、リスク時の保護も経費もないということ。研鑽中の身だから・・・との理屈はあれども、納得いかない気持ちに陥ってしまうのも無理はありません。さらには、子育て世帯にとって死活問題なのが保育園問題!

無給の場合は実際に働いていても勤務証明を出してもらえないので、認可保育園に入園することができない。(外科、関東)

働いているのに収入がないから、自治体への提出書類が出せない・・・。たとえ、勤務シフトを見せても受け入れてもらえなかった・・・との女性医師のエピソードもお聞きしたことがあります。涙。

研修医で微々たるお給料を頂いていて、無給の上司のネーベンだった時、「なんで、有給のお前に無給のオレが時間を割かなきゃいけないんだ。(治療方針、治療方など)教えねーよ、自分で考えろ」などなど、言われた事があります。(小児科、関東)

た・・・たしかに、無給のオーベンの下につくネーベンは辛いかも・・・。オーベンも理不尽であることは百も承知でも、イライラを抑えられなくなってしまうこともあるかもしれません。

おかしいと思いますが人手不足で仕方ないです。(産婦人科、関東)

それが普通だと思ってたので、疑問に思わなかった(泌尿器科、関西)

ギリギリで成り立つ医療現場の実態に直面している医師からは、上記のような声も。とはいえ、医師個人個人の責任感に過剰に依存し続けるのはやっぱり無理が生じてくるような気がしてなりません。

無給医はないほうがいい、でも・・・
医師たちのジレンマ

無給医は必要か。医師たちに直球ストレートな問いかけをしてみたところ・・・

プロであることを要求されるいかなる仕事にも対価は支払われるべき。(小児科、関西)

そもそも、無給で労働力を提供することに、社会的な正当化根拠が存在しない。しばしば自己研鑽には給与は発生しないという文言を聞くが、その労働を提供するために研鑽が必要ならば、その研修等に給与が発生するところは一般的常識である。(セミナー参加や学会と同じ)医師の、努力を惜しまないという性質を利用した、やりがい搾取である。(麻酔科、関東)

不要。学位取得後や留学後のお礼奉公も含め、悪しき慣習に過ぎない。医療費削減のため若くてよく働く世代を体良くタダで使い倒そうとしてるだけじゃないですか。労働時間規制問題で医者だけ規制を緩めようとしてることといい、無給ポストといい、そういう有り得ない対応をしないと維持できない今の日本の医療制度って、一体何なんだろうと思う。(小児科、関東)

不要。働くならたとえパート勤務としてでも対価が支払われるべき。立場が人をつくるというように、無給ポストは医師の自尊感情を著しく低下させる。(内科、関東)

予想通り、無給医NGとの声が多数。1つひとつの意見にも、大きく頷いてしまします。とはいえ、NGではあるものの…との迷いを感じさせる回答も多いようで・・・

大学は全員スタッフとして雇ってしまうとますます採算が合わないので仕方ないと思う。そもそもスタッフの枠が少ない。大学病院で出来る高額な検査はほぼ大学の手出しだし、研究費だって馬鹿にならない。教育にもお金がかかる。もっと国が研究にお金を出してくれれば多少マシになるのではないかと思う。(消化器内科、関東)

給料が払えないなら医局に入局させなければいいのではと思いますが、さらに人手不足になってしまいますね。必要悪なのでしょうか。まったく時代錯誤ですが、難しい問題です。(腎臓内科、関東)

本来はいけないことだと思うが大学の人件費の予算が小さすぎる(産婦人科、関東)

社会保障費の高騰している昨今、大学病院の売り上げも下がっており赤字の大学病院も多く、また国からの補助金も少なくなっており大学病院からの給与にも限りがあるので、どうしても大学医局では無給医が発生するのは仕方ないと思う。すべてはお金の問題です。国民皆保険にも関わる大きな問題なので、ここで議論しても何も解決しないと思います。(循環器内科、九州)
必要、というか、それでないと回らない(泌尿器科、関西)

(大学)病院の予算の少なさ、人手不足を理由に、致し方ない面もあるとの見方を示している声も多い模様。決して、必要悪と認めているわけではないものの、そうでないと医療が成り立たない現実とのジレンマを感じているようです。

大学医局だけでなく都内の大病院のなかにも無給医はいます。勉強したいという向上心は尊重すべきですが、本来あってはならない勤務形態ですので絶対に廃止すべきです。(脳神経外科、関東)

大学病院に限らず無給ポジションはあるとの指摘。編集部も何度か耳にしたことがあります。
一方で、大賛成ではないものの、無給ポジションのポジティブな側面を指摘する声も寄せられています。

医療事故や労災が起こった場合も有給医と同等に保護されるのであれば、無給というのは例えば何らかの事情でリハビリ程度に勤務したい先生にとってはある意味気楽なポストかもしれないと思う。それはやむを得ぬ事情で休んだり早退することや当直免除も「無給だから仕方ない」と周囲に許容してもらえる可能性があるから。本当は同じ労働者として、他のポストと差をつけてよいから給与は支払われるべきと思う。(科目非開示)

大学のスタッフではないけれど、大学で学びたいことがある場合には便利なシステムだと思う。中途半端に有給になると、他のアルバイトや診療との掛け持ちができないこともあるので、逆に面倒かもしれない。産後復帰医として働いたときは、専門医も取っていたのに、薄給、健康保険・年金なし、アルバイト禁止で、子どもを保育園に預けて働くと赤字だった。同じように子育て中の人は、専門医を取るために無給医になって大学からは給料をもらわず、アルバイトで稼いでいたが、その方がいいと言っていた。労働力の搾取は絶対によくないが、無給だからといって全面的に廃止すると、勉強したくてもできない人が出てくるのではないかと思う。(小児科、九州)

医師は継続的な研鑽が求められるもの。また、臨床を行う立場でありながら教育を受ける立場でもあるという二面性があるのも事実。少しずつ改善されてきている兆しはみられるものの、無給医がいないと成り立たない厳しい医療現場の現実もあります。すぐに解が見つかるような簡単な問題ではありませんが、全ての医師が過剰な自己犠牲なしに医療に邁進できるよう、建設的な議論と改善が進んでいってほしいですね。
よろしければ、こちら*2 より無給医についてのご意見もお聞かせください。

*2:「joy.netへのご連絡フォーム」『joy.net』
https://formcreator.jp/answer.php?key=VCuc5UE7vO6hNv7LUT30ww%3D%3D

執筆: この記事は『joy.net』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2018年10月31日時点のものです。

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情報提供元:ガジェット通信
記事名:「医師たちが考える「無給医」問題(joy.net)