starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

男性も大変!「父親の産後うつ」をもっと認識するよう研究者が警鐘


「男性の役割」と「女性の役割」に対する私たちの見方は、時代と共に大きく変化してきました。

特に少子化問題とも関係する「子育て」に対しては、出産を控えた夫婦だけでなく、社会全体が関心を向けるべきでしょう。

例えば最近では、父親も「産後うつ」になることが徐々に認知されてきました。

そして今回、アメリカのイリノイ大学シカゴ校(UIC)医学部に所属するサム・ウェインライト氏ら研究チームは、子育て中の父親に対してスクリーニング(選別検査)を行い、その30%が「産後うつ」だったと報告しました。

現代では、父親も母親と同じく産後うつに警戒して、適切なサポートを受ける必要があるのです。

研究の詳細は、2023年9月19日付の科学誌『BMC Pregnancy and Childbirth』に掲載されました。

目次

  • 産後に気分が落ち込む「産後うつ」
  • 検査によって「父親の30%が産後うつだった」と判明

産後に気分が落ち込む「産後うつ」

母親が「産後うつ」を発症することは、昔から認知されていた
Credit:Canva

産後うつ病(PPD:Postpartum depression)」は、出産後に生じる気分障害の一種です。

母親は、身体が妊娠前の状態に回復するまで2~3カ月かかります。

この間に、ホルモンバランスの崩れや育児の疲れ・ストレスが原因で、産後うつになることが多いと言われています。

そして母親の15%が産後うつを経験するのだとか。

最近では、男性の「産後うつ」も知られるように
Credit:Canva

父親は、「仕事と育児の板挟み」や「育児に関する悩みを誰にも相談できない」ことが原因で、子供が生まれてから3~6カ月の間に産後うつを発症する確率が高いと言われています。

ちなみに男性の場合は、そのほとんどが自分の身体で妊娠・出産を経験するわけではないため、「産後うつ」ではなく「育児うつ」などと表現される場合もあります。(※本記事では男性も女性も「産後うつ」と表現します)

そしてこれまでの調査や研究によって、新しく父親になった人の8~13%が産後うつになると考えられています。

これまでの報告では、男性の方が産後うつになる確率は低いと報告されていました。

そのため、時代と人々の見方の変化はあるものの、未だに「父親の産後うつは稀だ」という認識を持つ人も少なくありません。

しかし、ウェインライト氏ら研究チームは、その認識を改めるよう警告しています。

検査によって「父親の30%が産後うつだった」と判明

ウェインライト氏らチームが行った今回の調査は、2020年に設立された医療施設「UI Health Two-Generation Clinic」で実施されました。

この施設を利用している母親の許可を得て、合計24人の父親を対象に、産後うつを発症しているかどうかを検査でふるい分ける「スクリーニング(選別検査)」を行ったのです。

この検査には、母親の産後うつを見分ける際に使用される一般的なツールが用いられました。

参加者(縦:計24人)のうつ病スコア(横)。スコア8以上が陽性。
Credit:Sam Wainwright(UIC)et al., BMC Pregnancy and Childbirth(2023)

その結果、30%もの父親が産後うつ陽性だと判断されました。

ウェインライト氏は、以前の研究結果(8~13%)に比べて今回の割合が大きかった原因について、社会的背景が関係していると考えています。

医療施設「UI Health Two-Generation Clinic」を訪れる患者の多くは社会的に弱い立場にあり、人種差別や低所得の問題に直面しています。

今回の参加者のほとんどは、同様の問題に悩まされていました。

そのため、男性の産後うつについては、子供が生まれたことによる責任感の増加や、経済的な面での心労なども関連している可能性があります。

また出産に伴い女性のホルモンバランスが崩れることで、今まで通りのコミュニケーションが上手く行かないなどの問題に悩むケースも考えられます。

しかし、いずれの場合も、男性がこうした問題を他人に相談できるケースは少なく、それが深刻な男性の産後うつに繋がる可能性があるようです。

父親と母親は、個人ではどうしようもない社会構造の中で、必死に働き、育児に取り組んでいます。

仕事と育児の両立で神経をすり減らす父親たち
Credit:Canva

そんな中で、父親の産後うつは決して稀ではなく、場合によっては、母親よりも多いかもしれないのです。

そして彼らは、「理想の父親像」「仕事と育児のバランス」といった強いプレッシャーを感じながらも、誰にも相談できないでいるのです。

実際、クリニックを訪れる父親たちは次のようにコメントしました。

「私は配偶者をサポートするためにこのクリニックを訪れました。

だから私自身もストレスを感じていますが、そのことを配偶者に知られたくありません」

本来、産後のメンタルサポートは両親のどちらにも必要ですが、父親は自分を除外してしまう傾向があります。

当然、父親が倒れてしまうなら母親の負担が増加し、「共倒れ」になる確率が高まるでしょう。

父親も産後うつになることを認め、助けを求めることが大切
Credit:Canva

こうした問題に無自覚でいた場合、互いにメンタルの弱い夫婦は、出産を機に家庭が崩壊するという最悪の状況に陥ってしまう恐れも考えられます。

これらは、「父親にもサポートが必要」「父親も産後うつの検査を受ける必要がある」といった見方が、もっと社会全体に普及すべきであることを示唆しています。

喜ばしいことに、今回の研究に参加した父親たちの中には、この検査がきっかけでメンタルヘルスのサービスを希望する人がいました

私たちは子供に対して、「自分の命と健康を大切にしてほしい」と感じています。必要なら「誰かに助けを求めてほしい」とも感じています。

そのことを教えるための最善の方法は、まず「父親と母親が自分の健康を気遣って助けを求める」ことであり、そのためにも「サポートを求めやすい環境をつくる」ことが大切なのでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Should fathers be screened for postpartum depression? https://today.uic.edu/postpartum-depression-in-fathers/

元論文

Screening fathers for postpartum depression in a maternal-child health clinic: a program evaluation in a midwest urban academic medical center https://bmcpregnancychildbirth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12884-023-05966-y
    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.