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「背後に誰かいる…」一人でいるのに誰かの存在を感じる現象の科学的説明


恐ろしいホラー映画を鑑賞した後や、怖い話を聞いてしまった日の夜、部屋に一人でいるとなんとなく誰かがいるような気がすることはありませんか?

その時、あなたの後ろには霊が……、ではなく、誰もいないはずなのに誰かがいるような気がする現象は、科学で説明がつくようです。

「一人でいるのに誰かがいる気配がする」と感じたことがある人は意外にも多く存在しており、決して幻覚や勘違いで片付けられるようなものではなく、古くから幾度にわたり研究が行なわれています。

その結果、どうやら「何者かの存在感」は人が常に持っている感覚と強い関わりがあるようです。

具体的にどんな要因が「何者かの存在感」を演出しているのでしょうか。

目次

  • この部屋、誰かがいる気がする……
  • 感覚の混乱が「何者かの存在感」を生み出す

この部屋、誰かがいる気がする……

部屋に一人でいる時に「自分以外の何か」の存在を感じるような経験をしたことがある人は多いと思います。

ホラー映画を鑑賞した後などに、お風呂に入れないという定番のエピソードも、頭を洗っている時背後に何者かの存在を感じるなどが理由ではないでしょうか。

世界を見てもこのような体験をしたことがある人は多いようです。

古くは、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジの3人の学寮長によって心霊現象を科学的に検証するために設立された「心霊現象研究協会(SPR)」が1894年に行った「幻覚の国勢調査」で報告されています。

この調査では1万7000人以上を対象に不思議な体験の有無を調査したところ、43人に1人が自分以外の何者かの存在を感じたことがあると回答しています。

これはたまたまや、勘違いの申告と捉えるには無視できない割合であると分析されました。

ただ当時、幻覚は超常現象の一種と解釈されていて、非科学的であると多くの人から懐疑的な目でみられていました。

SPRの調査自体は信頼性が高いと考えられていましたが、誰かがいるような感覚を覚える人が多いという結果については、何らかの不思議な体験をした人を中心に調査を行ったことで現れた回答の偏り(回答バイアス)なのではないかと、疑問視されたのです。

しかし、不思議な体験や感覚は、今も多くの人の間で語られ続けていることから、一定の人々が自分以外の何かの存在を感じていることは間違いないでしょう。

多くの人々は、このような体験をした時、実際に自分の身に何が起こったのかはうまく言葉にできないかもしれません。

しかし現在では、心と身体の科学的モデルを用いて、この不可解な体験を説明する研究がいくつか報告されています。

不思議な体験も古くから研究されてきました
Credit:canva

睡眠麻痺(金縛り)と関連している

SPRが集めた体験談の中には、入眠時幻覚と考えられるものが多く見られます。

入眠時幻覚とは、覚醒状態から睡眠状態へ移行する際の半覚醒状態で体験する幻覚のことで、現代の話題でよく耳にする現象としては「睡眠麻痺」、いわゆる金縛りがこれにあたります。

睡眠状態へ移行する際、脳が半覚醒状態で、身体が深い睡眠に入ると身体は動かないのに意識はあるという金縛り状態になることがあります。

心霊現象の報告は多くが入眠時幻覚と考えられている。典型的なものが金縛り。このときなにかの存在を感じたという報告も多い。
Credit:canva

またこの状態の時、意識も睡眠状態に向かっているため、夢と現実が混同されたような幻覚を見ることがあります。実際、睡眠麻痺を経験した人の半数以上が、何らかの心霊体験をしたと報告します。

ビクトリア朝時代にSPRが記録した体験談では、この入眠時幻覚では善良な精霊など人に安心感を与えるものの存在を感じたという報告が多かったようです。

しかし、現代の睡眠麻痺の体験では、恐怖や不安を与える何かの存在を感じる傾向が強くなっているようです。

時代によってこの入眠時幻覚の体験には傾向に違いがあるものの、世界各地で何物かの存在感に関連するさまざまな伝承があることから、これらが人間の共通して体験する現象であることは確かなようです。

しかし、なぜ睡眠麻痺という状況が何物かの存在感を生むのでしょうか。

2007年に行われた研究では、睡眠麻痺の状態で目覚めた時、我々の本能が危機を感じ、脳がその不安を埋める形で何物かの存在感を生み出すのではないかと提唱されました。

さらに最近の研究で、この何物かの存在感は、睡眠麻痺だけでなく、パーキンソン病や精神的な問題など、さまざまな状況で体験されることが明らかになっています。

このことから、単に睡眠中の現象だけでなく、より幅広い現象として捉える必要があるのかもしれません。

感覚の混乱が「何者かの存在感」を生み出す

過去に行なわれた神経学的な研究や脳の実験では、身体からのサインが何物かの存在感を感じさせることが明らかになっています。

2006年にイスラエル・ハダッサ・ヘブライ大学の神経学者、シャハール・アルジー氏とその研究チームが行った実験では、女性の脳の特定の部分(左の側頭頭頂接合部、略してTPJ)を電気的に刺激した結果、女性はまるで「影」のような存在を感じるという現象を体験しました。

このTPJという部分は、私たちのさまざまな感覚や身体に関する情報をまとめる役割があります。

また、2014年に行なわれた別の実験では、感覚を混乱させることで、参加者にそこにいない何者かの存在を感じさせることに成功しました。

具体的には、この実験は参加者の動きに合わせて背後を突くロボットを用いて、自身の操作で自分の背中を突かせました。

このとき、動きが完全に同期していると参加者は自分で自分の背中を突いているような感覚を覚えましたが、500ミリ秒程度同期をズラすと、今度は参加者は背後に誰かが立っているという感覚を強く覚えるようになったのです。

これは、私たちが普段自分でやっている動作に対しても、想像とズレが生じて感覚に些細な違和感を覚えると、そこに別の何者かの存在感を生み出してしまうことと示しています。

これは睡眠麻痺での体験にも同じことが言えます。睡眠麻痺によって自身の身体の感覚にイメージとのズレが生じた結果、まるで別の存在が近くにいるかのような感覚が生まれるのです。

しかし、これらはすべて私たち自身の感覚に僅かなズレが生じているだけに過ぎません。

私たちの感覚が「何者かの存在感」を生み出しています
Credit:canva

肉体的、精神的な状況が影響している

2022年にイギリスのダラム大学心理学准教授のベン・アルダーソン・デイ氏が行った研究では、病院の記録、宗教の儀式、そして過酷な運動や感情の動きからも何者かの存在感か生み出されているのではないかと推測し、調査が行なわれました。

その結果、これらの場面では多くの人が何者かの存在感を近くに感じることがあると報告しています。

特に長時間スポーツをした時や、大切な人を亡くした時など、肉体を酷使した場合や大きな悲しみの感情を持つ場合に、この感覚が強くなることがわかりました。

具体例として論文でも報告されているものの1つに、登山家のラインホルト・メスナー氏の体験があります。

彼は世界で十番目に高い山ナンガ・パルバットの頂上から弟と二人で下山していたとき、「背後にずっと3人目の誰かが一定の距離を保ちながら、私の少し右、数歩離れたところを一緒に降りているのを感じた」と話しています。

これは空間的な位置もはっきり感じており、振り返っても誰もいないという心霊現象のような体験です。

しかし、これも疲労に関連して自身がイメージする体の動きと実際の動きにズレが生じたことで感じた幻覚だと理解されます。

この感覚に関する研究は、歴史的には古いものの、科学的な研究としてはまだ始まったばかりです。

まだ解明されていない部分も多くありますが、将来的にはこの感覚が詳細に説明される日がくるのかもしれません。

「誰かがいる気がする…」と感じる時は、おそらく自分の感覚が何らかの理由でズレを生じさせている可能性があります。

旅行先で不思議な体験をしたという報告が多いのも、ほとんどの場合、旅の疲れが感覚を普段とズラしていることに起因するのでしょう。

運動や仕事で身体が疲れていたり、ホラー映画を見たために精神的に疲弊していたり、逆に感覚が普段より鋭くなっていたり、そうして生じる普段の自分との感覚のズレや違和感が、不安を生み、そこに何者かの存在感を生み出しているのです。

そんなときは気分を落ち着けてリラックスするように努めるといいかもしれません。

それでも感覚が消えない場合は……、ゆっくり後ろを振り向いてみましょう。

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参考文献

Feel Like You’re Not Alone, But You Are? Science Can Explain That Creepy Feeling https://www.sciencealert.com/feel-like-youre-not-alone-but-you-are-science-can-explain-that-creepy-feeling

元論文

Varieties of felt presence? Three surveys of presence phenomena and their relations to psychopathology https://www.cambridge.org/core/journals/psychological-medicine/article/varieties-of-felt-presence-three-surveys-of-presence-phenomena-and-their-relations-to-psychopathology/C7DD60644076559D5685D51226693E5D Neurological and Robot-Controlled Induction of an Apparition https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982214012123
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