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「ジャンプ移動」でも疲れないカンガルー、昔はジャンプしなかったと判明


カンガルーの代名詞といえば、両足で同時に飛び跳ねる「ホッピング」です。

彼らは時速50キロものスピードで、数百キロの距離を何時間も延々とホッピングし続けられます。

こんな無茶な移動方法でどうして疲れないのでしょうか?

例えば、私たちが同じ100メートルを二足で走るのと両足で跳ぶのでは、どちらが疲れるか試すまでもありませんね。

しかしカンガルーにとっては、ホッピングこそ最もエネルギー効率のいい移動方法なのです。

その秘密はカンガルーの体のつくりに隠されています。

目次

  • カンガルーの「ホッピング」の仕組みはどうなってる?
  • カンガルーはかつて「二足歩行」だった?

カンガルーの「ホッピング」の仕組みはどうなってる?

カンガルーはどうやって「ホッピング」をしているの?
Credit: canva

カンガルーは哺乳類の一グループである有袋類(ゆうたいるい)に属しますが、他の哺乳動物と比べて、下半身がとても変わった構造をしています。

彼らは左右の脚を交互に動かすための構造や、二足で走るのに必要なお尻の筋肉が発達していません。

しかしその代わりとして、アキレス腱(足首と脚の筋肉をつなぐ部分)が大きく発達しました。

ヒトの足首にもアキレス腱はありますが、私たちの腱はやや硬くて張りがあります。

他方で、カンガルーの腱はヒトより遥かに長く、また柔軟に伸び縮みするようにできています。

カンガルーが両足で着地すると、関節が「くの字」に曲がることでアキレス腱が足首の方に引っ張られます。

イメージでは、輪ゴムを伸ばした状態に近いでしょう。

カンガルーの腱のイメージ
Credit:Springs, Bows, and Gears: Amazing Animal Jumpers/SciShow

次に両足を地面から離すと、引っ張られた腱のエネルギーが一気に解放されて、輪ゴムを飛ばすようにビョンッと跳躍できるのです。

あとはこれの繰り返しになります。

要するに、カンガルーは両脚に「天然のバネ」を仕込んでいるようなものなので、筋肉をほとんど使わなくとも連続してホッピングし続けられるのです。

それから「尻尾」も重要な役割を果たしています。

カンガルーの尻尾は非常に筋肉質で太く、オス同士がケンカをするときは、尻尾を支えにして両脚でケリを入れるほどです。

テレビなどでご覧になったこともあるでしょう。

尻尾を支えにしてケリを入れるカンガルー
Credit: canva

これまでの研究で、カンガルーは跳躍の際に尻尾を振り子のように活用していることが分かっています。

具体的にいうと、空中に跳んでいるときは尻尾を振り上げ、地面に着地するときに尻尾を振り下ろし、また跳躍する瞬間に尻尾を跳ね上げます。

そうすることで、先のアキレス腱と同じように尻尾がバネの役割を果たしてくれるのです。

両脚が「天然のバネ」のようになっている
Credit: canva

このような体の構造のおかげで、カンガルーは無駄な筋力を浪費することなく、長い距離を延々とホッピングで移動できるようになりました。

ちなみに、カンガルーの1回の跳躍距離は約8メートルで、これは人間の走り幅跳びの世界記録と同じくらいです。

それを連続で何時間も繰り返すのですから、その凄さが身に染みるでしょう。

しかし一方で、カンガルーたちは昔からずっとホッピングを続けてきたわけではないことが、最近の研究で明らかになっています。

実は二足で走る時代もあったらしいのです。

カンガルーはかつて「二足歩行」だった?

英ブリストル大学(University of Bristol)の研究チームは、過去2500万年にわたるカンガルーとその近縁種の化石を広範に分析しました。

その中で、絶滅したカンガルーの脛(すね)と足首の骨を調べた結果、現代のカンガルーとは違い、持続的なホッピングができなかったことが示されたのです(Alcheringa: An Australasian Journal of Palaeontology, 2023)。

特に今回の研究では、持続的なホッピング移動ができる体重の限界は約140〜160キロと示唆されました。

現代のカンガルーの大半は20〜30キロ、重くても50〜70キロほどです。

ところが、絶滅した「プロテムノドン(Protemnodon)」や「ステヌリン(sthenurine)」は体重が150キロ前後から200キロ近くあるものもいました。

そのため、二足歩行や四足歩行を主とし、ホッピングはできたとしても限定的か、かなり低速だったと考えられています。

つまり、カンガルーの移動手段は体格に合わせて多様に変化し、決して「ホッピング一本」ではなかったということです。

左:現代カンガルー、右:絶滅カンガルーの足首。絶滅種の足首はホッピングに不適だった
Credit: University of Bristol –Skipping evolution: some kangaroos didn’t hop, scientists explain(2023)

では、なぜ現代のカンガルーはホッピングを移動の主流としたのでしょうか?

これについてはまだ決定的な答えは出ていませんが、仮説の一つとして「広い草原に住んでいること」が挙げられています。

彼らが生息するオーストラリアの広大な土地は、鬱蒼とした樹木や複雑な勾配、坂道などの障害があまりなく、上下方向に細かく移動する必要がありません。

すると、まっさらな平地を延々と移動するには、バネ仕掛けのホッピングを使った方法が最もエネルギー効率がいいのです。

ただ環境の変化によって生息地のあり方が変われば、カンガルーの移動手段もまた変化するかもしれません。

ホッピングは必ずしも進化の終着点ではないのです。

カンガルーは人類よりも進化的に先を行く存在だった⁈

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参考文献

Skipping evolution: some kangaroos didn’t hop, scientists explain https://www.bristol.ac.uk/news/2023/june/kangaroo-hop.html Some ancient kangaroos didn’t hop, scientists explain https://phys.org/news/2023-06-ancient-kangaroos-didnt-scientists.html Ancient Kangaroos Didn’t Hop, Paleontologists Say https://www.sci.news/paleontology/kangaroo-locomotion-12001.html Why Do Kangaroos Hop Without Seeming To Get Tired? https://www.scienceabc.com/nature/animals/why-do-kangaroos-hop-without-seeming-to-get-tired.html

元論文

Myth of the QANTAS leap: perspectives on the evolution of kangaroo locomotion https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/03115518.2023.2195895
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