「キャストパズル」というものをご存知ですか。「キャストパズル」の最初の作品は1983年に株式会社ハナヤマから発売されました。キャストパズルの製作は、世界的パズル家である故芦ケ原伸之(よしがはらのぶゆき)氏の企画に株式会社ハナヤマの開発陣が賛同し実現したものでした。残念ながらその名称は2017年6月にキャストパズル」から「はずる」変わってしまいましたが、パズルとしての形は変わっていません。ワイヤー製ではない金属製の知恵の輪といったところです。

キャストパズル誕生のきっかけ

1880年代の英国では空前のパズルブームが起きていたそうです。色々な種類のパズルの中に、「鋳造された金属のパズル」というものがあったそうです。1980年代になり芦ケ原氏が、この「鋳造された金属のパズル」に魅せられて、現代版の「鋳造パズル」を作りたいと考えました。「鋳造パズル」は、金型に炉で溶かした亜鉛合金を流し込んで鋳造します。そのパズルの製造工程全体のことを「ダイキャスト製法」と呼ぶことから、「鋳造パズル」は「キャストパズル」という名称で世に出ることになりました。

刻まれている文字は...。

写真のキャストパズルに刻まれているのは、「Nob's Last Present」という文字です。「ノブの最後のプレゼント」という意味です。 芦ケ原氏は、「ノブ」とよばれていました。パズル好きの方ならば、「ノブ」と言われたらそれは芦ケ原氏のことであると了解しています。

芦ケ原氏は2004年6月に急逝されました。芦ケ原氏は世界三大パズルコレクターであるジェリースローカム氏と共に「PLATE」というキャストパズルを設計していたのですが、その完成を見ることなく2004年6月に急逝されました。ハナヤマの開発陣の方々は、芦ケ原氏の意向を受け継いで改良をかさねパズルを完成させました。このパズルに刻まれている文字は、芦ケ原氏に対するそうしたハナヤマの開発陣、ハナヤマという会社の方々の思いが込められているものなのでしょう。

キャストパズルは60種類以上作られていますが、このような刻印のあるものはありません。このパズルを手にして、どのようにして解こうかと考え見つめていた時にこの刻印を見つけました。本人が「Nob's Last Present」と刻印するとは考えられませんでした。だとすると、この刻印は開発陣がそうしようと考えたのだと思いました。当時のことをご存知の方にお聞きして、その通りであることがわかりました。

「CASTPLATE」の全体像です。

この写真が「CASTPLATE」の全体像です。左下の方に刻印が見えます。このパズルはたくさんの穴があいた円盤からリングを取り外すというものです。穴はたくさんあいていますが、すべての穴を通ってリングをはずすわけではありません。通る穴は決まっています。その穴を探しながらリングを移動させて、最後には円盤からリングをはずすというものです。

リングがはずれるとこうなります。

あっちへ行ったりこっちへ行ったりと通るべき穴を探すのは大変ですが、本当にはずれます。はずれたときには、「やったー」という気持ちで一杯になります。はずした後は、もとにもどします。

「キャストパズル」と「はずる」のパッケージ

パズル自体は「CASTPLATE」とは別のものですが、左側が「キャストパズル」のパッケージで右側が名称変更後の「はずる」のパッケージです。皆さんどこかで見たことがあるのではないでしょうか。「CASTCOIL」のパッケージの下には、「はずせますか?もどせますか?」という文字が見えています。「キャストパズル」も「はずる」も、はずすだけではだめなのです。もとにもどさなくてはなりません。

芦ケ原氏が監修したキャストパズルは、全部で8種類あります。

芦ケ原氏が監修したキャストパズルは、「キャストホース」「キャストスター」「キャストエスエス」「キャストリング」「キャストエルク」「キャストデビル」「キャストラビ」「キャストニューズ」の8種類です。「キャストプレート」は監修した中には入っていません。手元にある「キャストリング」以外のパズルをご紹介しましょう。

こちらは「キャストホース」です。

鎖でつながった蹄鉄に、もうひとつの蹄鉄がついています。このひとつの蹄鉄を鎖でつながっている蹄鉄からはずすというパズルです。

こちらは「キャストスター」です。

蛇の形をした輪の中に入っている星のような形をしているパーツを取り出します。このパーツは蛇の形をした輪の中でくるくると動くのですが、なかなか取り出すことができません。パーツをよーく観察すると取り出すことができるかもしれません。

こちらは「キャストエスエス」です。

Sという文字の形をした2つのパーツがつながっています。2つのパーツを別々に離します。見た感じではあっさりと離れそうなのですが、動きが複雑で意外と難しいです。

こちらは「キャストエルク」です。

鹿の角のような形をした2つのパーツがつながっています。この2つのパーツを離します。絡み合っている2頭の鹿の角がほどけるように動かしながら離していきます。

こちらは「キャストデビル」です。

つながっている2つのパーツを別々に離します。2つのパーツをある位置に移動すると、スーッと離れます。

こちらは「キャストラビ」です。

表面に見える迷路は裏面にもあります。表面と裏面の迷路の形は異なっています。LABYという刻印のある方のパーツには突起があります。この突起部分を動かすことにより迷路を通過させていき、2つのパーツを離します。

これは「キャストニューズ」です。

しっかりとつながっている2つのパーツをバラバラにします。「えっ、こんなに簡単にバラバラになるの?」と思ってしまうくらい簡単にバラバラにすることができます。しかし、その方法を思いつくのは簡単ではありません。

パズル家である芦ケ原さんが残されたものはキャストパズルだけではありません。多くのパズル作品、パズルに関するご自身の書籍、海外のパズルに関する書籍を翻訳した書籍などがあります。このような功績を残された芦ケ原さんに対してハナヤマの開発陣の方々は、「Nob's Last Present」という言葉を刻んでおきたかったのでしょう。

パズルには、ジグソーや知恵の輪、ルービックキューブ、組木などたくさんの種類があります。どのパズルにも面白さがあって、取り組み始めるとつい夢中になり途中ではやめられなくなってしまうことがあります。脳活にめちゃくちゃ役立つ!自作で知恵の輪を作る方法! を参考にして知恵の輪に挑戦してみることもできます。

情報提供元:秒刊SUNDAY
記事名:「3D知恵の輪パズルの刻印に込められた思いが深すぎる件!