はじめに


万城目学と湊かなえ。このベストセラー作家2人に共通するのが、兵庫県豊岡市にある城崎温泉です。文豪・志賀直哉をはじめ多くの文人に愛され、1300年の歴史を持つこの温泉街では次世代の“温泉文学”が生まれています。
湯めぐりを堪能したあとは、ゆっくり本を読む。そんな贅沢な旅をしてみませんか。

多くの文人に愛された7つの湯をめぐる


兵庫県豊岡市にある城崎温泉は、かつて文豪・志賀直哉が養生のために訪れ、滞在中の体験をもとに小説『城の崎にて』を執筆したなど、多くの文人墨客に愛された関西屈指の温泉街です。

街の中央を流れる大谿川に、川岸のしだれ柳、川沿いに軒を連ねる旅館――そんな温泉街ならではの風景に加えて、特徴的なのは共同浴場を行き来する多くの浴衣姿。城崎温泉では、宿の内湯でゆっくりするのではなく、宿を“客間”、道を“廊下”に見立て、個性ある7つの外湯をめぐるのが正しい楽しみ方なのです。

 城崎温泉駅を出てすぐにある「さとの湯」は、日本最大の駅舎温泉。大浴場や露天風呂に加え、玄関横に誰でも利用できる足湯がついているので、ちょっとした休憩がてら立ち寄るのにぴったりです。また、駅から徒歩15分ほど、温泉街の一番奥にある「鴻の湯」は、豊岡市のシンボルでもあるコウノトリが傷を癒したとされ、落ち着きある露天風呂が人気です。そのほか温泉街の中央に位置する「一の湯」、モダンな建物が印象的な「地蔵湯」など、ほとんどの宿で外湯の無料入場券をもらうことができるので、宿泊者は好きなだけ温泉が楽しめるんです。

志賀直哉が滞在した創業300年を誇る日本旅館「三木屋」


大正2(1913)年、志賀直哉は30歳のときに山手線にひかれて大怪我を負い、養生のため城崎温泉に3週間ほど滞在しています。そのときの経験を元に書いた小説『城の崎にて』が生まれた宿が老舗旅館「三木屋」です。大正14(1925)年に震災により倒壊したものの、昭和2(1927)年に再建、志賀直哉はその後も幾度となく足を運んでいます。平成25(2013)年11月には大幅リニューアルが行われ、歴史を感じる木造建築はそのままに、モダンで心地よい空間に生まれ変わりました。志賀直哉が好んで泊まった「26号室」は当時のまま残されていて、宿泊することもできます。

◆城崎温泉 三木屋
住所:兵庫県豊岡市城崎町湯島487
電話番号:0796-32-2031



城崎温泉 三木屋 の公式HPはこちら



城崎ゆかりの作家の展示を行う「城崎文芸館」


平成8(1996)年のオープンから城崎温泉ゆかりの作家に関する展示をつづける「城崎文芸館」が、平成28(2016)年10月、開館20周年を機にリニューアルしました。

リニューアル後記念すべき第1回の企画展はその名も「万城目学と城崎温泉」。『鴨川ホルモー』、『プリンセス・トヨトミ』などの小説で知られる万城目学の作家としての歴史はもちろん、実際に城崎に滞在して書き下ろした小説『城崎裁判』が生まれるまでの過程や仕事現場を、万城目さんご本人が撮影した写真やTwitterを元に垣間見ることができます。

第二回は『城崎へかえる』を書いた湊かなえさんの企画展が予定されています。

◆城崎文芸館
住所:兵庫県豊岡市城崎町湯島357-1
電話番号:0796-32-2575

第一回企画展 万城目学と城崎温泉
期間:開催中~2017年5月7日(日)


城崎文芸館 の公式HPはこちら



ここでしか買えない地域限定本『城崎裁判』『城崎へかえる』



文学の街・城崎を訪れたならぜひ手に入れて欲しいのが、NPO法人「本と温泉」から発売されている2冊の小説。万城目学の『城崎裁判』と湊かなえの『城崎へかえる』。いずれも城崎の外湯や旅館、城崎文芸館などで手に入れることができる地域限定の作品です。

『城崎裁判』は、小説家・万城目学が実際に城崎を訪れ、志賀直哉の足跡を辿るなかで不可解な“裁判”に巻き込まれていくファンタジー作品。温泉に浸かりながら読めるように、と耐水性の高いストーンペーパーを使用し、カバーはオリジナルのタオルという突飛な装丁に驚かされます。

『城崎へかえる』は、家族旅行で城崎を訪れたことがあるという著者・湊かなえによって描かれた、かつての記憶を辿りながら城崎を旅するひとりの女性の物語。まるで本物のような“カニ”柄のカバーから、カニの身のように押して取り出す縦長の装丁が目を引きます。見た目の面白さに加えて、城崎でしか購入できない貴重さ、そして読めば城崎の風景を思い出す物語への身近な感覚が、訪れた人を惹きつけています。

取り扱い店舗は下記「本と温泉」公式HPでご確認ください。


本と温泉 公式HPはこちら


新旧の温泉文学に出会える城崎温泉へ


城崎温泉は、街中に20以上の文学碑が立つほど、多くの文人に愛された温泉地です。文豪らが惚れ込んだ湯治場は、志賀直哉が訪れてから100年以上経ったいまでも、変わらず訪れる人を癒しています。
そんな歴史風情に新しい温泉文学を取り入れ、次の100年に向けて進化しようとする城崎温泉。新旧文学に触れながら、しっとり癒される旅をしませんか。

情報提供元: 旅色プラス