はじめに


全国各地で桜が見ごろを迎え、お花見が楽しみな季節になりました。全国の旬なチーズ情報をご紹介する連載の第2回目は、そんな今の時期にぴったりなチーズをご紹介します。北海道・十勝で自然と共存しながら牛を育て、チーズを手作りしている農場で、そのチーズは生まれました。農場のある新得町は現在放送中の朝ドラのロケ地にもなっている場所。お取り寄せもできますが、ぜひこの土地を訪れ、食べてほしい、土地の恵みをいただいていることを感じられるチーズです。

写真協力:共働学舎新得農場
文/田口真由美

北の大地で営まれる、自然や牛と共にあるチーズ作り


今回紹介するチーズが作られているのは、北海道の中央部にある新得町で40年以上前から酪農を営む農場「共働学舎」。十勝川の最上流、新得山のふもとに広がる豊かな自然の中で牛たちを育て、その恵みをいただいてチーズを作っています。

その土地のミルクでその土地ならではのチーズを作る。そんな当たり前のようで、効率化、機械化が進んだ現代では珍しくなってしまったフランス伝統の製法に習ったチーズ作り。それを日本ではじめた、先駆け的な農場です。

今では本場ヨーロッパでも認められるチーズに


「共働学舎」ではフレッシュタイプから熟成タイプまでさまざまなチーズを製造しています。なかでも1月中旬~5月下旬の季節限定で作られているのが「さくら」です。手のひらに乗るかわいらしいサイズのチーズは桜葉で包まれ、桜花の塩漬けも乗っています。粉を吹いたような白い表面は白カビではなく酵母。日本伝統の発酵が行われている酒蔵から取り寄せた、日本酒由来の酵母を乳酸菌と共にミルクに入れてチーズを作っていて、これにより日本人の味覚に合う、優しい味わいになるとか。さらに「さくら」を1か月ほど職人が食べ頃を見極めながら熟成させた「さくらのアフィネ」は柔らかいテクスチャーが特長で、「さくら」とはまた違った味わいを楽しむことができます。

まさに日本らしいチーズですが、「さくら」はチーズの本場フランスのチーズコンテストで金賞を獲得するなど、数々のコンテストで認められているチーズなのです。

日本ならではのチーズ、「さくら」ができるまで


「さくら」は、海外のコンテストに出品するため、日本らしいチーズを作りたいと思案するなかで生まれたチーズなのだとか。もともと農場では、フランスのチーズ「サン・マルセラン」を手本に作っていたチーズがあり、これをフランスの国際コンテストに出品するためアレンジをしたいと思っていました。そこで思いついたのが農場内にたくさん生えていた新得町の町木「エゾヤマザクラ」の葉を使って桜餅のような香りを付けること。葉を塩漬けにし、チーズに乗せて熟成させてみたところ、上品な香り漂うチーズになり、さらに桜の花も乗せたところ「日の丸」も連想させる和のチーズに仕上げることができました。現在は、静岡県西伊豆、松崎町のオオシマザクラの葉を塩のみで漬け込んだ、昔ながらの製法の桜葉を取り寄せ使用しているそうです。

おわりに


「共働学舎」のスタッフの方におうかがいしたところ、「さくら」はその香りを楽しんで欲しいので、シンプルにそのままで、「さくらのアフィネ」は柔らかいので天然酵母のパンにのせて食べると美味しいですよ、とのこと。春を感じることができるチーズぜひ味わってみてくださいね。

◆共働学舎新得農場(きょうどうがくしゃしんとくのうじょう)
住所:北海道上川郡新得町字新得9-1
電話番号:0156-69-5600
情報提供元: 旅色プラス