日本のエンジンといえばDOHC!——というイメージを払拭するがごとく、自他共にエンジン屋と認めるホンダが送り出したSOHCハイパフォーマンスエンジンがRシリーズである。ユニークな片閉じバルブ制御を含めたその特徴をご紹介しよう。

直列4気筒のR型エンジンは2005年にシビックに搭載されて登場。初出しはR18A型だった。その後、2006年にデビューしたストリームに、排気量を拡大したR20A型が現れた。両機ともに、最大の特徴は吸気バルブを遅閉じさせることでミラーサイクルとなる可変吸気量制御だ。

ドライブ・バイ・ワイヤ(DBW)で低速・低付加走行時にもスロットルバルブを大きく開かせるよう制御した上、1バルブ休止i-VTECにより吸気バルブの閉じタイミングを60度まで遅角させることでシリンダー内の混合気を強制的に吸気ポートへ押し戻す。出力を適正化させるとともに、低負荷領域のポンピングロスを最大16%低減させた(R18A)。なお、3500rpm以上はオットーサイクルに戻る。




R18A型は、先代に当たるD17A型に対してボアを拡大(75mm → 81mm)し吸気バルブ径を大きくした(30mm → 32mm)。なお、排気バルブ径は同じ(26mm)。ボアピッチも84mmから88mmに広げている。しかしエンジン全長は大きくなるのを極力抑えていて、それに大きく寄与したのがカムトレインのタイミングチェーン化だった。とくにR型のタイミングチェーンは細幅設計に余念がなく、ピッチは通常の6.35mmながらガイド/リンクプレートの数を4/3枚に減らしている。排気マニフォールドはヘッド内蔵構造とし、冷間時の触媒早期活性化を図った。

ロワーブロックを用いて回転運動系をきちんと働かせる構造にしたのもトピック。支持剛性を高めることで高回転高出力を実現している。コンロッドについてもかちわり型を採用、位置合わせのためのノックピンを拝することで軽量化を果たした。




シリンダーブロックは鋳鉄ライナー鋳込みのオープンデッキ構造。フリクションロス低減のためのプラトーホーニング、ピストンスカートへの二硫化モリブデンショット、リングへのイオンプレーティングなど、さまざまな手段が施された。先述のロワーブロック構造=高回転志向と合わせて高いパフォーマンスをねらう設計だ。高圧縮比化のためのピストンクーリングジェットも備えている。

R20A

吸気系には可変長構造を採用。樹脂製のマニフォールド内にバイパスバルブを内蔵し、5200rpm以下では390mmの、5200rpm以上では390mmの吸気管長を使い分ける。なお、R20Aは同じ可変長構造ながら3ステージ。3200rpm以下ではロングに、3200~4700rpm時にはショートに、4700rpm以上では再びロングに切り換える。これは、長尺では慣性過給効果は得られるものの3000rpm付近でマイナスの共鳴が発生してしまったこと(=トルクの谷が生じる)による制御。マイナスの共鳴エリアのみ短尺とすることで、全域をなだらかなトルクカーブとしている。




R20A型はヘッド/ブロックともにR18A型と共通。9.6mmのストロークアップ分は、ピストンピン〜トップの寸法を詰めることで創出した。コンロッドはC38CMSS2材による強化構造で、R18A型と同じピン径で成立させた。カセット式の2次バランサーを備えているところもR18Aとの差異点である。

■ R18A


シリンダー配列 直列4気筒


排気量 1799cc


内径×行程 81.0×87.3mm


圧縮比 10.5


最高出力 103kW/6300rpm


最大トルク 174Nm/4300rpm


給気方式 自然吸気


カム配置 SOHC


吸気弁/排気弁数 2/2


バルブ駆動方式 ロッカーアーム(VTEC)


燃料噴射方式 PFI


VVT/VVL In/○




■ R20A


シリンダー配列 直列4気筒


排気量 1997cc


内径×行程 81.0×96.9mm


圧縮比 10.6


最高出力 110kW/6200rpm


最大トルク 193Nm/4200rpm


給気方式 自然吸気


カム配置 SOHC


吸気弁/排気弁数 2/2


バルブ駆動方式 ロッカーアーム(VTEC)


燃料噴射方式 PFI


VVT/VVL In/○
情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | ホンダRシリーズ:SOHC+片閉じのi-VTECで高効率ミラーサイクルを実現