ジープ・ブランドが好調だ。そのジープの魅力を、雪上で試す試乗会が北海道・南富良野で行なわれた。レネゲードPHEVの次に試したのは、ご存知ラングラーである。この冬一番の大雪に見舞われた“絶好のコンディション”(ラングラーにとって)で、ジープの人気の秘密の一端を垣間見ることができた。




TEXT◎世良耕太(SERA Kota)PHOTO◎FCA JAPAN/Motor-Fan

3月2日の北海道はこの冬一番の大雪だった。会場となったリゾナーレトマムもこの通りの悪天候。

大雪の状況で、試乗車として選んだのはジープ・ラングラーだ。
絶対的なタフさ、走破性が、ジープを選ぶ理由のひとつだ。

北海道にこの冬一番の降雪があった日にジープ・ラングラーで雪道を走った。運転したのはラングラーに4モデルあるうちの「アンリミテッド・サハラ」で、3.6ℓV6自然吸気エンジンと8速ATの組み合わせである。極限状態に陥った人間の妄言と思われるかもしれないが、降りしきる雪のなかで「いいな、これ」と感じたのは、極端に薄いフロントガラスから見える雪景色だった。小ぶりなワイパーのぎこちない動きが興を添える。



少し走るとラングラーとの間合いがわかってくる。そうなると雪上のドライブも自信をもって楽しめる。

薪がはぜる音に耳を傾けながら暖を取るのと同じようにリラックスしていられたのは、ラングラーとの信頼関係がすでに確立していたからだ。レネゲード4xeはシフトレバーの前に「SNOW」のボタンがあるので、雪道を走るときは「このボタンを押せばいい」とすぐにわかるが、ラングラーを乗りこなすにはちょっとばかり知識が必要だ。

シフトレバーの左に、前後輪の駆動状態を切り換えるトランスファーレバーがある。デフォルトは「2H」で、リヤ2輪駆動で走る。Hは高速(High)の意味。

パーキング(P)からリバース(R)、あるいはニュートラル(N)やドライブ(D)に切り換えるシフトレバーの左に、前後輪の駆動状態を切り換えるトランスファーレバーがある。デフォルトは「2H」で、リヤ2輪駆動で走る。Hは高速(High)の意味だ。乾燥した舗装路を走るならこのモードでいい。




「4H AUTO」に切り換えると、前後輪に自動的に駆動力を配分するフルタイム4WDになる。ウエット路面や未舗装路では、安心感につながるだろう。雪道を走るなら、「4H」がいい。センターデフがロックされて前後の軸が直結になり、駆動力の配分は各輪の荷重によって決まる。意図して強めにアクセルペダルを踏むと、グリグリ雪を掻きながら力強く前に進む。4つのタイヤがしっかり路面を掻いているのが感じ取れるので、安心感につながるのだろう。そうしていったんクルマとの信頼関係が築き上げられると不安はなくなり、楽しみしか残らない。薄いフロントガラスから見える雪景色を楽しむ余裕が出てくるというものだ。

「TRAIL RATED(トレイルレーテッド)」のバッジがついているジープの各モデル。

ラングラーは全モデル、Aピラーの下に「TRAIL RATED(トレイルレーテッド)」のバッジがついている。世界一過酷なオフロードといわれるルビコントレイル(カリフォルニア州)を走破できる性能を保証している証だ。渡河性能、トラクション、機動性、アーティキュレーション(前後のアクスルが逆位相に動いた際の特性)、地上高の面で、独自の基準をクリアしている。つまり、「どこへでも行ける。何でもできる」証明がトレイルレーテッドだ。

ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ3.6ℓ 全長×全幅×全高:4870mm×1895mm×1840mm ホイールベース:3010mm 車重:1980kg

サスペンション:F/Rリジッド/コイル 駆動方式:パートタイム4WD/オンデマンド4WD(選択式)

エンジン 形式:3.6ℓV型6気筒DOHC 型式:G 排気量:3604cc ボア×ストローク:96.0×83.0mm 圧縮比:16.2 最高出力:284ps(209kW)/6400pm 最大トルク:347Nm/4100rpm 燃料:レギュラー 燃料タンク:81ℓ

燃費:WLTCモード 9.0km/ℓ  市街地モード6.1km/ℓ  郊外モード9.5km/ℓ  高速道路モード10.9km/ℓ トランスミッション:8速AT

恥ずかしながら知らなかったし、もっといえば、ジープが日本でこんなに売れているのも知らなかった。「売れているんだよ」と聞かされて以来、街ゆくクルマを注意してみるようになったが、都内に限ってもラングラーはなかなかの生息率であることに気がついた。結構走っているんだな、という印象だ。

2020年の輸入車におけるFCAのマーケットシェアは9.3%に達した。コロナ禍でマーケット自体が大きなマイナスだったのにもかかわらず、FCAは好調を維持して2万4185台を売り上げた。

ジープ・ブランドの成長は驚異的だ。販売台数はほぼ一貫して右肩上がりのグラフを描く。

ジープを販売しているのはFCAジャパンで、ジープのほかにアバルト、フィアット、アルファロメオの各ブランドを販売している。販売台数は右肩上がりだ。2020年の販売台数は前年に対して少し落ちた(2万4185台)が、第4四半期に関しては過去最高だったという。1万3588台を販売したジープに関しては、前年を上回る成績を挙げ、過去最高を記録(コロナ禍にもかかわらず)。ラングラーは5757台で、11年連続で前年越えを記録している。Dセグメントの輸入SUVでは、メルセデス・ベンツやBMW、ボルボを抑えてナンバーワンの座を獲得した。

そのなかでもラングラーの人気は格別。2018年にフルモデルチェンジを受けてJL型へスイッチした(セールスデータ的には2019年から反映していると思っていいだろう)後も、販売台数を伸ばし続けている。

人気を底支えしているのが、高い残存価格だ。登録3年後の残存価格ではラングラーが67〜83%と驚異的だ。この数字は先代の数字であることにも驚かされる。需給のバランスとも相まって、ジープ・ブランドが日本で成功している理由のひとつがここにある。

魅力的な限定車を矢継ぎ早に投入(最新事例のひとつは、ラングラー・アンリミテッド・スポーツ・アルティテュード)しているのが成長を続けている要因のひとつだと、FCAジャパンは分析している。ジープに関していえば、リセールバリューが高いのも人気の秘密だ。ラングラー・アンリミテッドの登録3年後残存価値は67%〜83%だという。低い側の数字は先代で、現行に関してはほぼ80%超えなのだそう。だから、残価設定ローンで買ってもらえるし、若い人に人気なのだという。

若い人たちを呼び寄せている理由をFCAジャパンは、SNSを利用したマーケティングにあると分析している。例えばジープの公式ホームページ(www.jeep-japan.com)を開くと、ウェブマガジンのコンテンツが用意されているのがわかる。新たな記事がほぼ毎週アップされるので、訪れる人たちを飽きさせない仕掛け。さらに、インスタグラム、Facebook、ツイッターをフルに活用し、カスタマーとのフレンドリーなコミュニケーションを図っている。SNSではインスタグラムの調子がいいという。「ジープのユーザーは、出かけた先で風景を切り取って送るケースが多い」そうだ。

「ジープのコアバリューは『自由』『本物』『冒険』『情熱』です。1941年以来、本物のSUVを80年作ってきました。日本でどんな人がジープを買っているかというと、実は30代、40代が多く、小さなお子様がいらっしゃるケースが多い。都市に住んでいて、いい物や、いい情報にアクセスし、週末は家族と買い物や遊びに行くのが楽しくて仕方ない。そういう人たちに夢を与えているのがジープです」

FCAジャパンのコミュニケーション担当者はそう説明する。ジープは「本物」であり、同時に「歴史」がある。本物のポテンシャルを存分に引き出す機会はそうそうなくても、道具にはこだわりたい。そうした30〜40代にウケているのがジープというわけだ。ラングラーが本物中の本物であること(の、ほんの一部)は、短時間ではあったが深い雪のなかの走行で実感できた。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ジープ・ラングラー アンリミテッド・サハラ | 悪条件でこそ光るホンモノ感。ジープが売れている理由を大雪の北海道で実感した