12月18日、一般社団法人トヨタ・モビリティ基金(TMF)は、下肢麻痺者の移動の自由に貢献する革新的な補装具の実現に向けたコンテスト「モビリティ・アンリミテッド・チャレンジ」において、Phoenix Instinct社(英国)の自律制御電動車椅子を最優秀作品として選定したことを発表した。TMFは同社に対して作品の製品化に向けた活動資金100万ドルを授与し、支援を継続する。

最優秀作品以外のファイナリスト4チームの作品についても専門家とのネットワーキングやアドバイス等による支援を継続

2017年11月から開始した「モビリティ・アンリミテッド・チャレンジ」には、世界28カ国、80以上のチームから画期的なアイデアが寄せられ、昨年1月に最終候補として選定した5チームが、同プログラムのテクニカルアドバイザーであるピッツバーグ大学人間工学研究所やNESTA(イノベーション推進に取り組む英国NPO)、トヨタ自動車の関連部門等から製品化に向けたアドバイスを受けながら試作品の制作を進めてきた。

最優秀作品に選ばれたPhoenix Instinct社の「Phenixi」
Phoenix Instinct社 Andrew Slorance CEO

そして、専門家からなる審査委員会が、技術の革新性、実用性、品質・安全性、製品化の可能性、社会への影響を基準に5チームの試作品を評価した結果、Phoenix Instinct社の自律制御電動車椅子を最優秀作品に選定した。




この作品は、前輪搭載のパワーアシストとAIを活用した重心制御を組合せて、車体の制御を容易にするとともに乗り心地を改善し、また下り坂を検知してブレーキシステムが作動する機構を搭載することで安全面での性能を向上させている。




12月17日には最優秀作品の発表イベントが開催され、プレセンターとして登壇した国際パラリンピック委員会前会長であるフィリップ・クレイヴァン氏(トヨタ自動車取締役)は、「モビリティは人生における様々な制約から人々を解放し、自由をもたらす。移動の自由を実現することによって、全ての人が社会において活躍することが可能になる」と述べた。

Evolution Devices(米国)が開発した「The Evowaik」は筋電気刺激を活用した下垂足(足首の麻痺)者向け歩行支援装置
筑波大学が開発した「Qolo」は利用者ひとりで移乗・着座の移行を可能にし、立位状態で走行できる電動車椅子
IHMC、MYOLYN(米国)が開発した「Quix」は路面感知、姿勢制御機能を付加した電動式の外骨格
Italdesign(イタリア)が開発した「Wheem-i」は車椅子ごと移乗可能な車椅子電動化ユニット

TMFでは、最優秀作品以外のファイナリスト4チームの作品についても、専門家とのネットワーキングやアドバイス等による支援を継続し、技術革新を通じて、全ての人々が自由に移動できる社会の実現に向けた活動を進めていく方針だ。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 トヨタ・モビリティ基金が下肢麻痺者向けの補装具開発コンテストの最優秀賞を発表。自律制御電動車いすの製品化に向けて100万ドルを支援