ドライビングテクニックに定評のある河村康彦さんが選んだ「2020年の推しカー」は、スバル・レヴォーグ、トヨタ・ヤリス、ポルシェ・718ケイマンGTS4.0と走り自慢の3台。特にケイマンGTS4.0のエンジンは感涙ものの仕上がりと絶賛だ。




TEXT●河村康彦(KAWAMURA Yasuhiko)

「2020–2021日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したスバル・レヴォーグ。1.8L水平対向4気筒ターボやアイサイトXなど新開発のアイテムを満載したスバルの渾身作だ。

未知のウイルスに世界が翻弄されている間に、早くも終わろうとしている2020年。人の動きは停滞しても、”仕込み”が終わったニューモデルは続々登場...というわけで、(まだちょっと早い気もするものの)振り返ってみれば、「世界に誇れる日本車が何台か登場してくれた」というのが、暗い話題の多かった2020年にあって、キラリと光る収穫ということになりそうだ。




そうした中で、「これは将来に語り継がれるに値するヴィンテージもの」と言えそうな1台が、初のフルモデルチェンジを受けたスバルのレヴォーグ。ただし、正確に記せばその中にあっても「これこそ褒め称えたい」と思えるのは『STIスポーツ』というスバル車初となる電子制御式の可変減衰力ダンバーを備えた仕様。




いかなる路面をいかなる速度で走っても、しなやかそのものでサスペンションの動きにフリクションを感じさせないフットワークのテイストは、「ついに日本車の”どんぐりの背比べ”から抜け出した!!」と思える絶品の仕上がりだ。




もっとも、そこからコンベンショナルなダンパーを用いる他グレード仕様へと乗り換えると、再び”背比べ”の中へと埋没してしまうことになるのは残念至極。




というわけで、単一グレードのみへの評価となってしまうものの、これを”日本代表”として携えて行けば、足回りに関しては「ベンツ/ビーエム、何するものぞ!」となることは確実。




でも、こうなるとやっぱり不満の種として残るのは、アクセル操作に対してどうにもタイトな駆動力の伝達感に欠けるCVT...ということにもなってしまうわけですが。

ヤリスクロスやGRヤリスなど、ファミリーが多いトヨタ・ヤリスの中で河村さんが推したのはベーシックな5ドアのヤリス。先代(ヴィッツ)からのレベルアップは凄まじく、最近のトヨタの底力が感じられる1台だ。

”ちょっと不思議なスタイリング”は決して好みでないけれど、「乗ったら凄い!」というのが、5ドアのハッチバックボディを備えたベーシックなヤリスの真髄であるもの。




特に、新しい1.5リッター・エンジンとの組み合わせで30km/Lという驚愕のネンピをシレッとマークするハイブリッド・モデルは動力性能もなかなかで、「ネンピは良いけど走らない」というかつてのハイブリッド車に対するイメージを一蹴。加えて、これまでの日本のコンパクトカーには期待の出来なかったフラットな乗り味も実現させ、このままアウトバーンに持ち込んでも彼の地で生まれたモデルと十分互角に渡り合える走りのポテンシャルを味わわせてくれる。




”軽より狭い後席足元”や”止まるまで面倒を見てくれないレーダー式クルーズコントロール”などウイークポイントもあるものの、総じて「今のトヨタが本気を出せば、このくらいは出来る」ということを証明してくれた。




もっとも、裏を返せば「これまでのトヨタがどの位手を抜いていたか」を証明する1台でもあるわけだが。

自然吸気ながらリッター100psを絞り出す6気筒エンジンが718ケイマンGTS4.0の白眉。7800rpmのレブリミッターまで軽々と吹け切り、ドライバーを官能の世界へと導く。

2020年の”ナンバーワン推しカー”であると同時に、今、もっとも自分で欲しい1台がコレ。


 


往年のレーシングマシンの車名にあやかり、ボクスター/ケイマンに『718』の数字が与えられると同時に心臓がターボ付きの水平対向4気筒へと変更された時、「あぁ、これでもうポルシェのミッドシップモデルを乗り継ぐことは無いだろうナ」と、正直そう諦めが付いたもの。ところが、今になって突如”こんなモデル”を出して来るとは...。




4リッターの排気量が生み出すスタートの瞬間からの力強さや、ターボを加えないことによる自然なアクセル・レスポンス。そして何よりも、”718”を遥かに凌駕する滑らかな回転フィールと高回転域にかけての咆哮は「フラット6エンジンならではの、かけがえのない財産だ」と感涙にむせぶに値する仕上がり。




とはいえ、誕生したばかりのこんな珠玉のような心臓の持ち主も、「純エンジン車はいつまで生き残れるのか?」と、そんな心配をしなくてはならないというのが今という時代。




それでも、何とか工面をして手に入れるべきなのか、それとも「ボディも変わる次期983型(?)を待つべきなのか」と、突如そんな心配をさせてくれることになったポルシェとは、本当に罪作りなブランド。




もっとも、そんなことを夢想してもしなくても、どうにもならないのが”先立つモノ”。結局、「実は何の心配も必要ではなかった」というのが、今年最後の悲しいオチなのか。

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『2020年の推しカー』は毎日更新です!




いよいよ2020年もラストスパート! ということで、今年(2019年12月〜2020年11月)に発表・発売されたクルマ(マイナーチェンジ・一部改良・追加モデルなどすべて含みます)の中から、「他人はどうか分からないが、個人的に大好きだ!」という"推しカー”を3台、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに!
情報提供元: MotorFan
記事名:「 【2020年の推しカー|ポルシェ・718ケイマンGTS4.0】4気筒ターボとは段違い!6気筒NAの気持ち良さは感涙もの(河村康彦)