新型電気自動車「ホンダe(イー)」の開発コンセプトは、「シームレス・ライフ・クリエイター」。単に道路を走るだけではなく、人々の生活と「つながる」ための様々な装備が搭載されているのだ。




TEXT●御堀直嗣(MIHORI Naotsugu)

先進技術では、まずホンダeに乗り込むところから段取りが新しい。自分のスマートフォンに専用のホンダリモート操作というアプリケーションをダウンロードすることにより、登録した暗証番号を入力すると、ドアの取っ手が手前に出てくる。ドアを開け、乗り込んだら、ダッシュボードの指定位置にスマートフォンをかざすことで認証され、起動することが許可される。そして、イグニッションをオンにするのである。

スマホをセンターピラーのNFCマークにかざすとドアロックが解除される。NFCとは「近距離無線通信規格」のこと。

ホンダeに乗り込んだら、今度はスマホをオーディオスイッチ付近のNFCマークにかざすとパワーオン。

キーは、一般的なリモコンキーでも利用できる。リモコンキーを持って近づくと、ドアの取っ手が手前に出てきて、それに触れるとロックが開錠される。この場合は、乗車してからの認証の手間はいらない。スマートフォンの活用は、日常生活の延長で便利だが、スマートフォンを落としたり水没させたりして使えなくなることもあるので、リモコンキーを携帯することはバックアップにもなるだろう。

リモコンキーを携えてクルマに乗り込むと自動的にパワーオン隣、Dレンジボタンを押すだけでスタート可能。
普段格納されている「フラッシュアウターハンドル」は、このように展開する。

シフト操作は、レジェンドやNSXなどで採用されている、押しボタン式で、Dボタンを押せば、走りだすことができる。

センターコンソールには、奥側にシフトボタンとシングルペダルコントロールのスイッチ、手前側にパーキングブレーキボタンとドライブモードのセレクトスイッチが並ぶ。

ハンドル裏にあるパドルシフトは減速セレクター。ドライブモードがNORMAL時は4段階、SPORTモードでは3段階で減速度を選択可能。

センタートレーは仕切板が取り外す可能。すべて取り外せば、バッグなどを置くことができる。
センターコンソール前端部には、格納式のドリンクホルダーを装備。

スマートフォンの活用は、遠隔操作によってホンダeの空調を作動させ、事前に車内の温度環境を整えておくこともできる。家庭の空調も同様だが、もっとも電力を使うのは始動直後であり、電気自動車(EV)の場合、ここで充電した電力を消費してしまうと走行距離の短縮につながってしまう。そこで充電ケーブルを接続したままの出発前の段階で空調を作動させ、走行してからも空調は継続して使うにしても、当初の大電流を充電ケーブルからの電力で利用することにより、リチウムイオンバッテリーに蓄電された電力を最大限走行用に使うことができるのである。

そのほか、充電の予約や、ナビゲーションの目的地設定も、スマートフォンからあらかじめ遠隔操作することができる。

専用アプリにより、スマートフォンで離れた場所からエアコンの起動や温度設定、充電時間の予約などを行える。

窓が開いている場合は、スマホから閉めることができる。
クルマを駐車した位置を表示することも可能。

運転席に座って目につくのは、インストゥルメントパネルに並ぶ画面だ。全部で5つの液晶パネルが並ぶ。5枚の内訳は、左右のドアミラーの代わりとなるサイドカメラミラーが2枚、運転席目の前のメーター用が1枚だ。そして、中央部分に横長の画面が2枚並ぶ。この12.3インチスクリーンに、ナビゲーションの地図のほか、様々な情報や画像を映し出すことができる。なおかつ、利用状況に応じてその画面を左右入れ替えることもできる。

表示できる内容は、ナビゲーションの地図のほか、音声で案内を行うパーソナルアシスタント、オーディオ、各種機能の設定画面、ハンズフリー電話、壁紙となる四季の写真、スマートフォンの音楽や外部のエンターテイメント画像などだ。壁紙については、各自の気に入った写真を映し出すこともでき、レコードジャケットを表示しながら音楽を楽しむこともできる。

バッテリーの充電中も、イグニッションをオンにすることで動画などを観ることができる。たとえば車内Wi-Fiを使い、急速充電中に車内で映画や音楽を楽しめる。カスタマイズが可能なので、所有者に合った楽しみ方で利用できる。

5つのディスプレイを組み合わせた、世界初を謳う「ワイドビジョンインストルメントパネル」を採用する。

中央部には、12.3インチディプレイが二つ並ぶ。左右で別々の情報を表示可能だ。
タッチ操作で、左右の画面を入れ替えることもできる。
Hondaアプリセンターを通じて、大画面に対応したアプリが配信される予定。
水槽のアプリでは、タッチ操作で魚に餌をあげられる。
大画面を生かした壁紙を用意。自分の好みの画像も設定できる。
こちらはプリインストールされていた竹林の画面。
警告灯の解説機能も備わる。
安全装備の作動状況は一目瞭然。

この画面を活用したパーソナルアシスタントが目新しい。音声入力によって車載機能を作動させたり、ナビゲーションの目的地設定を行ったりする機能は、輸入車などで実用化済みだが、ホンダeでは、「OKホンダ」と言ったあとに音声入力した際のクルマの応答の様子を、簡略化された顔の表示で画面表示される。これにより、音声入力した要望がきちんと伝わったかどうか判別しやすくなる。また、新型コロナウィルスの影響でマスクをしたまま喋っても、聞き取り能力があることを確認できた。

音声認識で情報検索が可能なHondaパーソナルアシスト。エアコンの温度調整などはできない。
「充電スタンドを探して」とお願いして候補が表示された後、「開いているところ」と続けて候補を絞り込むことが可能。

メーター画面は、8.8インチスクリーンになる。通常は、必要な情報のみを簡素に表示し、速度などを認識しやすくする。運転支援のホンダセンシングを利用する際には、中央に作動状況が表示される。

メーターは8.8インチの液晶スクリーン。

左右両端の画面は、ドアミラーの代わりとなるサイドカメラミラーシステムが映し出される。画面の位置調整は、通常のドアミラーと同じで、左右の切り替えと、画像の上下左右をスイッチ操作で行う。モニターは6インチで、170万画素の高精細カメラからの後方の様子を映し出す。ドアミラーがなくなることで、前方視界の死角が改善される。また、雨天や、太陽が低くなる早朝や夕暮れ時、あるいは夜間にもより確実に後方確認ができる。後退する際は、左右の画像とも視界を下方に下げ、後輪の周囲の様子をわかりやすくする。

車体の外に設置されたカメラは、車体全幅に収まり、万一の歩行者などとの接触にも影響しない配慮がなされている。

ルームミラーにもカメラミラーシステムを採用しているが、通常の鏡のミラーへ切り替えることができる。

全車に標準装備のサイドカメラミラーシステム。後退時には自動的に視界を下方に切り替えてくれる。
170万画素のカメラが収まるステーは、レクサスESのものよりかなり小ぶり。
センターカメラミラーシステムは、カメラモード(約44度)とミラーモード(25度)を切り替え可能。

実は多くの人が期待するのが、モーター駆動であることを活かしたパーキングパイロット機能ではないだろうか。駐車したい場所を指定するだけで、前進後退からハンドル操作まですべて自動で行い、並列駐車、縦列駐車、斜め駐車を、クルマがやってくれる。日産リーフの場合は駐車枠の白線を目安としたが、ホンダeでは白線のない場所でもソナーで空間を確認し、並列と縦列の駐車ができる。さらに、窮屈に詰まった縦列駐車からの出庫も、クルマが抜け出せるところまでクルマが自動で頭出しをしてくれるところが新しい。

トヨタのヤリスでも白線なしでの駐車ができるが、こちらはHVなので、前進と後退は運転者がシフトレバーで切り替える必要がある。しかし電気のプラスとマイナスの切り替えだけで前進と後退を変えられるEVならではの、運転者の操作なしでの駐車作動が可能になる。当然ながら、現状これらの機能は運転者が責任を負うことが前提となるため、万一の際にはブレーキペダルを踏んで停車できるよう、周囲の確認を怠らないことが求められる。

Hondaパーキングパイロットは、4個のカメラと12個のソナーで駐車枠や駐車空間を認識。駐車場所を選定してボタンを押すだけで使用できる。

最後に、ホンダeは、V2HやV2Lへの対応も行っている。




V2Hは、ヴィークル・トゥ・ホームのことで、EVから逆に住宅への電力供給を行うことだ。これを上手に活用することで、家庭での電気料金を安くしたり、災害時にも停電をせずに済んだりするなどの安心が得られる。




V2Lは、ヴィークル・トゥ・ロードのことで、EVの蓄電機能を利用し、屋外で電気製品を利用する際の電源機能を持つ。家庭電化製品用には、社内に100Vのコンセントを設けている。こちらも、災害時にも利用できる。

ホンダeのその他の装備

インパネ下部にはAC100V電源、DCソケット、USBソケット、HDMI端子などが並ぶ。
後席用のUSBソケットも用意される。
灯火類はすべてLED。ヘッドライトを丸く囲むようにウインカーが配される。
リヤも丸型の中にウインカー、テール+ブレーキランプが収まる。白く水平に光っているのはバックランプ。
リビングをイメージし、ダウンライトのLEDを4つ設けた照明。
点灯スイッチを天井ではなく手の届きやすいピラー部に設けたのもこだわり。
情報提供元: MotorFan
記事名:「 【ホンダe(イー)先進装備解説】5つのスクリーン、スマホ連携、AI音声認識など「人とクルマがつながる」機能が満載!