2輪ブランドとして世界最古のプジョー。その歴史は1898年の第1回パリ・モーターショーへの初出展から始まっている。後の初スクーターは1953年登場のS 55。そこから想起されて2014年にデビューしたネオレトロ・モデルが今回のジャンゴである。オシャレで素敵なプロモーションムービー(巻末)も是非ご覧あれ!




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️徳永 茂(TOKUNAGA Shigeru)


取材協力●aidea 株式会社

◼️プジョー・ジャンゴ 150 スポーツ ABS.......421,300円

ディープオーシャンブルー
サテンチェリーレッド


往年のレーシングカーを彷彿とさせるセンターのダブルストライプが精悍。

 フランスの名門ブランドであるプジョーは現在国内市場に4タイプのスクーターを販売している。その中でも7機種もの豊富なバリエーション展開を誇る主力モデルがジャンゴである。


 デビューは2014年。ひと目でレトロモダンとわかるオシャレなスタイリングは、1953年に登場した同社の初代スクーターであるS 55を彷彿とさせる。ひさしのあるヘッドランプを始めヒップコンシャスなテールまわり。そして蔵型クッションをあしらったセパレートタイプのダブルシートデザインからは懐かしい香りが漂う。


 フロントカウル前面中央に掲げるライオンマークのエンブレム付近はV字のライン状に光るイルミネーションがオシャレ。試乗車のスポーツには車体中央部に配したホワイトのダブルストライプとボディサイドのゼッケンプレートが精悍なイメージを醸す。


 


 現在ジャンゴと同エバージョンには新型グリルデザインが採用された2020年モデルがデビュー。カラーバリエーションも前者が3タイプ、後者は5タイプ、スポーツは2タイプから選択可能だ。搭載エンジンもそれぞれに50、125、150が揃えられている。その他120周年リミテッドエディションやツートーンカラーに赤いシートを組み合わせたトリコロール(いずれも30台限定)、またアリュールはトップケース等標準装備の豪華仕様。ユーザーにとってはどれをチョイスすべきか悩ましいところである。




 ちなみに50、125、150いずれも車体関係はほぼ共通である。流石に50の乾燥重量は110kgと軽いが、125と150は同じ129kg。また125と150の前後ブレーキは前後油圧ディスクブレーキでフロントのみABSを装備。50はリヤにドラムブレーキが採用されている。


 リヤサスペンションは一般的手法のユニットスイング式で左側片支持&モノショックタイプ。


 そしてエンジンは右側に冷却ファンを持つ空冷SOHC2バルブの単気筒を搭載。いずれの排気量でもロングストロークタイプとしている点も特徴だ。


 試乗車の150はボア・ストロークが57.4×58.2mmで、3機種の中ではスクエアに近い設定だ。ホイールベースは1350mm。前後共通タイヤは12インチサイズのチューブレス。全体的にゆったりと立派なサイズ感を備えた本格的スクーターである。


 高速道路を使ってタンデムツーリングもできる使い勝手と、デザインセンスにオシャレな雰囲気を感じ取れる点も印象的である。

不思議と気分が明るくなる、晴れやかな乗り心地

 試乗車を手にとると、如何にも本格派スクーターとして立派なサイズ感と適度な車格を直感する。太めのハンドルグリップを握り、センタースタンドを下ろして押し歩く時も、スクーターを支える手応えにそれなりの重量感があるからだ。     


 フロアに足を揃えてお行儀よく乗ると、ハンドルの幅が狭く、乗り味や取り扱う感覚は意外とスマート。交通量の多い都市部を走る時や、駐車スペースの狭い場所でも扱いやすく好都合である。


 


 フロアまでの地上高が少し高めなので、シートまでの距離は遠くない。筆者の通常姿勢でも腰から膝までの股はほぼ水平になり、膝は直角に曲げて膝下は垂直になる感じ。クッション容量が大きく感じられる後部のワイドシートに腰を落ち着けると、自然と背筋が伸びる姿勢になり見晴らしの良い乗り味がなかなか心地良い。


 だらしなく背筋を丸めていると、停車時にワイドシートが邪魔して足つき性が悪化するので、メリハリを持ってキチンと扱う気になれた。両足の先端部フロアはレッグシールドの内側に少し凹みがあるので、爪先を入れることが可能。足の置き場にも自由度があるので、窮屈には感じられなかった。


 


 ステップスルーのフロアを持つオーソドックス・スタイルのスクーターとしては、やはり本格的な車格が印象的。それでいてスマートな乗り味を披露してくれるところに独自性があり、不思議な魅力が感じられた。


 ニュアンスの表現が難しいが、大胆に言い換えると「外車感覚満点」なのである。


 


 細かい所では丸いスピードメーターにはマイル表示もある。白い文字盤に真っ青な目盛りと赤の指針が動く様は新鮮。装着タイヤはCSTブランド(チェンシン製)。前後共に120幅70扁平のチューブレスを装着。前後12インチサイズの割に乗り心地良く感じられたのは、前後共に動きの良いサスペンションによるところも大きいと思う。直進安定性も良く操縦性も素直に扱えた。


 


 そしてエンジンの出力特性も至って快適である。発進から高速域までとてもスムーズ。穏やかな雰囲気を維持しつつも、まるでトルク不足を感じさせない底力と柔軟性が発揮されるからである。登坂路や二人乗車でも、スロットルレスポンスに不足は感じられない。その点はさすが150。


 普段使いの足としても快適だが、春先の好天に恵まれた休日にちょっと郊外まで足を伸ばしてみたくなる。オシャレでセンスの良い雰囲気と共に、爽快で気分が明るくなる乗り味がとても素敵なのである。

⚫️足つき性チェック(身長168cm)



770mmというシート高が高いわけではない。シートや車体がワイドなので股が開き、ご覧の通り両足の踵は少し浮いた状態になったが、足つき性に不安は感じられなかった。


⚫️ディテール解説

ヘッドランプにひさしをあしらったデザインが懐かしくもあり、オシャレな感じに映える。

黒いボトムケースのテレスコピック式フロントフォークには、2ピストンのピンスライド式油圧キャリパーと3点リジッドマウントのシングルディスクブレーキを採用。フロントにはABSが装備されている。

広々としたフラットなステップフロアには滑り止めのラバーラインがあしらわれている。

ユニットスイング式リヤサスペンションは、左片支持方式。モノショックユニットはプリロードの5段調節ができる。ブレーキはシングルピストンのピンスライド式油圧キャリパーを備える。

ブラックマフラーはごく普通の右出し方式。クロームメッキされたマフラー(ヒート)カバーがマッチされている。

サテンチェリーレッドで統一されたレッグシールド内側とハンドルまわり。ハンドルグリップラバーは太鼓型に太く膨らんでいる。

左側のハンドルスイッチ。各スイッチは縦3段階にレイアウトされている。上からディマー&パッシング、プッシュキャンセル式ウインカー、ホーンボタン。
ハンドルスイッチの右側はふたつ。上がハザードランプ用、下はエンジン・スタータースイッチだ。


メーター周辺デザインもなかなかオシャレ。白地に青文字のアナログ式スピードメーターはキロとマイルのダブル表示。中央はモノクロ液晶のデジタル式で、時計や外気温とオドorトリップが切り替え表示される。

ライダーの膝前中央に位置するコンビニフック。写真は下側をワンプッシュして展開した状態。未使用時は綺麗に回転収納できる。
カチッとクリック感のある操作フィーリングで出し入れできるピリオンステップ。デザインと使い勝手にもこだわりがあり、ゴムラバーが上乗せされた上質な仕上がりだ。


コンビニフックの直ぐ下にあるキー操作で右ヒンジの扉が開く方式。反時計方向(左)へ回すとロックが解除される。ご覧の通り給油口が現れる。
キーを時計方向(右)へ回すと左ヒンジの扉が開く。簡単な収納スペースがあり、上方には12Vアクセサリーソケットも装備されている。


大型クッションが採用された、前後セパレート式のダブルシート。シート後方には美しいカーブを描く堅牢なハンドグリップを装備。後席ライダーも安心して乗れる。

シート下の収納容量はそれほど大きくは無いが、メットイン&プラスアルファ分のスペースがある。
前方が深くなるデザイン。前ヒンジで開フロントシートの底面も深く掘られて収納性が高められている。


ヒップコンシャスなテールのデザイン。ナンバープレートの取り付け位置も低く確かにレトロ感が漂っているが、LEDライトの採用等、今では新鮮に見え個性的である。

◼️主要諸元◼️

全長×全幅×全高:1,925mm×710mm×1,190mm


ホイールベース:1,350mm


シート高:770mm


乾燥重量:129kg




エンジン:空冷4ストローク SOHC 2バルブ単気筒


総排気量:151cc


内径×行程:57.4mm×58.2mm


最高出力:8,5kW(11,6ps)/8000rpm


最大トルク:11.2N・m(1.1kgf・m)/6,000rpm


燃料供給方式:燃料噴射式


始動方式:セルフ式


変速方式:オート


燃料タンク容量:8.5L




タイヤ(前/後):120/70-12″/120/70-12″


サスペンション(前/後):油圧式テレスコピック/油圧式ショックアブソーバー(5段階調整可)


ブレーキ(前/後):ディスク(ABS)/ディスク

⚫️ライダープロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分になった上での記事作成に努めている。

プジョー・ジャンゴ スポーツ
情報提供元: MotorFan
記事名:「 意外とデカい、本格派! プジョー・ジャンゴ150スポーツABSは外車っぽくて、なかなか楽しい。