日本の海洋研究の中心であるJAMSTECが運用する有人潜水調査船「しんかい6500(以下、6K)」。その6Kを操縦する操縦士は「パイロット」と呼ばれる。パイロットになるためには、どんな資格が必要なのだろうか?

まず、6Kを操縦するためには「1級小型船舶操縦士免許」が必要

 有人潜水調査船「しんかい6500(以下、6K)」の操縦士はパイロットと呼ばれる。6Kの定員は3名で、研究者1名と正副パイロット2名が乗り組む。正パイロットは「船長」であり、主に操船を行う。副パイロットは「コパイ(コ・パイロット:副操縦士の意味)」と呼ばれ、海上の支援母船「よこすか」との通信や航法、機関士役も担う。




 安全面を考慮して2名パイロットの態勢だが、現在の6Kは耐圧殻内の操船機器類の換装・アップデートなどを行い、パイロット1名での潜航(ワンマン・オペレーション)も可能となっているようだ。この措置により研究者を2名乗せることができ、調査潜航の機会や幅を拡大させることにつながっている。




 深海のパイロットである6Kの操縦士だが、パイロットになるために必要な免許や資格、条件などは、どのようなものがあるのだろうか?

整備作業のようす。整備は6K運航チームと三菱重工の整備士たちとの共同作業で行う。パイロット候補者はまず整備士として6Kの構造理解や整備実務経験などを数年間積んだのち、「コパイ(コ・パイロット:副操縦士)」となり、やがて「船長(正パイロット)」となる。

 まず、6Kを操縦するためには「1級小型船舶操縦士免許」が必要になる。操縦士として必要な免許証の類はこれだけなのだそうで、有人潜水調査船を操縦するための専用免許や国家資格などが設けられているわけではないという。




 さらに、パイロットの集団であるJAMSTECの6K運航チームの規定によると『運航チームに所属し、司令が指名する運航要員であること』となっている。


 つまり、6Kの操縦士を志望する場合、まずJAMSTECもしくは運航を担当する日本海洋事業株式会社のどちらかに就職し、そして6K運航チームに配属される必要がある。その後はまず整備士として養成され、6Kの構造理解や整備実務経験などを数年間積んだのち、司令が認める実動要員となっている必要がある。これはかなりの狭き門だ。

6K運航チームの記念撮影。写真中央、6Kの右マニピュレータに肘をかけているのが運航チーム総括・櫻井利明司令だ。支援母船「よこすか」の船長と乗員、司厨長(調理長)なども加わっていただいた。2017年4月、相模湾での潜航訓練時に撮影したもの。支援母船「よこすか」の格納庫内だ。

 宇宙空間へ行ったことのある宇宙飛行士は世界で約500名とされる。そのなかで日本人宇宙飛行士は10数名だという。一方、現在の6K運航チームの総員は14名だ。引退した操縦士を含めても日本人の深海パイロットは約20名と考えられる。世界規模で見た場合でも、潜水調査船のパイロットは各国合わせても100名ほどしかいないのではないだろうか。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 F1ドライバーには「スーパーライセンス」。F1より狭き門の有人潜水調査船「しんかい6500パイロット」はどんな免許で乗れるのか?