PHOTO/REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
まずは、50代以上の人なら覚えているであろう、懐かしいテレビCMをご覧頂こう。
1980年代前半に放映されていた、インスタントコーヒーのテレビCMにおいて、レーシングカーデザイナーで、“違いの分かる男”・由良拓也氏が顔を近付け、T字型ヒゲソリのような工具で削っていたのが、デザイン用の粘土「インダストリアルクレイ」だ。 「インダストリアルクレイ」とは、プロダクト製品(自動車・バイク・家電弱電等)の立体造形デザインに用いられる、モデリング用化学系合成粘土のこと。温度による膨張や収縮がほとんどなく、25℃前後の常温では適度な硬度を持ち、その形態が安定するのが特徴。何度でも自由に盛り付け・切削ができるため、デザイン変更が容易なのもポイント。自動車メーカーやバイクメーカー等々の商品デザイナーが、昔から“デザイン用”として使用していることでも有名だ。 常温では比較的硬いため、専用のクレイオーブンなどでクレイ自体を芯まで加温してから使用。一般的に45~60℃前後から柔らかくなり、温まれば盛り付け作業が行える。また、冷めればツール類を使い、手作業による切削作業が可能となる。
今回出展したのは、国内での「インダストリアルクレイ」の先駆者であり、国内シェアはNo.1を誇る『トゥールズインターナショナル』。 1961年(昭和36年)、『トゥールズインターナショナル』の前身である株式会社いづみや(当時)は、日本で最初にインダストリアルクレイの輸入販売を開始。その後は海外から著名モデラーを招いてセミナーを開催するなど、日本のクレイモデリング技術の発展を支援してきた。 1981年(昭和56年)には、日本初の「インダストリアルクレイ」の国内製造を開始。国産自動車メーカーの品質の追求に応え、それぞれのメーカーのモデリング手法に合わせた仕様の「インダストリアルクレイ」を提供。近年は、自動車デザイン先進国のアメリカやヨーロッパはもちろん、中国やインドなどのアジア地域にも展開中だ。 同社からは「NSシリーズ」として、個人でも楽しめる「インダストリアルクレイ」が、『1パック(約620g)=1540円(税込)』より発売中。成分に硫黄を一切使用しておらず、焼却処分も可能。クレイの重量は、従来品に比べて約2/3程度に軽量化されている。
トゥールズインターナショナル https://www.toolsintl.jp/