初代はAクラスのストレッチ版に過ぎなかった。先代Aクラスがキャラ替えしたことを受けて、もともとのAクラスのコンセプトを二代目Bクラスが受け継ぐ格好となり、今回の三代目もその延長上にあることには違いはない。だが、どことなく見た目のバランスが悪く、MPV然としていた二代目から一転、スペシャルティカーとしての資質すら漂わせるほどスタイリッシュになった新型Bクラス。後編の今回は、公道試乗レポートをお送りする。




REPORT●岡本幸一郎(OKAMOTO Koichiro)


PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

より身近な存在になったBクラス

 インプレッションをお届けする前に、Bクラスがいかに身近な存在になったのか、価格の面から簡単に説明しておきたい。




 まずAクラスとの価格差だが、「B180」には「A180スタイル」相当の装備が標準で付くことを考えると、「180」同士であれば15万円、「200d」同士では23万円となっている。この価格差であれば金額をあまり気にすることなく、本当に内容の好みで選べるのではないかと思う。




 なお、ご存知の読者もいるだろうが、現在メルセデス・ベンツ日本では、Aクラス、Bクラス、Cクラスを対象に、WEBで事前にオーダーするとオプション装備(アクセサリー装備は別)の価格が半額になるキャンペーンを実施している。




 つまりオプションを付ければ付けるほど値引きが大きくなる計算になり、メルセデスにとっても、カスタマーの満足度が上がるのであれば、そのほうがよいという考え方である。




 よりスポーティになったBクラスには、AMGラインがよく似合う。定価は25万5000円のAMGラインが半額になれば、とてもリーズナブルに装着できて、リセールでも有利になるだろうから、選ばない手はない。




 また、メルセデスでは他社に先駆けてWEBでクルマを購入できるサービスを始めたことも併せてお伝えしておこう。

 クルマとしてのつくりはやはりAクラスとの共通性が高く、大きなディスプレイを並べた先進的なダッシュはインパクト満点で、このクルマに乗る喜びを高めてくれるに違いない。もちろん話題の「MBUX」も搭載されている。




 インテリアでは、助手席側のダッシュがくぼんでいる点がAクラスとの違いで、シートやトリムの設定も異なる。スポーティなカーボン調のパッケージオプションも選べる。




 パッケージングもだいぶ違って、スペースユーティリティが大幅に高められており、広さ感は大違い。それは従来型に対してだいぶ広くなったAクラスに対してもアドバンテージとなり、Bクラスを選ぶ理由になり得るに違いない。



 シートの着座姿勢はアップライトで、リヤシートは平均的な成人日本人男性の体格である筆者が座っても頭上は10cmほどクリアランスが確保され、横方向もサイドウインドウが立っているので余裕がある。




 座面からルーフまでの距離が、Aクラスは前席が1025mm、後席が960mmのところ、Bクラスはそれぞれ1052mm、993mm(欧州参考値)と大差がないのだが、感覚としてはもっと差があるような気がした。シートの座面長やヒール段差も十分に確保されており、フロントシートのフロアがかさ上げされているので足入れ性もよく、足元は広々としている。開放的な大開口のパノラミックルーフと相まって、後席の同乗者に喜ばれることは違いない。

本命は18インチ仕様か? ADASの洗練度の高さはさすが!

 ラゲッジスペースは、オーバーハング値のほぼ同じAクラスと大差ないように見えるが、天地方向の高さリヤシートの背もたれが立っていることが効いて、VDA法の容量値としては、Aクラスが370~1210Lであるのに対し、Bクラスは455~1540Lと圧倒的に大きい。ご参考まで、先日追加されたAクラスのセダンは420Lとなっている。

ラゲッジスペースはスクエアで使いやすい。
リヤシートは4:2:4の分割可倒式だ。


運転席側ドアの前方には、電動リヤハッチゲートの開閉ボタンがある。
リヤゲートは電動開閉式。ステーションワゴン的キャラクターの表れとも言える。


 ラインナップは、1.4L直列4気筒ガソリンターボにゲトラグ製の7速DCTを組み合わせた「B180」と、2.0L直列4気筒クリーンディーゼルに内製の8速DCTを組み合わせた「B200d」の2種類で、今回ドライブしたのは、ひとあし先にデリバリーの始まった「B180」の標準モデルとAMGライン装着車だ。車両重量は、本稿執筆時点では認証取得中のためカタログに公表値がないが、車検証の記載によるとAクラスよりも100kgあまり重いようだ。




 エンジンフィールにあまりドライビングプレジャーらしきものには期待できないものの、実用エンジンとしてはよくできていて、レスポンスに優れ、低回転から力強く加速してくれる。スムーズな変速制御を実現したDCTはダイレクト感もあり、扱いやすい。正確に計測していないが、実燃費もよさそうだ。ただし、心なしかAクラスよりも音と振動がキャビンに伝わってきているような気がした。

 17インチ仕様の標準モデルと18インチ仕様のAMGライン装着車では、OEM装着タイヤの銘柄も異なるほか、AMGライン装着車は足まわりがロアードコンフォートサスペンションとなり、ストローク量が10mmほど短くなることもあって、乗り比べるとそれなりに走りのキャラクターが異なる。そこは好みの分かれるところだが、共通して感じられたのは、近年メルセデスが訴求している俊敏性と、メルセデスらしい正確性に富むハンドリングだ。




 また、Aクラスに対して重くなることが乗り味に落ち着きをもたらすのではという気もしていたのだが、どちらかというと重量と重心が上がった影響と、それにより挙動が出やすくなるのを抑え込もうしたことがうかがえた。




 17インチ仕様はしなやかな乗り心地となり、ハンドリングもマイルドな仕上がり。ロードノイズもずっと静かで気になることはない。快適性を重視するならこちらを選ぶべきだが、控えめなルックスは、あえてBクラスを選ぶ層には向かない気もしなくない。




 その点、18インチ仕様のほうが走りにダイレクト感があり、操舵時の応答遅れも小さく、ロールも抑えられている。ただし、路面への感度が高く、乗り心地はやや硬めでコツコツとした感触がある。文頭で述べた事情もあり販売的にはAMGラインが圧倒的に多くなると思われるが、足まわりの違いで、そうした乗り味の違いがあることをご理解いただきたい。

 そして、メルセデスといえばレーダーセーフティパッケージだが、いつもながらよくできていることにあらためて感心させられた。




 Bクラスでは、停止している先行車の検知が可能となった点が新しい。車線変更を安全確認をした上で自動でやってくれるのはドライバーの負荷が大幅に軽減されるので、ドライブが長距離になるほどありがみが増す。また、前走車への追従でもたつきを感じたり、巡行から減速に移るタイミングが早すぎるように感じられるクルマが依然として少なくないところだが、「B180」はなかなかよくできている。機能が充実しているだけでなく、制御も洗練されていることを念を押しておきたい。




 ただし販売戦略もあってか、A、B、Cクラスあたりは有料オプションとなっているのは少々惜しいところだが、もちろんこれも前述のプレオーダーにより定価の24万5000円が半額になる。ぜひ迷わず装着するよう強くお勧めしたい。




 このように安全で快適で、かつ広さや便利さも十分で、先進性を感じさせるインパネやMBUXなど付加価値も高く、なによりもスタイリッシュになった新しいBクラスは、このセグメントに高いユーティリティを求める人にとって、なかなか魅力的な存在となることは間違いない。

メルセデス・ベンツ B180(AMGライン装着車)


全長×全幅×全高:4426×1796×1541mm


ホイールベース:2729mm


車両重量:───kg


エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ


排気量:1332cc


ボア×ストローク:72.2×81.4mm


圧縮比:10.6


最高出力:100kw〈136ps〉/5500rpm


最大トルク:200Nm/1460-4000rpm


燃料タンク容量:43L


トランスミッション:7速AT


駆動方式:FF


乗車定員:5名


WLTCモード燃費:───km/L


タイヤサイズ:225/45R18


車両価格:384万円+25万5000円(AMGパッケージ)
情報提供元: MotorFan
記事名:「 国内初試乗:新型メルセデス・ベンツBクラス「選ぶ理由が明確に存在する」〈2/2:公道試乗編〉