1月にデトロイトモーターショーでワールドプレミアムしたGR初の量産車、スープラ。


BMWとの包括提携により生まれた5代目スープラは、一体どんな走りを披露するのか?


6気筒、4気筒モデルともに日本のワインディングでたっぷりと味わった。




REPORT◉山田弘樹(YAMADA Kouki)


PHOTO◉神村 聖(KAMIMURA Satoshi)




※本記事は『GENROQ』2019年8月号の記事を再編集・再構成したものです。

 もしあなたが本気でスポーツドライビングと向き合うドライバーであるならば、スープラのステアリングは握っておくべきだ。




 もちろんそのルックスや話題性に惹かれて手に入れるのも悪くない。しかし今度のスープラは極めて異例な、トヨタが善とするスイートスポットの広い利便性をことごとく廃してまで、妥協のないFRスポーツカーに仕立て上げられている。




 そんな新生スープラの核となるのはプラットフォームだ。ワイドなトレッドに対してそのホイールベースはなんとトヨタ86よりも短い。ホイールベースとトレッドの比1.55という数値を実現するために新規開発されたプラットフォームが、その運動性能を高めているのである。




 スープラはご存じの通りBMWとの提携で造られたスポーツカーであり、巷では「中身はBMW」などと言われている。だがそれは、物質的な意味では合っていても、本質的にはちょっと違う。当初はお互いの素材を持ち寄り、どちらかよい方でスープラとZ4を造る予定だった。しかしトヨタが目標とする走りを実現するためには「新規プラットフォームが必要」と判断され、これを改めて造り上げたのである。だからエンジンはBMWの素材を使っていても、プラットフォームは既存のBMWにもない、まったく新しいものになったというのが真相である。



高速走行時の視認性や車両の姿勢変化のつかみやすさを考慮したという水平基調のインパネデザインを採用する。VSCはON/OFFのほか、VSCとTRCの介入を弱めるトラクションモードも選択できる。シートのホールド性は秀逸だ。

 こうして出来上がったスープラ、ベストチョイスはどれなのか? そのラインナップは頂点に3.0ℓ直列6気筒直噴ターボ(340㎰)を搭載する「RZ」が君臨し、その下に「SZ-R」(258㎰)/「SZ」(197㎰)という2.0ℓ直列4気筒ターボを2モデル従える。




 走りと質感、そして速さのすべてを手に入れたいなら間違いなくRZだ。そのハンドリングは昨年末に袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗したプロトタイプからさらに磨きが掛かり、特にリヤセクションの剛性が高められたと感じた。今回はオープンロードでの試乗だったこともあり限界領域の操縦性は確認できなかったが、ワインディングを走らせるだけでも挙動が落ち着いたとわかる。




 具体的にはターンインからの切れ込みが穏やかになり、アクティブディファレンシャルの作動が意識できないほどスムーズになった。




 面白いのは直列6気筒の音色が、本家Z4よりも軽やかに感じられたことだ。聞けば排気系をオリジナルチューニングしているとのことで、乾いたサウンドと共に高回転まで吹き抜けて行く。スーパースポーツのように圧倒的なパワーを爆発させるユニットではないが、コーナリングスピードの高さと掛け合わせることによって、その速さが際立つ。シャシーファスターというにはパワーが少し勝っており、全域で速いハイバランスなコーナリングマシンだと言える。なおかつ日常域では3.0ℓの排気量が、飛ばさずとも質感の高さを感じさせてくれる。

アクセル、ブレーキといったドライバーの操作や車速、車両の位置などの情報を記録するデータロガーをオプションで用意する。

RZはグリップ力に優れる19インチのミシュラン・パイロットスーパースポーツを純正装着する。

 ちなみにスープラは全グレードにおいてトルコン式8速ATを採用する。BMWのリソースを使いながら今後もDCTの採用には興味がないようだが(重量やコスト増、そして耐久性の低さが理由だろう)、どうやらM4由来である「S55」ユニットの搭載は視野に入れているようだった。MTはラインナップされない。




 こうなるとRZの独擅場、それ以外はオマケのように思いそうなものだが、そうではないのがこれまでのトヨタとまた大きく違うところだ。むしろこのシャシー性能を味わい尽くすなら、直列4気筒モデルこそが本命ではないか? とさえ思える。




 RZと同じく可変ダンパーとアクティブディファレンシャルを備えた走りは、これこそがシャシーファスター。前軸荷重が少ない分だけフロントサスのダンピングには反発感があるものの、しっとりとした乗り味のRZに比べ若々しさが心地良い。


 


 70㎏軽い車重はてきめんに効いており、ステア操作に対する動きはリニアだ。そこには86を飛び越えてロードスターを操るような感覚があり、なおかつ車体は安定している。




 エンジンは高回転でのパンチこそないものの、400Nmのトルクと8速ATのギヤリングが加速感を途切れさせない。コーナーではハンドリングに集中し、エイペックスからは踏み倒す。早め早めのシフトパドルでブーストの盛り上がりをつなぎ、次のコーナーへと備える。これぞスポーツドライビングである。

エアロダイナミクスの中でもリフトの抑制に特に力を入れている。リヤの盛り上がった独特の形状も空力を考えてのものだ。

 対してベースモデルのSZには、完全なるトヨタの割り切りを感じた。だがそれは、廉価版という意味ではない。むしろパワーはアンダー200㎰でも走りは軽快だから、誰もがスープラの素性を楽しめる。




 残念なのは17インチタイヤが唯一のランフラットで、不整地だとサスペンションの振幅周波数と動きが合わない場面があること。突き上げや操安性ではむしろ、SZ-Rの方が落ち着いている。オープンデフと電子制御デフの差も大きい。




 しかしSZをチューニングの素材として考えると、すべての内容に合点が行く。ECUと排気系チューニングを施せばRZに肉薄することも可能だろう。また足まわりも、車高調を入れるなら可変ダンパーや大径ホイールはかえってジャマだ。よってスープラにはベストグレードというものがなく、オーナーの嗜好性によってチョイスが大きく変わるスポーツカーだと言える。




 あとはこのスープラを、然るべき場所でしっかり走らせるだけだ。このポテンシャルならきっと、ベンチマークである718ケイマンSと好勝負を繰り広げてくれるはずである。

トップグレード「RZ」にはBMW製3.0ℓ直6ターボを搭載する。一方「SZ-R」と「SZ」には出力の異なる2.0ℓ直4ターボを積む。

SPECIFICATIONS トヨタ・スープラRZ〈SZ-R〉


■ボディサイズ:全長4380×全幅1865×全高1290〈1295〉㎜ ホイールベース:2470㎜


■車両重量:1520〈1450〉㎏


■エンジン:直列6気筒DOHCターボ〈直列4気筒DOHCターボ〉 ボア×ストローク:82×94.6㎜ 総排気量:2997〈1998〉㏄ 最高出力:250kW(340㎰)/5000rpm〈190kW(258㎰)/5000rpm〉 最大トルク:500Nm(51㎏m)/1600~4500rpm〈400Nm(40.8㎏m)/1550~4400rpm〉


■トランスミッション:8速AT


■駆動方式:RWD 


■サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡマルチリンク


■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク


■タイヤサイズ:Ⓕ255/35ZR19Ⓡ275/35ZR19〈Ⓕ255/40ZR18Ⓡ275/40ZR18〉


■車両本体価格:690〈590〉万円
情報提供元: MotorFan
記事名:「 トヨタ・スープラ試乗記