かつては280ps自主規制とうものが存在していた日本。どんなハイパフォーマンスカーでも、国内仕様は280psで統一されていた。では、現在の国産エンジンで最もハイパワーなエンジンはなんだろう? それはもちろん、日産GT-Rが搭載する3.8ℓV6ツインターボなのだが、エンジンの出力だけで考えては面白くない。ここでは馬力を巡るさまざまな指標を取り出して考えてみたい。

 280馬力自主規制の撤廃を日本自動車工業会が国土交通省に申し入れたのは2004年6月だった。それ以後、300psを超える国産エンジンはいくつも登場している。


 一方、軽自動車の660ccエンジンは、依然として64psを上限とする自動車メーカー間の協定がいまだに存在する。




 では、最初に国産エンジン高出力ランキングから紹介しよう。




 エンジンの出力を上げるには、①排気量を上げる ②過給する というふたつの手法がある。したがって、ターボ過給された大排気量のエンジンが上位にくるのは当然だ。

1位 日産GT-R ニスモ 3.8ℓV6ターボ:600ps

 1位は予想通り、日産GT-Rが搭載するVR38DETT3.8ℓV6ツインターボエンジンだ。それもGT-Rニスモが搭載するハイパワー版である。




エンジン形式:3.8ℓV6DOHCターボ


エンジン型式:VR38DETT


排気量:3799cc


ボア×ストローク:95.5mm×88.4mm


圧縮比:9.0


最高出力:600ps(441kW)/6800rpm


最大トルク:652Nm/3600-5600rpm




である。

2位 日産GT-R 3.8ℓV6ターボ:570ps

 2位は、日産GT-Rのレギュラーモデル。それでも570psだから、やはりモンスターエンジンと言っていいだろう。

3位 ホンダNSX:3.5ℓV6ターボ507ps

 3位のホンダNSXは、3.5ℓV6ターボにモーターを組み合わせるハイブリッドスーパースポーツだから、507psがNSXの真の意味での最高出力ではない。JNC型エンジンは、ターボ過給をしながらも最高出力を6500-7500rpmという高回転で発生させるのがホンダらしい。




エンジン形式:3.5ℓV6DOHCターボ


エンジン型式:JNC


排気量:3492cc


ボア×ストローク:91.0mm×89.5mm


圧縮比:10.0


最高出力:507ps(373kW)/6500-7500rpm


最大トルク:550Nm/2000-6000rpm






 ここまでが「500ps級」である。

4位 レクサスLC500 5.0ℓV8:477ps

 レクサスLC500が搭載する2UR-GSE型5.0ℓV8エンジンは、現在では少数派となっている大排気量自然吸気エンジン。ショートストロークで高回転まで回してパワーを出すエンジンだ。




エンジン形式:5.0ℓV8DOHC


エンジン型式:2UR-GSE


排気量:4968cc


ボア×ストローク:94.0mm×89.5mm


圧縮比:12.3


最高出力:477ps(351kW)/7100rpm


最大トルク:540Nm/4800rpm


給気方式:NA

5位 レクサスLS500 3.5ℓV6ターボ:422ps

 5位は同じくレクサスのLS500が搭載する新しい3.5ℓV6ターボエンジンのV35A-FTS型だ。2基のターボで過給して422psを絞り出す。排気量はLC500の2UR-GSEより1.5ℓも小さいが、最大トルクは60Nm増しの600Nmである。






エンジン形式:3.5ℓV6DOHCターボ


エンジン型式:V35A-FTS


排気量:3444cc


ボア×ストローク:85.5mm×100.0mm


圧縮比:10.4


最高出力:422ps(310kW)/6000rpm


最大トルク:600Nm/1600-4800rpm


給気方式:ターボ






6位からは「300ps級」である。

6位 トヨタ・スープラRZ 3.0ℓ直6ターボ:340ps

 まだ国内発表されていないが、トヨタ・スープラRZが搭載する3.0ℓ直6ターボエンジンが第6位。しかし、これはBMW製エンジンだから、「国産エンジン」とは言えないかもしれない。オーストリアのマグナシュタイヤーで生産されるから「国産車」でもないし……。




エンジン形式:3.0ℓ直6DOHCターボ


エンジン型式:B58B30B


排気量:2998cc


ボア×ストローク:82.0mm×94.6mm


圧縮比:11.0


最高出力:340ps(250kW)/5000-6000rpm


最大トルク:500Nm/1600-4500rpm


給気方式:ターボ

第7位 日産フェアレディZ 3.7ℓV6:336ps

 日産フェアレディZが搭載するV6エンジンは、長い系譜と豊富なバリエーションを誇るVQエンジンの高回転バージョン。3.7ℓはいまや大排気量と言っていいし、自然吸気で高回転まで気持ちよく回せる貴重なユニットである。






エンジン形式:3.7ℓV6DOHC


エンジン型式:VQ37VHR


排気量:3696cc


ボア×ストローク:95.5mm×86.0mm


圧縮比:11.0


最高出力:336ps(247kW)/7000rpm


最大トルク:365Nm/5200rpm


給気方式:NA

第8位 ホンダ・シビックタイプR 2.0ℓ直4ターボ:320ps

 2.0ℓの排気量から320psを発揮するホンダ・シビックタイプRのK20C。タイプRを名乗るに相応しいハイスペックな直4ターボエンジンだ。




エンジン形式:2.0ℓ直4DOHCターボ


エンジン型式:K20C


排気量:1995cc


ボア×ストローク:86.0mm×85.9mm


圧縮比:9.8


最高出力:320ps(235kW)/6500rpm


最大トルク:400Nm/2500-4500rpm


給気方式:ターボ

第9位 スバルWRX STI 2.0ℓ水平対向4気筒DOHCターボ:308ps

 超長寿ユニットであるEJ型水平対向4気筒のもっとも高出力版を積むのがWRX STI。圧縮比8.0もボア×ストローク:92.0mm×75.0mmというショートストロークも、今後はなかなか登場しないであろう極めて20世紀的な、しかし名機と言っても反論は出ないユニットだ。






エンジン形式:2.0ℓ水平対向4気筒DOHCターボ


エンジン型式:EJ20


排気量:1994cc


ボア×ストローク:92.0mm×75.0mm


圧縮比:8.0


最高出力:308ps(277kW)/6400rpm


最大トルク:422Nm/4400rpm


給気方式:ターボ




 と言ったあたりが「エンジンの最高出力から見たランキング」である。


 でも、これだけでは面白くない。次ページでは、コストパフォーマンスから見た最強エンジンランキングを紹介しよう。

 コストパフォーマンスへ行く前に、まずは1psを何ccの排気量から生み出しているか計算してみた。


 排気量(cc)を最高出力で割った指数である。


 


 同様に、1ℓの排気量から何psを生み出しているか?という、よく「リッターあたり○ps」と表記される指標とともに見ていこう。

1位 6.23cc/ps 160.4ps/ℓ:K20C(シビック・タイプR)

2位 6.33cc/ps 157.9ps/ℓ:VR38DETT(日産GT-Rニスモ)

3位 6.47cc/ps 154.5ps/ℓ;EJ20(スバルWRX STI)

4位 6.66cc/ps 150.0ps/ℓ:VR38DETT(日産GT-R)

ここまでがリッター当たり150psオーバーのエンジンである。




5位 6.89cc/ps 145.2ps/ℓ:JNC(ホンダNSX)


6位 8.16cc/ps 122.5ps/ℓ:V35A-FTS(レクサスLS500)


7位 8.82cc/ps 113.4ps/ℓ:B48B30B(トヨタ・スープラRZ)


8位 10.4cc/ps 92ps/ℓ:2UR-GSE(レクサスLC500)


9位 11.0cc/ps 90.9ps/ℓ:VQ37VHR(日産フェアレディZ)




 となる。


 ちなみに、軽自動車の660cc直3ターボエンジンの最高出力は64psに制限されているから、これをこの指標にすると




10.28cc/ps 97.2ps/ℓ




 となる。つまり、ホンダS660もスズキ・アルトワークスもターボエンジン搭載モデルは、このランキングでは8位にランクインすることになる。




 さて、いよいよコストパフォーマンスから見た最強エンジンだ

 コストパフォーマンスの指標は簡単だ。




 1psをいくらで買えるか




 である。この数字が低ければ低いほど「コストパフォーマンスが優れている」ことになる。




 高出力エンジン搭載モデルといくつかのスポーツカー、スポーティカーを加えてランキングを作成してみた。

NSXが搭載するJNC型V6ターボエンジン

第13位 4万6746円/ps ホンダNSX




 NSXの価格は2370万円。これを507psで割ったのがこの数値だ。しかし、NSXにはモーターという強い味方がいるので、厳密にはこのランキング、というわけではない……。




第12位 3万1167円/ps 日産GT-Rニスモ




 GT-Rニスモの価格は1870万円! いくら600psでも、馬力コストパフォーマンスは低いと言わざると得ない。




第11位 3万949円/ps ホンダS660




 S660が搭載するS07A型0.66ℓ直3ターボエンジンの最高出力は64ps。価格がほぼ200万円(198万720円)だから、1ps当たりの価格は高めになってしまう。



レクサスLC500が積む2UR-GSE型エンジン

第10位 3万84円/ps レクサスLC500


第9位 2万3256円/ps レクサスLS500


第8位 2万294円/ps トヨタ・スープラRZ




 スープラRZは、正式な価格は発表されていないが、690万円ですでに予約が開始されているらしいので、その価格から計算した。




第7位 2万216円/ps スズキ・アルトターボRS

ロードスターが積む1.5ℓ直4エンジン SKYACTIV-G1.5

第6位 1万9350円/ps マツダ・ロードスターS




 ロードスターは、1.5ℓ直4DOHCエンジンのSKYACTIV-G1.5を搭載する。最高出力は132psである。

第5位 1万7949円/ps 日産GT-R(レギュラーモデル)


第4位 1万4064円/ps ホンダ・シビックタイプR


第3位 1万2939円/ps スバルBRZ


第2位 1万2553円/ps スバルWRX STI






 栄えある1位は

第1位 日産フェアレディZ 1万1629円/ps

である




第1位 日産フェアレディZ 1万1629円/ps




 おそらく、3.7ℓV6自然吸気エンジンを搭載したスポーツカーが390万円そこそこで買えるというのは、現在ではある意味奇跡なのかもしれない。しかも、336psという高出力を誇るVQエンジンの完成形エンジンが積まれているのだ。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 1馬力いくらか?で考えてみる国産最強&最もコストパフォーマンスが高いエンジンは? GT-R? NSX? LC? スープラ? それともWRXかシビック・タイプRか