「みんなで、もっと遠くまで、遊びに行きたい」というコンセプトを具現化するために、乗員5人がしっかり乗れて、しかも気持ち良く走るために、スズキが持つ技術のすべてが注ぎ込まれたクロスビー。軽量・高剛性なボディに専用チューニングされたシャシー、1.0ℓ直噴ターボ+マイルドハイブリッドなど、コンセプト通りの走りを叶えたメカニズムの数々を詳細に解説する。

似て非なるハスラーとクロスビー

クロスビー
ハスラー


大人気の軽SUVハスラーのデザインテイストを取り入れているので、ぱっと見では瓜 ふたつ。しかし排気量を拡大しただけの「大きなハスラー」ではない。各部を専用チューニングされたシャシーとターボエンジン+6速AT、4WD車はグリップントロールやヒルディセントコントなど、本格的な走りも期待できる。

共通プラットフォームの三兄弟

イグニス
ソリオ


プラットフォームを共有する「イグニス」や、両側スライドドアのハイトワゴン「ソリオ」と合わせ、コンパクトクラスでニーズに対応する3モデルをラインナップ。それぞれに個性が光る魅力的なクルマに仕上がっている。

プロローグ&パッケージング

SUVらしいデザインで取り回しの良いコンパクトボディでありながら、大人5人がしっかり乗れる居住性と積載性を実現。さらにゆとりのある車高で、荒れた路面でも安心して走破できるロードクリアランスも確保している。ワゴンの実用性とSUVの走破性を兼ね備えたクロスオーバー SUVらしいパッケージングだ。

※( )内の数値はイグニス リヤシートスライド仕様車との差 。

良好な視界で安全性を確保する



Aピラー間の見開き角が広く、ドアミラーとAピラーの間に死角がないので視界とても良好。さらに、目視できない助手席側前輪付近を確認できるサイドアンダーミラーも備え、安全性が高められている。

3ウェイ調整で最適なポジションを獲得

ステアリング調整はチルトのみだが、前後方向にも移動するシートリフターにより、小柄なドライバーでも最適なポジションに調整できる。アップライト気味な着座姿勢もあり、女性ドライバーでも安心して運転できるだろう。

HEARTECT(ハーテクト)の採用でボディ剛性と軽量化を両立

走りの根幹を支えるプラットフォームには、骨格や主要部品を全面的に刷新し、高剛性と軽量化を両立するハーテクトを採用。路面を選ばないSUVとしての走行性能を獲得している。

軽量衝撃吸収ボディTECT(テクト)で事故の被害を軽減

ボディに高強度かつ軽量な素材を採用することで、軽く強いボディでありながら衝突時には衝撃エネルギーを柔らかく吸収、分散させる安全ボディとなっている。外板については7つの衝撃吸収構造で、高水準の歩行者性能を持つ。

高張力鋼板の採用で軽量化を実現

軽量で強度の高い高張力鋼板及び超高張力鋼板を適所に採用。また、ボディ全体における使用率を47%と半分近くまでに高めたことで、性を確保しながら剛軽量化を実現している。

車体形状の最適化と構造用接着剤で剛性を向上

車体構造の工夫により、高い剛性を確保した。特に大きな開口部を持つバックドア周辺からBピラーあたりのリヤセクションについては、隔壁の追加やスポット溶接のきない部分の構造用接着剤の塗布によって剛性を高めている。

構造と結合法の合理化で剛性を確保しつつ軽量化



強度的に不利となる屈曲した骨格を改め、滑らかにつなぐことでシンプルで合理的な形状となっている。また、サスペンション部品を骨格部品の一 部として使用したり、固定方を工夫して補強部品を削減。これらにより、軽量化しつつボディ剛性を確保している。

高い走行安定性と快適な乗り心地を両立したサスペンション

フロントサスペンション:マクファーソンストラット式
リヤサスペンション:トーションビーム式/FF車(4WD車はI.T.L.式)


新プラットフォームHEARTECTに合わせたサスペンションを採用し、高剛性と軽量化を両立。 大径タイヤを採用し十分な最低地上高を確保しながら、専用のチューニングを施すことで乗り心地を損なうことなく、優れた操縦安定性を実現した。

クロスビー専用チューニングのステアリング

操作量に対してタイヤの切れ角が変化する、可変ギヤレシオのステアリングを採用。切り始めの応答性を高め、レスポンスの良いハンドリングを実現。また、電動パワーステアリングは街中で軽快に、高速域ではどっしりとした特性に専用チューニングされている。

車体吸遮音材の最適化で騒音を低減



小型車に求められる上質で快適な空間を実現するために、上記のような遮音材による騒音低減の他にも、CAE解析を駆使した振動抑制を実施。ルーフやフロア、ステアリングサポートなどの振動抑制による、こもり音の低減を実現している。

優れた燃費性能と高出力を両立



1.0ℓターボで1.5ℓ自然吸気エンジン相当の高出力、高トルクを発揮しながらも、排気量ダウンサイジングと筒内直噴で燃料消費も抑制。また、ターボ搭載でも1.2ℓエンジンと同等のサイズと重量を実現している。

K10C型 1.0ℓ直径3気筒ターボエンジン

エンジン型式:K10C型 直噴ターボ


排気量(㏄):996


種類・気筒数:直列3気筒


弁機構:DOHC 12バルブ VVT


ボア×ストローク(㎜):73.0×79.4


圧縮比:10.0


最高出力(kW[㎰]/rpm):73[99]/5500


最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):150[15.3]/1700-4000


使用燃料:レギュラー


燃料タンク容量(ℓ):32(FF)/30(4WD)
モーター機能付き発電機(ISG)を搭載するためにベルトレイアウトを変更。また、ISGの性能を最大限に引き出すために、ベルトの張りを自動で調整するオートテンショナーを採用している。

■モーター諸元


モーター型式:WA05A


種類:直流同期電動機


最高出力(kW[㎰]/rpm):2.3[3.1]/1000


最大トルク(Nm[kgm]/rpm):50[5.1]/100


動力用主電池 種類:リチウムイオン電池

モーターアシストと静かなエンジン再始動を実現する

イグニスやソリオと同等の、小型車向けに開発されたISGと専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステム。減速時のエネルギー回生やアイドリングストップ後のエンジン再始動をISGが行ない、無駄な燃料消費を抑制。さらに、モーターアシストによってエンジンの負担を軽減し、燃費性能を向上している。

4WD車にはふたつの走行モードと路面を選ばない安心の機能を標準装備

グリップコントロール:ぬかるみや滑りやすい路面で発進をサポート



ぬかるみなどの滑りやすい路面で片輪が空転して発進できないような場合にグリップコントロールをオンに。空転が発生した車輪のブレーキ制御を早めかつ強くし、グリップ側の車輪に駆動力を集中して発進をサポートする。

ヒルディセントコントロール:急な下り坂で車速を制御する



急な下り坂でエンジンブレーキだけでは減速できない際や、ブレーキペダルの操作で車両をコントロールするのが難しい状況に、ブレーキペダルを踏まなくても自動的に車速を約7㎞/hにコントロール。ドライバーはステアリング操作に集中することができる。

コーナリング

SPORTモード:パワフルでスポーティな走りを実現する

力強い走りを可能にする動力性能重視のモード。ドライバーのアクセルワークにレスポンス良く反応し、同じアクセルペダルの踏み込み量でも、より力強いトルクを発揮。エンジン回転数を高めにキープしてスポーティな走りを実現する。

SNOWモード:雪道や氷結路でスムーズな発進をサポートする

雪道やアイスバーンのような滑りやすい路面においてタイヤの空転を抑えるモード。過大なトルクを抑制して発進、加速時にホイールスピンを抑えスムーズな走行を可能にする。さらに、車速約30㎞/h以下では、スリップ輪にブレーキ制御を併用し、より安定したグリップ走行を実現する。

セーフティ

スズキ小型車初、真上からの映像に加え3Dビューを可能にした全方位モニターで周囲の安全を確認!





全方位モニターの俯瞰映像と3Dビューの映像で周囲の状況の確認が可能。表示は、自車を斜め上空から見たような映像を表示する「室外視点」と、運転席からの目線で自車を透かして外を見るような映像の「室内視点」の2パターン。

左右確認サポート機能も搭載



自車に左右から近づいてくる人や物を検知するとブザーと表示画面で注意喚起する。前方左右は見通しの悪い路地から道路に出る時、後方左右は駐車スペースからバックで出る時に役に立つ。

6つの安全技術にスズキ小型車初の後退時ブレーキサポートと後方誤発進抑制機能を追加

超音波で障害物を検知!

リヤバンパーに内蔵された4つの超音波センサーが車両後方にある障害物を検知し、危険回避の制御を行なう。センサーは音の跳ね返りで距離を計測するので、透明なガラスなどでも検知できる。

後退時ブレーキサポート

約10㎞/h以下で後退中、後方約3m以内に障害物がある際、システムが衝突が避けられないと判断した場合に自動ブレーキを作動。障害物との衝突を回避または被害軽減を図る。

後方誤発進抑制機能

上と同条件で、システムが「誤ってアクセルペダルを強く踏んだ」と判断した場合、ブザー音とメーター内の表示灯で警報。併せてエンジン出力を抑制して発進、加速を穏やかにし、衝突を回避または被害軽減を図る。

デュアルセンサーブレーキサポート

前方を監視する単眼カメラとレーザーレーダーでクルマや歩行者を捉え、自動ブレーキによって衝突を回避、または被害を軽減する。

①単眼カメラと赤外線レーザーレーダーが前方の車両や歩行者を検知。衝突の可能性があるとシステムが判断するとブザー音とメーター内の表示で警報を発する。

②ドライバーが強くブレーキを踏むと、ブレーキアシストが作動してブレーキ制動力を高める。

③さらに「このままでは衝突が避けられない」とシステムが判断すると強い自動ブレーキを作動させ、衝突を回避、または被害を軽減する。

誤発進抑制機能

シフト位置がD、Mレンジの位置で停車または10㎞/h以下で徐行中、約4m以内の障害物を認識。誤ってアクセルを強く踏むとエンジン出力を最長5秒間抑制。同時にブザー音とメーター内の表示によって警報。

車線逸脱警報機能

①約60〜100㎞/hで走行中、車線の左右区画線を検知し進路を予測。②車線を逸脱するとシステムが判断した場合、ブザー音とメーター内の表示と表示灯で警報を発する。

ふらつき警報機能

①約60〜100㎞/hで走行中に車線の左右区画線を検知。過去数十分の走行データを元に走行パターンを計測。②蛇行をふらつきと判断するとブザー音とメーター内の表示で警報。

先行車発進お知らせ機能

シフト位置がD、N、Mの位置で停車中に、先行車が発進すると自車との距離を計測する。先行車が5m以上走行しても自車が停止し続けた際にブザー音とメーター内の表示で警報。

ハイビームアシスト

スイッチがAUTOの位置のハイビーム走行中(約30㎞/h以上)、対向車や先行車がいたり、明るい場所を走行中は自動でロービームに切り替え。対象車がいなくなると自動でハイビームに復帰する。


ニューモデル速報 Vol.565 スズキ クロスビーのすべて

情報提供元: MotorFan
記事名:「 スズキ・クロスビーのメカニズムを徹底解説!