筑波サーキットでのTC250クラスのコースレコード1分1秒409は、2012年の筑波選手権第3戦にマーク。


横田勝貴選手によって叩き出されたそのタイムは、2018年シーズンも塗り替えられることはなかった。


試行錯誤の上につくり上げられた最速マシンの秘密を、今改めて探っていく。




REPORT◉後藤 武

TIME:1'01.409

このマシンのコンセプトはズバリNSRの性能を引き出しサーキットで1秒でも速いラップタイムを叩き出すこと。そのためにエンジンにRSのパーツを流用してはいるが、重要なのは使用しているパーツではなく、ライダーの乗り方に合わせた緻密かつ的確なセットアップを行なっていることにある。250の2ストマシンは、パワーを追求するだけではタイムを出すことはできない。ライダーとマシンの力を引き出すセットアップこそが要なのである。

日本最速のNSRにはパワー+アルファが必要だった

 オーナーでありライダーでもある横田勝貴さんは、中古でNSRを購入し、井上ボーリングの小林工場長やライズオンの井場代表など、NSRのトップチューナー達からアドバイスを受け、自らテストを行なってチューニングしていった。




 エンジンはホンダの市販レーサー、RS250のシリンダーと電気系を装着。これで一気にパワーアップ……となるかと思いきや、そう簡単にはいかなかった。何しろ全盛期と違って、レギュレーションにより無鉛ガソリンしか使えない。当時と同じチューニングを施せばデトネーションを発生させてエンジンは壊れてしまうし、ジェットを濃くすれば走らなくなるのだ。ヘッドの燃焼室形状を変えたりと大がかりなトライも含め試行錯誤を何度も続けて、やっとパワーを出すことに成功した。




 けれど横田さんのマシンの1番の特徴は、RSパーツではない。様々なところに施された独自のアイデアにある。例えばコーナーリング中でもストレートでも、素早いシフトアップができるハンドシフトレバーの装着。エアボックスにはスタートで始動性を向上させるリードバルブを装着している。ストロークセンサーのロッドだけ取り付けて簡易的にストロークを測定したり、トリップメーターをふたつ装着してクランクやピストンの交換時期も管理した。




 そういう細かなことの積み重ねがコースレコード樹立につながっていったのだろう。

SPECIFICATIONS


94年式NSR用フォーク+HRCスプリング/NSR250SP純正マグテックホイール/CBR954用ブレーキキャリパー/オーリンズリヤショック/97年式RS250用シートカウル/ライズオン92年式RS250用チャンバーモディファイ/92年式RS250用シリンダー/92年式RS250用点火系/RS250用キャブレター
バンク中のシフトアップのためペダルを高くすると疲れてシフトミスする。対策のためシフトアップ専用のレバーを制作し、ストレートはこれで変速する。

ラムエアダクトを装備するが、圧が低いスタート時にストールしやすい。対策としてラムボックスにリートバルブを装着、圧が低い時に外気を導入する。

キャブレターは、RS250最終モデルのパワージェット付きのケイヒン。

シリンダーはNSRチューンで定番の、ボルトオンで装着可能な92年式RS250用。フライホイール、イグナイターなども92年式RS250として好レスポンスに仕上げる。


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情報提供元: MotorFan
記事名:「 【ホンダ・NSR250R】ツクバ最速マシンの今昔物語⦅その2⦆