今年のジュネーブ・モーターショーでデビューした新型アウディA6。新型モデルは48Vの高電圧バッテリーを搭載するマイルドハイブリッドに進化を遂げているのが特徴だ。


REPORT◎塩見 智(SHIOMI Satoshi)


PHOTO◎Audi AG

 新型アウディA6の試乗会はポルトガル第2の都市、ポルトで開催された。港町として知られるが、今回は空港から内陸のドウロというワインで有名な川沿いの街を目指すルートだ。ポルトガルは風光明媚で、温暖な国。そして走らせて楽しい道路が多い。山道はツイスティかつアップダウンが多く、クルマの素性を把握するのに適している。高速道路の交通量が少ないのも重要だ。


 


 新型A6の外観は全体的にクリーンで細部がシャープな印象だ。ボディサイズは現行モデルとほぼ変わらない。ロングホイールベース、ショートオーバーハングで、ルーフに沿って美しいアーチを描く6ライトのサイドウインドウが車内の広さを想起させる。そして実際に広い。

日本に導入される予定のA6セダン55TFSIには、アルミクランクケースを採用した新しい3L V6ターボを搭載する。

 日本仕様の55TFSI(3.0ℓ V6ターボ)を選んで、エアサスと標準サス、またタイヤサイズの異なる数台をテストした。先代モデルにも搭載されたこのエンジンは、特別官能的ではないが、実直によく仕事をこなす。新型A6は最高出力がわずかに増し、最大トルクは60Nm向上したが、先代との違いがはっきりわかるほどではない。ただしBAS(ベルト駆動式のオルタネータースターター)が組み込まれ、マイルドハイブリッド化された部分においては、新しさを体感することができた。


 


 55〜160km/hでコースティング機能(ドライブモードでエフィシェンシーを選んだ場合、アクセルオフでニュートラルとなるのではなくエンジンが停止する)を使えるほか、いわゆるアイドリングストップはワゴンRもびっくりの22km/h以下となるとエンジンが停止するタイプだ。


 


 こうなると走行中でも頻繁にエンジンが停止することになる。逆に言えば頻繁にエンジンが再始動することになるのだが、再始動の際、BASがその時の速度に合った回転数までエンジンを一瞬でスムーズに回すため、振動がほぼゼロ。滑らかに再加速できる。この辺りはいかにも電動車だなという印象。アウディは「2025年までに80万台の電動車の販売を目指す」と宣言しているが、それには今回のA6も含まれる。

19インチ以上のホイールには不快な周波数を吸収するトーラス吸収剤を採用したユニークなタイヤが装着される。

 足まわりは日本仕様でもエアサスと標準サスを選べるようになるはずだが、ここは少々高くてもエアサスをオススメする。ハンドリング面では違いを感じなかったが、古く荒れた舗装が続く微小な入力が連続するような道路でも、ガツンとくる大入力が入る凹凸に対しても、エアサスのほうが快適性を保ったまま処理してくれる。エアサスは20インチと21インチのタイヤを試したが、快適さは変わらなかった。

インパネ中央に鎮座する2つの大型ディスプレイからエアコン、オーディオ、サスペンション設定などの操作を可能とした未来感溢れるインパネデザイン。

 もうひとつのニュースは新しいユーザーインターフェイスを採用したことだろう。新しいMMIは宗旨変えというべき変化だ。センターパネル中央の上部に10.1インチ、下部に8.6インチのタッチスクリーンを備える。基本は上部に操作頻度の高いナビやエンタメ関連、下部に頻度の低いエアコンを表示するが、下部のスクリーンはテキストの手書き入力にも対応するなど状況に応じて、どちらに何を表示するかを任意で設定することが可能だ。


 


 ドイツ車はこれまでダイヤルスイッチを中心としたユーザーインターフェイスを好んだ。200km/hで走行中、あれこれスイッチの位置を探すのは危険というのが彼らの主張だったはず。ところが、新しいMMIしかり、またメルセデス・ベンツのMBUXしかり、ドイツ勢がここへきてタッチスクリーン式、あるいは音声入力式を推してくるようになった。この2社が採用したら他メーカーも雪崩を打つように一気に採用するだろう。タッチ入力、音声入力に変わっていったのはいったいなぜなのか? 今回は質問し忘れた。




 しかし聞かなくてもわかる。我々のライフスタイルがここ数年で1日中スマホやタブレットの画面を操作するものに変わった。カーライフにもそのスタイルが採用されるのは自然なことだ。また音声入力技術とAIの性能が劇的に向上した結果、音声入力というより会話によって機能を呼び出すことができるようになった。ダイヤル操作よりも会話のほうがさらに安全なはずだ。

 ADASの発達もある。近年、高速走行時のドライバーの負荷がどんどん減ってきた。その先にある自動運転の実現にはまだ時間を要するにせよ、今後、高速走行中のドライバーの負荷はさらに減る。そうなるとブラインド操作が必須とも言えなくなってくる。


 


 いずれにせよ、上下2段の大型タッチスクリーンはステアリング奥のバーチャルコクピットと合わせて運転席に未来感を漂わせる。これはUX面のみならず、インテリアデザインの面でも新世代アウディの特徴となるはずだ。日本への導入は2018年内を予定している。




※本記事は『GENROQ』2018年7月号より転載したものです。

SPECIFICATIONS


アウディA6セダン55TFSIクワトロSトロニック


■ボディサイズ:全長4939×全幅1886×全高1457㎜ ホイールベース:2924㎜ トレッド:F1630 R1617mm ■車両重量:1760㎏ ■エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ 総排気量:2995cc 最高出力:250kW(340ps)/5000〜6400rpm 最大トルク:500Nm(51.0㎏m)/1370〜4500rpm ■トランスミッション:7速DCT ■駆動方式:AWD ■サスペンション形式:F5リンクR5リンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ:F&R225/55R18 ■パフォーマンス 最高速度:250km/h(リミッター介入) 0→100km/h加速:5.1秒 ■環境性能(EU複合モード) CO2排出量:151g/km 燃料消費率:6.7L/100km 
情報提供元: MotorFan
記事名:「 マイルドハイブリッドの実力がすごい! 新型アウディA6