「FUTURE-TYPE」は、所有者がフル充電された状態のクルマをオンデマンドで呼び出すことができる次世代モビリティの世界を示唆した完全自動運転車のコンセプト・モデル。自動運転やコネクテッド技術、電動駆動やシェアード・モビリティ(ACES)を取り入れ、自動車の使い方に関する未来を提唱している。
その中核を担うのが、コネクテッド技術を搭載した世界初のインテリジェント・ステアリング・ホイール「Sayer」だ。この斬新なデザインをもったステアリングは、名車E-TYPEを手掛けたデザイナー、マルコム・セイヤー(Malcolm Sayer)にちなんで名付けられたもので、世界初の音声で作動する人工知能(AI)を備え、何百ものタスクを処理するという優れもの。
「Sayer」を使用すれば、必要に応じて好きな時に車両を呼び出すことが可能。例えばリビングでくつろぎながら「Sayer」に指示するだけで、出発時間に家から出ればクルマが自動的に自宅前に到着、さらに目的地までのおすすめのドライブコースまで提案する。しかも、音楽をかけ、レストランの予約まで行うというからユニークだ。
この「Sayer」はクルマにとっての“鍵”となるだけでなく、ジャガーのオンデマンド・サービス・クラブのメンバーカードとしての役割も担う。メンバーになれば、自分がクルマの唯一のオーナーになるか、またはコミュニティの人々と共有するかを選択することが可能。すなわち、クルマを所有するという時代からステアリングホイールのみを所有する時代が訪れることを示している。
この斬新かつユニークな「FUTURE-TYPE」を手がけたのは、ジャガーのデザイン・ディレクターを務めるイアン・カラム。彼はこの「FUTURE-TYPE」に関して次のように語る。
「『FUTURE-TYPE』は未来のドライビングと自動車を所有するということに関して、将来の可能性を提示しています。デジタル化と自動運転が進化する時代に、プレミアム自動車ブランドとして今後も魅力的な存在であり続けるための当社のビジョンの一例です。このコンセプトは、2040年以降のカスタマーを見据え、オンデマンド型のジャガーの実現を模索する先進研究プロジェクトです。もし、市街地を自動走行できるオンデマンド型車両が選択肢としてあれば、通勤に使用したり、クルマ自らが子どもたちを学校まで迎えに行ったり、あるいは、週末に自身で運転を楽しんで遠方に出かける、といったことが可能となるでしょう。私たちは、様々な用途に対して24時間365日対応のサービスを提供し、競合会社を凌駕していく必要があるのです」
そして「『FUTURE-TYPE』は、クルマを所有しないという選択をする人々がいる世界、またはジャガーが自動運転車もしくはオンデマンドカーとなる未来の世界において、このようなエモーショナルなつながりをどのように実現していくのかを模索したモデルなのです」と加える。
日々、進化と革新を繰り返す昨今の自動車テクノロジーにおいて、この提案はあくまでも一例にすぎないものの、極めて現実的に映るのが印象的だ。ジャガーはこうした未来のライフスタイルに対し、今もっとも真剣に考えているブランドかもしれない。