■中期成長戦略

網屋<4258>が定める主要KPIは、(1)全社ベースの売上高成長率10%以上(2)同営業利益率10%以上(3)データセキュリティ事業のストック売上高の年成長率10%以上(4)同事業の保守継続率85%以上(5)ネットワークセキュリティ事業のストック売上高の年成長率15%以上(6)同事業のサービス解約率10%以下である。メーカーならではの高収益性を活かし、次の事業拡張の投資財源に充当していくことで持続的な業績拡大を目指す。足元では、各指標はおおむね順調に推移している。

同社の中期成長戦略は、データセキュリティ事業とネットワークセキュリティ事業の両事業を着実に成長させ、サイバーセキュリティの総合企業として事業規模を拡大していくことである。以下に両事業の戦略を記載する。

1. データセキュリティ事業
(1) AIによる不正検知の自動化
従来、ログは情報漏洩やシステムトラブルといった事後追跡に利用されてきた。しかし、今後は予兆検知による予防措置にログの活用の場が広がっていくとみられる。「ALogシリーズ」の最新バージョンでは、AI機能を実装し、過去のデータをAIが自動分析して、社員ごとや通信ごとに不正可能性をスコアリングしてリスクを予見できるようになった。今後のさらなる研究開発によって、作為的な不正や不可抗力のアクシデントを予知する仕組みを顧客に提供し、「ALogシリーズ」のさらなる競争力強化に取り組む戦略である。

(2) 「ALog EVA」による統合ログ市場への進出
顧客からのさらなる要望に応えるため、統合ログ市場へ進出している。この製品により広範囲のログ管理が可能となり、近年増加するサイバー攻撃の原因究明やテレワーク時の社員の勤怠管理にも対応できるようになる。「ALog EVA」は2017年の販売から堅調に伸長しており、引き続き需要が期待できる。今後は、研究開発と販売促進プロモーションをさらに強化し、ビッグデータ解析の標準製品となるよう機能強化を図る戦略である。

(3) 自動化パックの提供
ログ管理市場には、「ログ=専門技術が必要で難解」という固定概念があり、一般的な知識で扱えない専門領域ととらえられている。そこで、同社は「サイバー攻撃自動検知パック」や「Microsoft365対応パック」など定義済みのテンプレートを作成して、誰でも使える簡便な記録分析ツールを目指し、開発を進めている。今後も同様のパックを追加製作し、ビッグデータ分析の標準製品として成立するよう、他社との差別化を図る戦略である。

(4)「セキュサポ」
2022年4月にクラウドCSIRTサービス「セキュサポ」の提供を開始している。同社がセキュリティセンターを設け、サイバー攻撃に悩む病院や自動車サプライヤなど中小企業に対して、定額でセキュリティ対策(外部攻撃監視、内部不正監視、脆弱性調査など)の運用を代行するサービスである。中小企業においては、安全性に問題のある古い機器を使っているケースもあるため、単にセキュリティ状況を監視するのではなく、問題のあるところを同社が検出し、セキュリティの穴を塞ぐなどの対応を代行している。

(5)「ALog Cloud」
同社はこれまでに「ALogシリーズ」のクラウド化に向けて積極的な投資を行っており、2023年2月にALogのクラウドサービス「ALog Cloud」をリリースする予定であると発表した。「ALogシリーズ」をクラウドサービスとして利用できるということは、顧客にとって、サーバなどのハードウェアの調達が不要になり、購入したソフトウエアのインストールも不要になるといったメリットがある。昨年度から世界的に半導体の供給不足が問題となっており、ハードウェアの調達が困難になってきているため、当該サービスへの需要は良好に推移することが期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 藤田 要)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 網屋 Research Memo(7):両事業を着実に成長させ、サイバーセキュリティの総合企業としての地位を築く(1)