■今後の見通し

2. 成長戦略
GMOメディア<6180>は、今後の成長戦略としてECメディアにおける「ポイントタウン」と「ゲソてん」間の連携強化とパートナー戦略を積極的に展開していくことによってユーザー基盤を拡大し、売上の最大化を図ることによって成長を実現していく方針となっている。また、新規事業であるプログラミング教育領域の情報ポータルサービス「コエテコ」についてもビジネスモデルを構築し、2020年以降の収益化を目指して行く。さらに今後、潤沢なキャッシュをベースに、自社メディアとシナジーのあるメディアやEC事業の買収も検討していくもようだ。

(1) ECメディア事業の展開
「ポイントタウン」と「ゲソてん」の連携強化策として、「ゲソてん」のサイト上に「ポイントタウン」と連携してポイントタウンポイントが貯まるコンテンツの掲載を開始しており、逆に「ポイントタウン」の会員向けに「ゲソてん」のゲームタイトルを紹介し、両サイトにおけるユーザー当たり生涯価値(LTV)を引き上げていく取り組みを推進していく。

また、提携パートナーの拡大についても継続して注力していく。「ポイントタウン」に関しては、2019年2月に読売新聞社がスタートした購読者向けデジタルサービス「読売新聞オンライン」内の独自ポイント「よみぽ」が貯まるポイントサイト「よみぽランド」に、同社のポイントCRMシステムが導入され(提携サイトでは4社目)、「よみぽランド」の運営・構築を同社で行っていくことが決定した。企業はマーケティング戦略の1つとしてオウンドメディアを活用した顧客の囲い込みや開拓に注力しており、そのなかで付加価値情報の1つとしてポイントサイトの仕組みを導入するケースが今後も増えてくるものと予想される。同社では19年間のポイントサイト運営で蓄積してきたノウハウを生かすビジネスチャンスと捉えており、今後も更なる提携サイトの拡大を推進していく方針だ。

同様に、「ゲソてん」についても提携パートナー数を増やしながら、自社開発のコンテンツを提供し、「ゲームタイトル数×展開メディア数」によって成長を加速していく方針となっている。投入を予定している新作ゲーム(HTML5版)は、2019年3月に「キャプテン翼ZERO~決めろ!ミラクルシュート~」、2019年内に自社IPの「どこでもベジモン農場(仮題)」※の2本がある。これら取り組みによって、ゲーム課金収入については今後も増加を続けていく見通しだ。

※2010年にスタートした同社オリジナルIPで、育成バトルゲーム。SP/PCに対応し、パズル・育成要素を新たに加えた「どこでも」遊べるゲームを企画開発中。


(2) 新規事業の育成
2017年11月に開始したプログラミング教育に特化したポータルサイト、「コエテコ」の育成に向けた投資を継続して行っていく。プログラミング教育は2020年度より小学校で必修科目となるほか、2021年以降は中学校や高校でも科目数が増え、大学でも受験科目となる見通しとなっている。このため、プログラミング教室に通う幼児や小学生が急速に増加している。一方で、インターネット上に保護者が必要とする教室の情報を扱っているポータルサイトがほとんどなかったため、同社は今まで蓄積してきたメディア運営のノウハウを生かせることから、同市場に参入することを決定した。

(株)船井総合研究所(船井総研ホールディングス<9757>)との協力により2018年4月に発表した市場予測では、2018年の市場規模9,071百万円(4,457教室)に対して、2023年には22,644百万円(11,127教室)と2.5倍の成長を見込んでいたが、同数値は大きく上回る可能性が高くなっている。前述したとおり、「コエテコ」に掲載する教室数は2018年12月時点で約5,800教室と既に予測値を上回っており、2019年1月末時点でも約6,400教室※と拡大が続いているためだ。最近では大手学習塾もプログラミング教育のコースを新設するなど、その動きはさらに加速しており、現状のペースでいけば2023年の市場規模は400億円に達する可能性もあると見られる。

※掲載教室数約6,400教室のうち、約400教室はクローリングにより基礎情報(教室名、住所、電話番号等)のみ収集し、掲載している教室数となっている。


現状、プログラミング教室に特化したポータルサイトはほとんどなく、大手では「習い事」に絞ったポータルサイトを運営する(株)センジュの「コドモブースター」がある程度で、その他はブログで紹介されるケースが多い。ちなみに、東京都内における教室掲載数(2019年2月時点)で見ると、「コエテコ」が791教室あるのに対して、「コドモブースター」は219教室で3倍以上の開きとなっている。また、Google検索での上位表示3位以内までに入っている地域は、同社が重点エリアとする200地域のうち198地域となっており(2018年12月末時点)、「コエテコ」がポータルサイトとして業界トップの地位を確立していると言える。同社は2019年についても掲載教室数をさらに増やし、圧倒的トップの地位を不動のものとした上で収益化していく方針となっている。

収益化の手法としては、教室に生徒を送客した時点で発生する送客手数料を基本に考えている。資料請求件数をベースとした手数料では教室側の投資負担が重くなるためだ。また、各教室の資料については電子ファイルで無料配信している。学習塾では郵送で資料を送付するケースが大半だが、すべてネットで完結できる仕組みとした。送客手数料がどの程度の水準であれば収益化できるか、現在、データを蓄積しながらチューニング作業を行っている。また、教室の情報掲載料も現在は無料としており、これら要素を分析し全体最適を図った上で正式な料金プランを設定し、収益化していくことにしている。なお、2018年12月期の業績では数千万円の損失となっており、2019年12月期も同程度の損失を見込んでいる。

プログラミング教室における潜在市場規模についての試算では、大手学習塾の売上高に対する広告宣伝費率が8%の水準、うちインターネット広告比率が3割程度と仮定し、プログラミング教室についても同条件で計算すると、2023年の市場規模が400億円だった場合、広告宣伝費は30億円、うちインターネット広告は10億円となり、これが同社の獲得できる市場規模となる。また、学習塾の広告宣伝費には折り込みチラシなども一定比率残っているが、プログラミング教室では保護者がデジタル世代であるため、インターネット広告の比率が高くなることが想定され、その率を5割と仮定すれば、対象市場は15億円となる計算で、このうち過半のシェアを同社で獲得していくものと予想される。

収益性について見ると、学習塾領域で類似のサービスを展開するイトクロ<6049>の「塾ナビ」で約5割の高い利益率になっていることから、今後も同社がトップシェアを維持していくことができれば同様の利益率を獲得することは可能とみられ、2023年前後に営業利益で数億円規模となり、同社の収益柱の1つに育つ可能性があると弊社では見ている

なお、同社はプログラミング教育市場の拡大に向けて、自治体との連携も推進している。2019年2月には大阪府泉大津市と連携協定を締結し、「コエテコ」を活用した広報活動やプログラミング体験イベントを実施し、泉大津市の小学生とその保護者へのプログラミング教育の普及に取り組んでいくことを発表している。体験イベントに関しては、2019年8月にGMOグループの大阪支社のイベントスペースにて、泉大津市のプログラミング教室12教室の協力を得て、体験イベントを開催することが決まっている。今後も自治体からの要望があれば積極的に連携して、プログラミング教育市場の普及拡大に努めるとともに、「コエテコ」のブランド価値も高めていく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 GMOメディア Research Memo(7):「コエテコ」は数年後に収益柱に育つ可能性あり