■マーケットエンタープライズ<3135>の中長期の成長戦略

3. 「専門商材」事業
専門商材事業は、CtoCが入り込みにくいという点や、国内に限定されずグローバル展開が可能といった点で、一般的な商材から区別して新たに設けたものだ。ここで取り扱う商材としては、現状は農機具、建機、医療機器がある。もちろんこれに限定されるものではなく、将来的にはもっと商材が拡充されていくとみられる。

専門商材事業の位置付けは、同社の特長・強みであるITとリアル(実拠点)の両方を有することを生かして、それぞれの商材において「オンリー・ワン」であるということだ。例えば農機具ではJAはグループとして巨大な存在であるのは疑いないが、実際の活動は各地の単位農協(JA)で行っており、実拠点をベースとした地域限定型の事業展開にとどまっている。農機具メーカーや農機具販売店も同様だ。ITを活用し、日本全国に拠点網を持って活動している同社はこれらとはまったく異なるモデルであることがわかる。これは建機や医療機器についても同様のことが言える。

専門商材のミッションについて同社は1)専門性の獲得、2)既存マーケット商流のリプレイス、の2つを掲げている。以下ではこれらを踏まえて3つの商材について述べる。

(1) 農機具
農機具は現状、非常な成功を収めている。これまで中古農機具はJAや地元の農機具販売店などの下取りがメインの商流だったとみられるが、ネットで査定・買取りという商流が着実に育ちつつある。その中で同社は、いち早く「自動査定フォーム」を導入したことでネット検索エンジン上位にランキングを果たし、全国10拠点の機動性を活かして、業界をリードする存在にある。

現状はトラクターやコンバインをメイン機種に順調な拡大が続いているが、今後はトラクターに装着する各種アタッチメント(ロータリーやキャリアなど)の取扱いなどにも手を広げる計画だ。そのためにはそうした専門知識を有する人材の獲得・育成が不可欠で、2019年6月期はそこにチャレンジしていくとみられる。

(2) 建機
建機については2018年6月期に中古建機販売プラットフォーム『ALLSTOCKER』を運営するSORABITO(株)と業務提携を行い、中古建機市場に参入した。

初年度である2018年6月期の売上高は想定を下回り、農機具と比較してもスローな立ち上がりだったとみられる。ポイントは、農機具に比べて建機は種類が多く、現状の同社では対応しきれないものも多いことにあるようだ。

2019年6月期は初年度の経験を生かして、建機の種類を絞り込むなどの対応を取るほか、各リユースセンターでの対応力(運搬、保管、メンテ等)強化、専門人材の獲得などを進めるとみられる。また同社は、建機事業強化の一環として、2018年5月にSORABITOに対して出資を行った。SORABITOの運営する『ALLSTOCKER』と、同社が運営する『建機高く売れるドットコム』のシステム連携や、国内と輸出の両市場での対応力強化などを目指すとみられる。

(3) 医療機器
同社は2018年4月に、RECYCLE POINT TOKYO(株)より事業譲渡を受けて、中古医療機器事業に進出した。同時に『医療機器高く売れるドットコム』を開設して、全国規模での買取販売を開始した。

医療機器の取扱に際しては薬機法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の通称)等の規制を受けるが、この点については事業譲渡に際して専門性を有する人材も獲得しており、現状は問題なく事業を展開できている。しかし将来的には専門人材の厚みを増す必要があるだろう。

2018年4月にスタートして日が浅く、事業モデル自体が今後修正を加えられる可能性もあるが、当初は内視鏡機器やCT、MRIなどの画像診断装置を中心に開始し、順次取扱機種を拡大させる方針だ。買取先は閉鎖する医療機関からの直接買取やリース会社、医療機器メーカーなどを見込んでいる。一方販売先は、予算の制約のある医療機関や輸出市場を想定しているもようだ。

中古医療機器の市場に関する正確な統計はないとみられるが、ある程度の推計は可能だ。2013年の画像診断システムの市場規模は約4,160億円だった。年平均成長率がわずかにマイナスなので2018年の現在も約4,000億円市場と言うことができるだろう。国内の医療機関はほぼ飽和状態にあると考えられるため、毎年4,000億円相当の新品の画像診断装置が販売されるということは、それに相当する中古装置が発生することになる。現状は中古医療機器の60%~70%が廃棄処分されているとも言われている。医療機器事業が軌道に乗ってくれば、同社の収益に大きなインパクトを与える可能性があると弊社では期待している。


レンタル、モバイル、メディアを新たな収益源に育成することを目指す
4. 「新規」事業
「新規」という事業区分には、リユース以外の事業が含まれる。現状では、レンタル、モバイル、メディアの3つの事業が相当する。これらもまた2018年6月期から実質的にスタートし、2019年6月期以降の収益拡大に期待が高まっている状況にある。社内的な位置付けも“新たな収益源”であり、いかに収益成長軌道に乗せていくかが今後のミッションとなる。

(1) レンタル事業
同社は2017年6月期に宅配レンタルのトライアルを開始し、2018年6月期に「ReReレンタル」というサービスブランドで本格的にレンタル事業を開始した(レンタル事業の収益モデル等は2018年4月6日付の前回レポートも参照)。

2018年6月期の実績は、売上高は数千万円だったと弊社では推定しているが、計画どおりに着実に進捗しているとみられる。結婚式や運動会といった単発イベントのための一時的な需要がメインになると想定し、ビデオカメラや高級楽器などをラインアップしていたが、ほぼ想定どおりの動きとなったもようだ。

2019年6月期は新たに長期レンタルサービスを開始した。これは、テレビ、冷蔵庫、洗濯機等をパッケージにして2年間の契約で単身者向けに月3,000円で貸し出すサービスだ。利用者は期間限定の生活において出費を必要最低限に抑制することができる。一方同社としては在庫品を収益化でき、レンタル事業の目的である各商品のLTV(Life Time Value)の増大につなげることができる。加えて同社の知名度・認知度向上にもつながり新たな商流の創出につながると期待される。

(2) モバイル(通信事業)
モバイルは同社の子会社MEモバイルで行う事業だ。MEモバイルはMVNO(仮想移動体通信)事業参入を目的に2016年8月に設立された。パートナーは光通信<9435>(35%出資)で、リユース事業からの中古スマートフォンとMVNO事業者としての格安SIMの組み合わせにより、機器と回線料のトータルで業界最安を目指し、2016年9月から「カシモ」ブランドでサービスを開始した。

その後、2017年10月に「カシモWiMAX」をリリースし、これが2018年6月期の通信事業の躍進につながった。「カシモWiMAX」はWiMAX2+対応の、いわゆるモバイルWi-Fiルーターによる高速モバイル通信サービスだ。回線の契約とルーター機器(新品・中古)の販売が収益源という事業モデルだ。業界最安契約回線数が順調に積み上がり、安定的に収益を確保できる状況を確立したとみられる。

(3) メディア
メディア事業は同社のネット型リユース事業で展開する各Webサイトにおける広告収入ビジネスだ。同社はフラッグシップサイトの「高く売れるドットコム」を初め、商材別に「~高く売れるドットコム」を29サイト展開するほか、様々な趣味へ誘う「ビギナーズ」や、iPhoneや格安SIM等の情報提供を行う「iPhone格安SIM通信」といったサイトを展開している。これらのPV(閲覧)数が足元で月間230万PVにまで成長した結果、同社のサイトの持つ広告媒体としての価値も飛躍的に増大しており、それを収益化しようというのがメディア事業だ。この事業は利益率が非常に高いことが特徴であり、利益貢献が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 マーケットE Research Memo(5):農機具、建機、医療機器等の専門商材では、自身の手で新たな商流を創造・確立