■業績動向

3. 財務状況と新株予約権発行について
アンジェス<4563>の2017年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比575百万円減少の3,963百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では新株予約権の行使が進んだことで現預金が152百万円増加した。また、主にHGF遺伝子治療薬の原薬製造が完了したことに伴い前渡金が528百万円減少し、原材料及び貯蔵品が442百万円増加した。さらに、契約一時金の入金に伴い売掛金が155百万円減少している。一方、固定資産では事業用資産の減損により有形固定資産が75百万円、無形固定資産が55百万円減少したほか、保有する株式の売却及び減損に伴い、投資有価証券が249百万円減少した。

負債合計は前期末比328百万円減少の341百万円となった。主にHGF遺伝子治療薬の国際共同第3相臨床試験にかかる費用が減少したことにより、買掛金が188百万円減少したほか、未払費用が79百万円、未払法人税等が69百万円それぞれ減少した。また、純資産は前期末比247百万円減少の3,621百万円となった。新株予約権の行使に伴い資本金及び資本準備金が1,472百万円増加した。一方、資本金13,465百万円、資本準備金15,961百万円をそれぞれその他資本剰余金に振り替え、当該その他資本剰余金29,427百万円を利益準備金に振り替え欠損填補を行った。これに伴う純資産合計に変動はない。また、その他有価証券評価差額金が335百万円、新株予約権が240百万円増加したが、親会社株主に帰属する当期純損失3,764百万円の計上が減少要因となった。

2017年12月期末における現預金は1,147百万円となっており、事業費用については2017年9月に発行した第31回(第三者割当)新株予約権の行使に伴う資金調達で賄っていくことになる。2018年1月〜3月の新株予約権行使で新たに895百万円を調達しており、未行使分の潜在株式数は929.22万株となる。仮に行使価額500円とすると約46億円を調達できることになり、約2年分の事業費用は調達できることになる。行使価額は前日終値に対して92%の水準(下限行使価額は336円)で設定されるため、今後の株価の変動によって資金調達額も増減することになるが、株式市場全体の動向や現在の開発プロジェクトの進捗状況次第と言える。

同社では、現在進めている開発プロジェクトにおいて、早期にライセンスアウトし資金回収を進めていく方針としている。なお、同社は期間損失が続き財務面でも厳しい状況にあることから、2017年12月期の決算短信において、継続企業の前提に関する注記を付している。


■長期ビジョン

遺伝子医薬のグローバルリーダーとなり、売上高500億円以上を目指す
同社は長期ビジョンとして2025年ビジョンを策定している。主な目標として、遺伝子医薬のグローバルリーダーとして、世界で認知される遺伝子治療・核酸医薬のスペシャリストとなること、治療法のない病気の新薬を実用化すること、売上高で500億円以上を達成することの3つを掲げている。黒字化の時期は現在の開発パイプラインの進捗状況次第となるが、特に、米国での重症虚血肢治療薬の開発に成功した場合には、数十億円規模のマイルストーン収益(既に受領した契約一時金含む)が得られる見通しとなっており、今後の開発動向が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 アンジェス Research Memo(6):第三者割当による新株予約権の行使により、事業費用を賄っていく予定