8日の日経平均は小幅に反落。55.68円安の28963.56円(出来高概算9億2866万株)で取引を終えた。米食品医薬品局(FDA)は、エーザイ<4523>と米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー型認知症治療薬候補「アデュカヌマブ」を承認した。米当局がアルツハイマー治療薬を承認するのは初めてとなり、これを受けてバイオジェンは38%超の上昇となった。この流れからエーザイに買いが集中したほかハイテク株の一角が買われ、日経平均は一時29140.68円まで上昇する場面があった。しかし、その後は指数インパクトの大きい値がさ株が総じて軟調ななか、29000円を挟んだ動きとなった。

東証1部の騰落銘柄は、値上がり銘柄が1300を超え、全体の6割超を占めた。セクター別では、前日に続いて海運が2.0%を超える上昇となったほか、医薬品、電気ガス、空運など17業種が上昇。一方、パルプ紙、非鉄金属、機械、保険など16業種が下落した。指数インパクトの大きいところでは、エーザイ、第一三共<4568>、テルモ<4543>、トレンド<4704>が堅調。半面、ファーストリテ<9983>、ソフトバンクG<9984>、ダイキン<6367>、ファナック<6954>が軟調だった。

エーザイが大量の買い物を集めストップ高まで買われたほか、武田<4502>、第一三共などの医薬品セクターにも買いが波及した。また、エーザイとアルツハイマー型認知症の血液検査キットを共同開発しているシスメックス<6869>も大幅に上昇した。ただし、その他はアフターコロナを見据えた企業活動の本格的な再開による荷動き回復への期待から海運株人気が目立つ程度で、全般は新規の手掛かり材料に乏しく模様眺めムードの強い展開が続いた。

やはり市場関係者の関心は米国のインフレ懸念だ。10日に発表される5月の米消費者物価指数(CPI)の内容や翌週に予定される米連邦公開市場委員会(FOMC)の動向も警戒されている。市場では「米国の量的緩和政策を巡って転換点が訪れる可能性もある」との指摘も聞かれた。また、国内でも週末には先物オプション特別清算指数(SQ)算出日を迎える。SQに絡んだロールオーバー中心の売買のなかでは、方向性は出にくいと見えられる。

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情報提供元: FISCO
記事名:「 個別物色中心で29000円を挟んだこう着相場に【クロージング】