今朝の報道によれば、エアバックのタカタが民事再生法を今日にも申請する見通しとのことです。事実なら、負債総額は1兆円超と製造業として過去最大で、上場企業の倒産も第一中央汽船以来約20ヶ月ぶりとなります。

タカタといえば、エアバッグで世界第二位のシェアを誇っていた優良企業です。しかし、その後のリコール問題について米国で係争になり、今年に入りエアバッグの欠陥の隠蔽を認めました。今後は恐らく非上場となり再生を図りますが、過去15年間で、民事再生・上場廃止となった119社の上場企業で再上場を果たしたのはわずか1社で、存続している企業も全体の4割程度。タカタが民事再生法との報道が事実とすれば、なかなか厳しい門出になりそうです。

このような商品に関するものではありませんが、会計・開示に関する不祥事は近年急増しています。2016年暦年で、不適切な会計を開示した上場企業数は、過去最多の57社に上りました。これには、東芝や、リコー、船井電機などの海外関連会社の会計不祥事が含まれています。今年に入っても、富士フイルムなどの不正が明らかになって沈静化の兆しはみえません。

一方、企業の開示内容は、年を追うごとに充実しています。かつては半期ごとだった決算は四半期になり、有価証券報告書はぶ厚くなりました。この数年で、環境報告などの非財務情報を含む「統合報告書」も、279社もの日本企業が作成するようになりました。

開示情報の充実は投資家にとって歓迎すべきことです。しかし、増えれば増えるほど、不都合な事実を隠す余地が増えてしまいます。

昔読んだサスペンス「ブラウン神父シリーズ」に“木の葉を隠すには森の中。森が無いときは自分で森を作る”というフレーズが出てきます。“森”を作られてしまったら、外からみている投資家が問題のある“木の葉”を見つけるのは至難の業になります。

折しも、金融庁は、監査報告に企業リスクの詳細開示を義務付ける方針と報じられています。しかし実施は早くても2020年3月とまだ先です。投資家やアナリストという外部者にとって、企業を知る唯一の窓口である開示が不透明では、“貯蓄から資産形成”は掛け声倒れになりかねません。こうした会計士や独立監査人などに一層のリスク管理や注意の喚起を求めたいものです。

マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那
(出所:6/26配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【アナリスト夜話】:タカタの民事再生法と適正な情報開示のあり方(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)